凛として時雨 TKと“不条理アニメ”はなぜ相性が良い? 『水星の魔女』『PSYCHO-PASS』『東京喰種』手掛けた歴代曲から紐解く

 凛として時雨のギターボーカルを務めるTKがBiSHのアイナ・ジ・エンドに楽曲提供した「Red:birthmark」が、現在放送中のアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第2クールのED曲としてオンエア中だ。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』Season2 エンディング映像(ノンクレジット)|アイナ・ジ・エンド「Red:birthmark」

 TKはバンド・ソロ名義を問わず、これまで数々のアニメ作品に楽曲を提供しており、その存在感と人気は日本国内外でも根強い。なぜ彼の楽曲は、アニメ作品とマッチし、リスナーの耳を満足させられるのだろうか。本稿ではその理由を深く探ってみる。

 TKが手掛けた代表的なアニソンといえば、『東京喰種トーキョーグール』OPテーマ「unravel」(TK from 凛として時雨 名義)を挙げるファンは少なくないだろう。2014年7月にリリースされた同曲は、アニメ作品のヒットとともに楽曲とTKの認知を広げた。

 特に海外のアニメファンからの人気も非常に高く、Spotifyが発表した2022年の「海外で最も再生された国内アーティストの楽曲」ランキングで10位を獲得。アニメの人気が根強いとはいえ、アニメ公開から10年近く経った現在でも愛されていることがはっきりと伝わってくる(※1)。

TK from 凛として時雨 『unravel』 Music Video(Full Size)

 『PSYCHO-PASS』第1期OPテーマの「abnormalize」(凛として時雨 名義)から、昨年話題を呼んだ『チェンソーマン』第8話EDテーマの「first death」(TK from 凛として時雨 名義)まで、彼はさまざまなアニメ作品に楽曲を提供してきたが、その歴史を辿ると自身の音楽性とマッチした作品に楽曲提供していることが分かる。

 例えば『東京喰種トーキョーグール』や『PSYCHO-PASS』、『チェンソーマン』『15周年 コードギアス 反逆のルルーシュ』『91Days』など、重厚な物語で観る者の倫理観を問うような作品が特徴的だ。いずれも物語の中で登場人物の思惑が交錯し、歯車がかみ合わないような状況が何度となく起こる。そして時には、殺伐としたクライマックスを迎える作品も。そのような不条理かつダークな作品が、彼の音楽にマッチする傾向にある。

 TKが生み出す音楽の特徴のひとつは、サウンドに秘められた“鋭利さ”だ。音の強弱で緊張感を持った音像を生み出すバンドアンサンブル、音数の多さや悲鳴のような歪みを効かせるギターサウンドなど、ポストハードコアやマスロックを背景にした音作りは、TKならではのオリジナリティがある。

 ソロ名義になるとバンドでの音作りとは違い、ストリングスを用いて表現されるハーモニーとメロディライン、音の厚みと薄さを自在に行き来するサウンドメイクも特徴的だ。そういった要素を「ポップス」というフレームにギュッと閉じ込めるセンスが卓抜としており、楽曲によってはシネマティックな印象を強く与えてくれる。

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