東京スカパラダイスオーケストラ、Mr.Children、TK from 凛として時雨、ゲスの極み乙女、&TEAM、乃紫……注目新作6作をレビュー

New Releases In Focus

 毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回は東京スカパラダイスオーケストラ「風に戦ぐブルーズ feat.TAKUMA (10-FEET)」、Mr.Children「記憶の旅人」、TK from 凛として時雨「誰我為」、ゲスの極み乙女「シアラ」、&TEAM「五月雨 (Samidare)」、乃紫「初恋キラー」の6作品をピックアップした。(編集部)

東京スカパラダイスオーケストラ「風に戦ぐブルーズ feat.TAKUMA (10-FEET)」

 デビュー35周年の最新シングル。ゲストシンガーは10-FEETのTAKUMA(Vo/Gt)である。スカパラのデビュー25周年イヤーでは“バンドコラボ”として10-FEETをゲストに迎えた「閃光」が生まれたが、あれから10年を経たこの新曲の、なんと大人っぽいことか。いい大人を捕まえて「大人っぽい」もないとは思うが、今回はスカというよりボサノヴァのフレーバーが採用されており、ただ踊れるだけではない黄昏のムードが満載。さらにTAKUMAの歌唱は10年前とはほぼ別もので、ビブラートを多用した色っぽい歌心は、常に飾らずやんちゃといったいつものイメージを覆す。トドメは最後のポエトリーリーディング。近しい誰かに向けた台詞だろうか。なるほど、このほろ苦さは確かにブルースだ。(石井)

風に戦ぐブルーズ feat.TAKUMA (10-FEET) / TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA

Mr.Children「記憶の旅人」

5月3日(金)公開 映画『青春18×2 君へと続く道』主題歌 Mr.Children「記憶の旅人」スペシャル映像

 日本と台湾での合作映画『青春18×2 君へと続く道』の書き下ろし主題歌。桜井和寿(Vo)のコメントによると「不純なものは極力取り除いて音楽として抽出した」そうで、確かに遊びもなければ時代に対する目配せもない、6分半をかけてゆったり傷心を歌い上げるバラードである。始まりは鍵盤、途中でストリングスも入ってくるから、これらは「4人組バンド」を主語にすれば装飾と解釈できる。ただ、これらの楽器に伴奏の役割をすっかり明け渡してしまえるのがMr.Childrenで、ギターを派手に弾きたいとかベースを大きくしたいというような意識を出さないことがこの曲の純粋さを演出しているように感じる。終わってしまった恋から、小さな希望を見出す後半の流れが、この曲の美しさを決定づける。(石井)

TK from 凛として時雨「誰我為」

『僕のヒーローアカデミア』ヒロアカ7期OPノンクレジット映像/OPテーマ:「誰我為」TK from 凛として時雨/My Heroacademia 7th season Opening Movie

 TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』(日本テレビ系)7期オープニングテーマとなる書き下ろし新曲。この人気アニメがただ勇敢なヒーローたちを描くものではないことは、過去いくつもの主題歌が伝えてきたのだが、「それでも前に進む勇気」ではなく「今にもくずおれてしまいそうな不安」を、ここまで正面から描いた一曲は初めてかもしれない。歌詞はもちろん、泣き出す寸前のように響く歌声、ノイジーなバンドサウンドに鍵盤とストリングスを掛け合わせた、狂おしくも悲劇的なアレンジ。常に破綻ギリギリ、どこまで行っても安定しないTKの感性は、他者が真似できないという意味で職人技にも近い。結果、曲全体がずっと断末魔の叫びを上げている印象になるのだから恐れ入る。(石井)

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