『ぼざろ』『ガルクラ』などに見るガールズバンド作品の再興──劇中バンド×音楽シーンのクロス現象が鍵に
『ぼっち・ざ・ろっく!』同様、10代の少女がバンドを結成し活動に情熱を燃やすストーリーを描く『ガールズバンドクライ』。バンド活動の実情描写こそ前者に軍配が上がるものの、こちらは制作を映画『THE FIRST SLAM DUNK』でリアリティある表現の真髄を見せた東映アニメーションが担当。重ねてメインキャラクター声優は、全員トゲナシトゲアリのバンド活動にも比重を置いてオーディション起用された新人ばかりだ。ここまで扱ってきた“人気声優による作中バンド”とは構造が異なっており、その点でも『ぼっち・ざ・ろっく!』とも違った現実味を追求したバンドアニメと言える。
本作はバンドの成長を描くとともに、10~20代特有の未成熟な人間関係における衝突や苦悩、そしてモラトリアム的なままならない自我に対する葛藤にも焦点を当てている。それらに由来するフラストレーションを音楽にぶつけるという、美麗な映像に反した青く泥臭い精神性も今作を構成する大きな要素のひとつとなる。そのテーマ性・サブタイトルを、実在するバンドの楽曲にリンクさせた点も作品のユニークな一面だ。RCサクセションやTHE BLUE HEARTS、くるり、サンボマスターといった大勢が名を知るバンドから、eastern youthや遠藤賢司、THE GROOVERS、神聖かまってちゃんといったいぶし銀の存在まで。アニメ各話タイトルの元となる楽曲のアーティストラインナップには、いわば幅広い世代の音楽リスナーにとって若さ/青さの象徴とされる実在バンドがずらりと並ぶ。一見作品のアイコンとなるガールズバンドとはやや印象の異なる面々ばかりだが、これも本アニメの主題を象徴する立派な一要素なのだ。
そんな現実の音楽シーンとのリンクも、トゲナシトゲアリの『BAYCAMP 2024』出演を実現させた一因かもしれない。とはいえ、そんな躍進の前提として、元々トゲナシトゲアリはアニメ放送の半年以上前からメンバー本人が演奏を担当した楽曲の公開や公開練習ライブなどを行っている。重ねてアニメ放送開始直前には1stワンマンライブも成功させており、バンドは本格的な活動実績をすでにかなり積んだ状態ではあった。
さらに夏フェス出演と併せ、つい先日発表されたアニメ『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』作中バンド・MyGO!!!!!との対バンライブ『MyGO!!!!!×トゲナシトゲアリ「Avoid Note」』開催も大きな注目を集めた。そういった現象を実現可能にしたのは、やはり作品自体が作中バンドへ先述のような本格的なクオリティを追求した結果でもあるはずだ。
こうして様々な形で、「現実の音楽シーンとのリンク」をひとつのキーとし、近年ムーブメントを広げてきたガールズバンドアニメ作品。結束バンドやトゲナシトゲアリ、MyGO!!!!!をはじめとした作中バンドの音楽シーン進出をきっかけに、今後もますますカルチャーの垣根を超えた様々な現象が起こるだろう。アニメ×音楽の化学反応によるユニークな試みや新たなチャレンジで、きっとそれぞれのシーンはこれからもさらに盛り上がりを見せるに違いない。
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