DOBERMAN INFINITYが持つ“遊び心の本質” 結成10周年で到達したALL ROUND HIP HOPの最高点

DOBERMAN INFINITYが持つ“遊び心の本質”

 DOBERMAN INFINITYが現在のMC4人(KUBO-C、GS、P-CHO、SWAY)とボーカル1人(KAZUKI)の体制で活動を開始したのは2014年のこと。『EXILE Presents VOCAL BATTLE AUDITION 4 ~夢を持った若者達へ~』を勝ち抜いた林 和希が加入し、前身となるDOBERMAN INCからの改名、続いてSWAYの加入で再始動となった。例えば、2010年デビューの三代目 J SOUL BROTHERS以降のダンス&ボーカルグループをJr.EXILEと区分することがあるが、5人がマイクに向かう“ALL ROUND HIP HOP”グループであるDOBERMAN INFINITYは、LDHが擁するグループの世代的区分としては例外的な存在と言えるだろう。

DOBERMAN INFINITY「GA GA SUMMER」MV

 LDH所属になる前、2000年のDOBERMAN INC結成から数えると、20年以上もの活動歴がある。それだけに深化されてきた音の世界は、アルバム作品を年代順に追ってみるだけでも深いものがある。オールドスクールな魅力に彩られ、2ndアルバムにして名盤のような聴き応えの『TERMINAL』(2016年リリース)収録曲「GA GA SUMMER」は、トロピカルなウェッサイ感がたまらない。晴れやかにご機嫌な調子で、〈君なしじゃ意味がない〉の合いの手コーラス部分には、EXILEの「Ki・mi・ni・mu・chu」のような爽快な甘やかさを配置してもいる。真夏がすぐそこというこの時期には、歌詞世界の海とバーベキューが目の前に浮かんで仕方ない。

 『#PLAY』、『OFF ROAD』、『5IVE』と3つのアルバム作品に収録されている5thシングル「DO PARTY」は、2017年の結成3周年を祝うタイミングの楽曲ということもあり、飲んで騒げの勢い勝負。アルコールがダメな人でも気持ちよく酔ってしまえそうだ。トークボックス風のエフェクトがクールなイントロは、ウェッサイマナー。ロジャー・トラウトマンのトークボックスが決め手の2PACの言わずと知れた名曲「California Love」を意識したサウンド作りだろうか? 彼らが主催するイン・ザ・パーティー・ムードはどこまでも人懐っこく、誰でもウェルカム。1stアルバム『THE LINE』リリース以来、DOBERMAN INFINITYにとっての2010年代とは、パーティーチューンを連打した持続的なディケイドだったとひとまず観測できる。

ビートと戯れようとする遊び心の本質

DOBERMAN INFINITY「We are the one」MV ( AL「LOST+FOUND」収録)

 誰でもウェルカム精神が5周年の節目でより強調されたのが、2019年にドロップされた9thシングル『We are the one』である。ボーカルKAZUKIのたおやかなメロウネスによる歌い出しからSWAYのラップが均質なエモーショナルで刻まれ、GSが歌い継ぎ、〈あの日描いた夢を〉のコーラスワークへ続く。グループ屈指、最高純度のフロウを体感できる。図らずもコロナ前夜のシングルとなり、コロナ禍の応援歌としてしっとりした解放感は本当に救いの響きではなかったか。僕らはこの応援歌に背中を押され、ストリートな連帯を感じる。みんなでひとつになろう精神が、これまでドロップ連打してきた全パーティーチューンをインテグレートする。

【LIVE映像】「You're the Reason」 / DOBERMAN INFINITY LIVE TOUR 2023 “DOGG RUN" at Zepp Haneda

 リリースするタイミングも常にベストだ。『DOBERMAN INFINITY LIVE TOUR 2023 “DOGG RUN”』Zepp Haneda公演(2023年12月5日)でサプライズ披露した「You're the Reason」は、10周年を間近にファンへの感謝を伝えたメッセージソング。リーダー KUBO-Cが「ファンのみんなに“いつも支えてくれてありがとう”と伝えたくて、みんなの顔を思い浮かべながら作詞した」と、ライブのクライマックスに新曲をドロップするなんて。さらっと泣かせにかかる人間性に改めて惚れ込んでしまう。常にファンのことを第一に考えた表現を発信してきたことのひとつの証左であり、集大成でもあると言えるだろう。「We are the one」と掛け合わせれば、愛の妙薬だって調合できるかもしれない。

 「We are the one」は、LDHアーティストが集結した『LDH LIVE-EXPO 2023』でも鮮やかな印象を刻んだ。同曲を歌う前、「DOBERMAN INFINITYは来年10周年を迎えます。2024年、俺らと一緒に遊んでください!」というMCの前振りがあったのだが、10周年に向けて「遊んでください」というのが何とも彼ららしいと筆者は思った。「付いてきてください」とか「期待してください」じゃない。純粋に遊ぼうというフランクな誘い。メンバー5人がマイクを持ち、HIPHOPを素地にしながら、その上に豊なボーカルフローをなじませ、グルーヴィーに流動化する。R&BとHIPHOPの架け橋となったHIPHOPソウルの女王メアリー・J.ブライジの様式美が、自由なスタイルでこうしてDOBERMAN INFINITYにも生きている。多様なパーティーチューンでビートと戯れようとする彼らの遊び心の本質には、ホイジンガが提唱した「ホモ・ルーデンス」的な生き方が認められると思う。

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