連載「lit!」第106回:Dos Monos、Daichi Yamamoto & JJJ、TOFU & MIKADO……ヒップホップの多様さを示す5作
DyyPRIDE『THIRD EYE』
一際目を引くようなジャケット写真が印象的だが、作品を聴いてみると、その精神世界を表した、非常に的確でユニークなビジュアルにも見える。そんな独特な世界観と哲学を携える本作には、他の音楽からは得られない“ニュアンス”が確実に存在する。渋みのあるビートに乗る、DyyPRIDEの太い声のラップで綴られるのは実存の不確かさ、ストーナー、忘却。それはまるで生きづらい場所からの様々な逃避が、決して批判的ではない形で散りばめられているようである。実態が曖昧になっていく「砂時計」を顕著に、その掴みどころのない、しかし、何にも縛られず自由で、何かに迎合することを承諾しないような反発的な魅力に溢れている。多くの場所や、そこから離れる可能性を示してくれる音楽は魅力的であり、本作もまたそういう魔力を持った一枚だと言える。
Dos Monos『Dos Atomos』
Dos Monos『Dos Atomos』は話題の的だ。なぜなら、過去作でもオルタナティブな感覚を模索してきた彼らの一つの集大成として、洗練されながらもアバンギャルドな様相を見せているからだ。アグレッシブなギターサウンド、ドラム、しなやかなサックス、そして打楽器のように打ちつけられ、放たれるラップ。苛烈な渦の中で、多くの音が入り乱れながら、それらが計算し尽くされた場所、タイミング、距離感で運動しているのは明白で、そういう意味で、どこまでも動的な音楽作品と言えるだろう。ロックバンド化とよく言われるが、ミックスの洗練やライミングのユーモアなど、ヒップホップ的な細部の魅力は本作において特筆すべき、むしろ核の部分であると思う。コンテクストの荒波に呑まれながら、騒々しさを最後まで貫く。ヒップホップのある種の突然変異体的な在り方として、独自性に溢れる強烈な作品と言えるだろう。

























