GO TO THE BEDSはWACKグループの新機軸に? GANG PARADEサウンドを刷新したオリエンタルなアプローチ
新人グループだが、メンバーのキャリアは最低でも約4年。「遅れてきた新人」ことGO TO THE BEDSは、2020年3月に発表されたGANG PARADEの分裂の結果、誕生したグループだ。
メンバーは、GANG PARADEの前身である「POP」時代から在籍するヤママチミキ、ユメノユア、「GANG PARADE」への改名後に加入したキャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソン。要はGANG PARADEの古株組であり、それゆえの崖っぷち感もある。2020年4月1日には、分裂で生まれたもうひとつのグループ・PARADISESとのスプリットアルバム『G/P』をリリースし、2020年7月22日には早くもフルアルバム『GO TO THE BEDS』が届けられた。
サウンドプロデューサーは、もちろんWACKのアーティストを手がける松隈ケンタだ。筆者のインタビューに対して、GO TO THE BEDSとPARADISESには、それぞれを意識した楽曲を書き下ろしていると語っていたが、『GO TO THE BEDS』では、サウンドやボーカルの面でのアップデートの多さに驚かされることになった。
アルバムの冒頭を飾る「行かなくちゃ?」では、エレクトロとロックが大胆にぶつかりあう。こうしたサウンドは、GANG PARADEのイメージを意図的に踏襲したものだという。さらに「行かなくちゃ?」を聴いていて感じるのは、5人の歌声が交差しながら色彩を重ねていくかのようであることだ。
松隈ケンタは、インタビューで「今回主力に置いてみたのは、実はユイ・ガ・ドクソンなんです」「『ドクソン対各メンバー』という感覚で配置しましたね」「ドクソンは、白いご飯みたいな」と語っていた。ユイ・ガ・ドクソンをボーカルのメインに置くという発想には少なからず驚いた。
しかし、改めてユイ・ガ・ドクソンが2018年にリリースしたソロデビュー曲「Like a virgin」を聴き直してみると、ストレートにして伸びやかな声質であることに気づかされる。そのクセのなさは、松隈ケンタの言う「白いご飯」という表現にぴったりだ。
そこに対して、ヤママチミキの癖の強い歌い方、 ユメノユアの聴く者の耳に刺さるソリッドなボーカル、キャン・GP・マイカの透明感のある歌声、ココ・パーティン・ココのパンチのあるボーカルが巧みに配置されている。それはさながら繊細なパッチワークのようで、松隈ケンタの職人芸がいかんなく発揮されている部分だ。
そうしたメンバーの歌割りを、「I don't say sentiment」や「Don't go to the bed」のMVで確認することもひとつの楽しみ方だろう。ともにヘヴィなロックだが、「Don't go to the bed」のサビ前には、EDM的な昂揚感をもたらすドラムが入るなど、一筋縄ではいかない。