NOAが手にした新たな気づき 2ndアルバム『Primary Colors』で描き出した“3人の自分”
僕自身が今の段階ではまだ1色に染まりたくない
――ライブ会場での音の鳴りに関して「前作は想像と違うところがあった」というお話が気になりました。今作ではその部分の改善にも意識的に取り組まれたのでしょうか?
NOA:その部分はすごく意識しましたね。SUNNYさんとミックスも自分たちでしてみようという話になったのもそれが理由です。音を作った人間だからこそ、ミックスするうえでもっと活かしたい、もっと聴かせたい部分がわかるというか。だからこそ、ライブ会場で「この部分はこういうふうに響いてほしいよね」と思う部分が、僕とSUNNYさんのなかにあるんですよね。今回、それをミックス作業で表現できたのはとても面白かったですし、SUNNYさんと一緒にミックスした曲がアルバム全体のリファレンスにもなりました。それに他のエンジニアの方にお願いする時も、それを参考にしながら「ここをもっとこうしたい」という提案ができたことで、自分たちの納得できる音の鳴りが実現したと思っています。
―― その音の響き方の変化は、ライブ時のパフォーマンスにも影響があるのでしょうか?
NOA:これに関しては、自分の気分的な部分も大きいんですが、実際に曲を聴いたファンの皆さんに与える影響も大きいと思っていて。たとえば、「YBOM」は僕とSUNNYさんでミックスしたんです。で、この曲を会場で鳴らした時に、すごく低音が響いていたことに対して、曲が始まった時のインパクトがすごいというお声をいただきました。僕としても、会場で聴いた時の音のインパクトは大事だと考えていたので、それが実際にファンの皆さんに届いて、しかもそれを感じてもらえたことが嬉しかったです。アルバムの曲をライブでやった時は、その耳に入ってくる音の厚みを感じていただきたいですね。
――そこが今作の中では特に進化した部分ということですか?
NOA:そうですね。歌詞も正直に書いたからこそ、本当にメッセージ性に厚みが出たというか。音のことも含めて、今回は前作以降で得た気づきを反映したことで、全面的にとても厚みが増したアルバムになっています。去年たくさんライブをやらせていただいたことも大きいですね。それこそ、会場で感じたことだったり、アジアツアーをしながら日本とは違った盛り上がり方をしてくださったり、そこに向けて「こういう曲を書きたい」という発想から生まれた曲もあります。そういったライブの現場での経験を活かそうと思って作りました。
――今作の1曲目「COLORS」は、楽曲ごとの“三原色”のカテゴリーにおいては色属性なしの曲とのことですが、この曲の位置づけやアルバムのオープニング曲に選んだ理由は何だったんですか?
NOA:この曲だけ唯一色がないのは、僕自身が今の段階ではまだ1色に染まりたくないと思っているからです。ただ、歌詞にある〈君と僕で重ねて広がっていく色〉というフレーズで、最初はグレーだったものが人と重なることで色が増していく、本当に始まっていく感じを表現しています。間奏部分はまさにそうで、曲自体もさまざまな色が広がるかのような作りになっています。
実はこのアルバムを作るなかで、この曲が完成するまでにいちばん時間がかかりました。最初は『Primary Colors』というアルバムだからということでリード曲の候補として「Prime」が挙がっていたんですけど、僕としてはその曲をリードにすることでは満足できなかったというか。それ以上の曲があるような気がしていたんです。だから、この「COLORS」ができた時は「これだ!」と思えたくらい手応えがありましたし、そこからはとてもスピーディーに曲のテーマやタイトルなども決まっていきましたね。実際に〈赤〉、〈青〉、〈緑〉というワードもこの曲の中に入っていますし、ここからいろいろな色を見せていくという意味の一曲で、アルバムのイントロダクションとしてふさわしい曲になったと思っています。
――今作は「RED」「BLUE」「GREEN」の3つのセクションで構成されていて、そのうちの「RED」は具体的にどのようなセクションなのでしょうか?
NOA:「RED」は全体的にとてもアグレッシブで刺激的な内容になっています。たとえば、「between」は切ない曲ではありつつ、歌詞で訴えているメッセージが強かったり、ビート感も強かったり、いい意味で激しさがありますよね。このセクションは曲調にしてもHIPHOP、ロック、ムーンバートンなど激しめの曲が多くて、メッセージ性の部分でもすべてに熱がある感じ。だから「RED」は、炎が燃え上がり始める感じがとても伝わる、そういう曲が集まったセクションになっています。
――「BLUE」は、NOAさんの歌をより楽しめるセクションになっている印象があります。
NOA:「BLUE」は、切なさをテーマに日本語で歌詞を書いた曲を集めた、センチメンタルかつエモーショナルなセクションです。とにかく歌を歌って、その歌詞を聴いてもらうこともこのセクションのテーマになっています。僕がこんなにも日本語だけで歌うのは初めてなので、おそらく日本のリスナーの皆さんからすると、より耳に入ってきやすいセクションになっていると思います。それに日本語の詩的な部分が最大限に活かされたセクションでもあるので、ビート感が強い「YBOM」や「Break Away」であっても、歌詞のメッセージは今まで以上に切ない感じになっています。
――「GREEN」は「RED」と「BLUE」の要素が混ざり合った曲で構成されているという印象があります。
NOA:「GREEN」に関しては幸福感をテーマにしていますが、僕にとっても「RED」と「BLUE」が混ざり合っている感覚があります。今作のトラックリスト的に「RED」と「BLUE」の中間が「between」で、「BLUE」と「GREEN」の中間が「Last Letter」なんです。聴く人によっては「Last Letter」は「BLUE」っぽさもあるというか、グラデーションになっている曲もあるんですよね。だから、切なさのなかにも幸福感があるというか、そういうグラデーションの要素が活かされているのがこのセクションです。たとえば、「Always and Forever」も切なさもあって「今を大事にしようよ」というようなメッセージの曲になっていますが、このセクションの曲にはそういうメッセージが強く込められています。それとライブの観点で言うと、僕が踊ってパフォーマンスするというよりは、その空間をみんなで一緒に楽しめる曲がたくさんあります。それもこのセクションの特徴ですね。
――今作の収録曲において、トラックと歌詞の制作で最も挑戦的だったのはどの曲でしたか?
NOA:ひとつは「COLORS」です。これだけレトロポップを意識した曲は今までで初めてでした。実際に作っている時はマイケル・ジャクソンの曲をめちゃくちゃ聴いていましたし、その当時の音楽のよさも活かしつつ、今の時代だからできることを考えながら作りましたね。ただ、そういう意識で作ること自体が、自分にとっては新しいアプローチだったこともあって、すごく挑戦的な曲になったと思います。
もうひとつは「answer」。とてもロック調の曲で、歌詞に関しても、これまでちょっとお利口さんだったところから、もっとワイルドになった感じがするというか。言葉選びも、10代ではできないような言葉を選びました。あと、メロディもこれまでの曲以上に色気を意識して作ったので、そういう意味でも挑戦的な曲だと思いますね。