南野陽子、音楽番組『ザ・ベストテン』を振り返る 昭和ならでは驚きの制作秘話や黒柳徹子との交流も

南野陽子、『ザ・ベストテン』の思い出

歌詞忘れ、カンボジア生中継……『ザ・ベストテン』の思い出

南野陽子 ザ・ベストテン Collection(2024年6月26日発売)Disc3 ダイジェスト映像

――パジャマで出られたときもありました。あれは嫌じゃなかったのですか?

南野:全然嫌じゃなかったです。肌は80%隠したいよねっていう感じだったから、パジャマはほとんど隠れているし。浴衣も全然嫌じゃなかったですよ。

――そういった衣装やセットも含めて、楽曲、演出など、番組を振り返って、一番印象に残っている放送回を教えてください。

南野:皆さんが求めている答えとは違うと思いますけど(笑)、一番印象に残っているのは、「パンドラの恋人」で緑色の衣装を着て行ったら、白黒の画面で歌う演出だったことです。家に帰って録画を観たとき、すごくガッカリしたことが印象に残っています。と言うのもあの衣装は、あの日の『ザ・ベストテン』のためだけに作ったものだったから。でも、皆さんの期待に応えるなら、やはり「秋からも、そばにいて」の歌詞を忘れた回でしょう。その時は頭が真っ白だったから、印象も何も正直よく覚えていないんです。自分の歌唱が終わってソファに座り、工藤静香ちゃんが歌っている途中から、だんだん自分がやらかしたことの重大さに気づいて、うなだれていたことはハッキリ覚えています。

――『ザ・ベストテン』というと、ハプニングやアクシデントが起きることが多く、視聴者側としては「今日は何が起きるか」と期待していた部分がありました。それは演者側に限らず、カメラマンがこけるとかダンサーが失敗したりとか。

南野:何かあった日は、現場はすごかったですよ。怒鳴り声が飛び交って。でもそれくらい真剣に、皆さんいい絵を撮ろうと頑張ってくださっていたんです。毎週の生放送で、中継があり、凝ったセットがあり、時間内に納めなければいけない。そんななかでハプニングが起きるのは致し方のないことで、結果的にそれが笑いにつながったとしても、それを狙いに行ったことはなかったと思います。

――歌詞忘れ事件の真相は“ど忘れ”だったそうですが、他番組でもそういうことはあったのですか?

南野:あそこまでちゃんと忘れたのはあのときだけです(笑)。一番と二番がテレコになったり、そういう間違いはありましたけど、あそこまではっきり言葉が出なくなるというのは、デビュー2〜3年の若手が絶対にやってはいけないこと。おすましでの歌なのにね。

――TBSの音楽番組でハプニング集やNG集を放送すると、ご本人は不本意でしょうけど、必ず放送されて有名になってしまいましたね。

南野:不本意でもないんですよ、じつは。今となれば(笑)。でも放送の翌日はスポーツ紙の芸能欄に「南野、歌詞忘れ。恋の悩みか?」って書かれて、「はぁ?」ってなりました(笑)。

南野陽子 ザ・ベストテン Collection(2024年6月26日発売)Disc2 ダイジェスト映像

――カンボジアからの中継も伝説です。

南野:当時は衛星中継もまだ少なかったし、まだちゃんと国交が結ばれていたわけでもなかったので、本当に放送間際までつながるかわからなかった。それでもなくとも電気が不安定で、リハーサルのときからすぐ途切れちゃったりしていたんです。だから本番でちゃんと途切れることなくつながったときは、スタッフと大喜びしました。

――バンコクでは市場で人に取り囲まれながら歌っていて。何人もの人がケーブルをさばいていて。

南野:それも現地の人ですよ。中継に来るスタッフは必要最小限で、たいてい2〜3人しか来ないんです。だからその場にいる人が、みんなで協力して作っていました。私のマネージャーさんだったり、現地のコーディネーターさんも、人を止めたりケーブルをさばいたり、照明を支えていたりしました。

――みんな一丸となって作っている手作りの熱が、画面を通して伝わってきます。他局の撮影現場から中継したりということも。

南野:ドラマをフジテレビで撮っていたら、そこにTBSのカメラが来るみたいな。カンボジアからの中継も、もともと『24時間テレビ 愛は地球を救う』(日本テレビ系)の撮影で行っていたものでしたし、局の垣根を超えていたなって思います。

――コンサート会場からというのも。

南野:人によってはコンサートを一時中断して、お客さんがいるなかで歌っていたりもしました。私のファンは若い方が多かったから終演時刻が早かったのですけど、少し待ってもらって、スタッフさんが撤収しているなかで歌いました。新幹線のホームとか移動中とかに歌う方もいらっしゃって、それはいち視聴者としても面白かったです。「忙しいんだな」とか「今○○さんは大阪に居るんだ!」とか、その歌手の近況がわかったし。

――『スケバン刑事』の舞台挨拶のとき、映画館からの中継で、冒頭で殺陣を披露して歌ったこともありました。

南野:あれは本当に嫌でしたね(笑)。だって失敗したら恥ずかしいし。ドラマはNGが出せるけど、生放送の番組で、しかもお客さんが目の前にいると、やっぱりいいところを見せたくなるじゃないですか。そこで失敗したらどうしようというドキドキで、嫌だなって。でも『スケバン刑事』は、アクションシーンはスタントマンがやっているんじゃないかと疑われていて、最初は少しそういうところもありましたけど、徐々に自分でアクションシーンを演じることも多くなっていたので、できないなりにも「こうやって一生懸命やっているんです」というのは観ていただけて良かったなって。

――当時は『スケバン刑事』のヨーヨーが売られていることをご存じなかったそうですね。

南野:知らなかったです。そもそもバンダイさんからも東映さんからも、オフィシャルのヨーヨーが発売されたことは一度もなかったんです。

――いっぱい売られていた覚えがありますけど。

南野:それは全部バッタもんです(笑)。未だにお会いした方から「ヨーヨーを持っていました」と言われて、なかには「僕は本物を買ってもらえなくて」とおっしゃる方もいるのですが、「そもそも本物なんか無いから」って思っていました(笑)。

――今でもヨーヨーはできるんですか?

南野:普通のヨーヨーはできますよ。ハイパーヨーヨーという競技用の種類もあるのですが、それは回転が速すぎて上手くキャッチできなくて。でも普通のヨーヨーなら“犬の散歩”とか、いろんな技ができます。

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