NMB48は渋谷凪咲の卒業を乗り越えられるか グループカラーの刷新と原点回帰で目指す“大阪から世界へ”

NMB48、新フェーズはどうなる?

 NMB48の歴史は“渋谷凪咲以前・以後”に分かれるーー。そのように言い表しても決して大袈裟ではないほど、令和のバラエティ史にその名を刻んだ渋谷凪咲の存在は大きかった。今やバラエティ番組でだけではなく、目標だった女優業も手繰り寄せるなど、AKB48グループでも貴重な成功メンバーの一人となった。

 2023年末をもってグループを卒業した渋谷の不在は、現在のNMB48を語る上では欠かせないトピックスである。一方、今年2月に筆者がNMB48キャプテン・小嶋花梨をインタビューした際、彼女は渋谷について「大きな存在でした」と認めつつ、同じことなんて絶対にできないとして「自分は自分の戦い方でやっていく」と良い意味でその“穴”を意識しないと語っていた(書籍『IDOL FILE Vol.32』(2024年/ロックスエンタテインメントより)。筆者は小嶋のその言葉に、頼もしさと、そして“渋谷凪咲以後”の重要なキーワードが込められている気がした。

 5月22日にリリースされる29thシングル『これが愛なのか?』が、“渋谷凪咲以後”のNMB48の新たなクロニクルの1ページ目に記されることになるのは間違いないだろう。

NMB48 - これが愛なのか?(Is this love?) Official MV

 同曲で、現在のNMB48らしい“戦い方”のシンボルとなるのは、ダブルセンターを飾る塩月希依音と坂田心咲の18歳コンビだ。また、CDジャケットのテイストはメイクや衣装を含めて非常にシンプルな仕上がりに。これまでのNMB48のディスコグラフィーの中では異彩を放つものになっているが、メンバーの指についている赤い糸は、グループの全員の気持ちがつながっているという“絆”の証だそうだ。

 そんな「これが愛なのか?」のなかに綴られているのは、誰かを愛するという感情を知った登場人物の抑えきれない想い。ただ、ラブソングではあるが、〈すべてを捨ててでも 手に入れたいもの ある日 突然 僕にもチャンスが来た〉という歌詞は、渋谷の卒業によって誰もが“NMB48の次なるスター”になるチャンスが巡ってきた現状をとらえているようにも解釈できる。それらの点においても、“渋谷凪咲以後”を前向きに受け止められる楽曲ではないだろうか。

 ちなみにカップリング曲「Now」も「“渋谷凪咲以後”のNMB48に停滞している時間はない」という熱を感じさせるものである。夢を投げ出したくなる瞬間、孤独さなどセンチメンタリティもまじえながら、それでも〈砂漠のど真ん中でも あゆみを止めないように 強靭な意思を持てよ Buddy〉や〈Everybody 撤退はあり得ない 僕らは挑(いど)むよ〉といった強い言葉を並べることで、各自の奮起を促しているように聴こえる。

 安部若菜が作詞を担当したカップリング曲「青春テトラポット」も佳作で、若者の青春模様を活写しているだけではなく、〈夢に手を伸ばせばいい きっと叶う〉という、今のNMB48に必要な言葉が燦々と輝いている。続く「おとめのアイス」も安部が作詞。こちらは“アイス”というアイテムを使いながら、貴重な時間は一瞬のうちに過ぎていくものであることを実感させる内容となっている。安部の作詞家としての才能が溢れた2曲であり、またいずれも現在のNMB48に重ねて聴くこともできるのではないだろうか。

抜群のコメディセンス・塩月希依音、スピード出世・坂田心咲のWセンター

 なにより「これが愛なのか?」でダブルセンターをつとめる塩月、坂田は早くから期待が寄せられていたメンバーである。2024年3月でお披露目から6年を迎えた塩月は、抜群のコメディセンスの持ち主である。2022年に開催された、吉本新喜劇とNMB48によるミュージカル『ぐれいてすと な 笑まん』では、吉本新喜劇のすっちーからのアドリブの“乱れ打ち”をすべて受け止め、ちゃんと返していった。特に笑いの間を作るのがうまく、ノリも良い。あと関西のバラエティ好きとしては、お笑い芸人が多数出演するバラエティ番組『ミキBASE~いいね!で応援~』(MBS)でのリアクション力やコメント力も毎度感心させられる。

 2022年1月にお披露目された坂田は、わずか半年で研究生からチームNへ異例のスピード昇格を果たした。さらに4thアルバム『NMB13』の表題曲「Done」で選抜入りを果たすなど、超大型ルーキーとして輝きを放った。お披露目からたった7カ月の時点での取材では、9期生募集の話題について「(9期生が入ってくる頃には)もう1年がたってるという焦りの方が強い。すごい後輩に抜かされたら悔しい。気を引き締めて頑張っています」(※1)と話すなど、一切の慢心がなかった。坂田のその隙のなさが、エース格へと近づくことができた大きな要因ではないだろうか。

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