Aisho Nakajima、“居場所”を探している人のためにできること 『東京レインボープライド』出演への思いも

Aisho Nakajima、音楽活動に対する思い

 2020年春に本格的な音楽活動をスタートさせたAisho Nakajima。自身のルーツやジェンダーを反映したリアルなリリック、R&Bからエレクトロまでジャンルを超越した音楽性、自分自身の美意識をダイレクトに込めたビジュアルとパフォーマンスによって注目度を高めているクィアアーティストだ。

 今年に入って「Gangbang」「Made him cry」をリリース。さらにSpotifyが朝日新聞ポッドキャストとともに立ち上げた「PRIDE CODE」(LGBTQ+コミュニティの多様な声を届けることを推進するプロジェクト)の特別番組に出演、『東京レインボープライド2024』に参加するなど活動のフィールドを拡大しているAishoに、現在のモードや音楽活動に対する思い、今後のビジョンなどについて語ってもらった。(森朋之)

Aisho Nakajimaが音楽で表現するクィアカルチャー

Aisho Nakajimaインタビュー写真(撮影=林将平)

――まずは最近の音楽活動について聞かせてください。2月にYohji Igarashiのプロデュース楽曲「Gangbang」をリリース。楽曲を発表したときに「自分の身体には自身の権利があるという事、クィアカルチャーとセックスポジティブをテーマにした楽曲です」とコメントされていましたが、制作のプロセスについて教えてもらえますか?

Aisho Nakajima(以下、Aisho):Yohjiくんとは2回目のコラボレーションなんです。初めて一緒に制作したのは2022年に出した「LUNA」という曲で、そのときは僕からリファレンスの曲を送って「こういうイメージのビートを作ってほしいです」とお願いして。「Gangbang」はまったく逆で、Yohjiくんがビートのアイデアを持ってきてくれたんです。彼に任せれば絶対にいいものができると思っていたんですけど、ビートが送られてきたときに「ヤバ、何これ?!」と言ってしまうくらい想像以上でした。そこからはスムーズでしたね。リリックに関しては、ビートを聴いて、最初に出てきた言葉がテーマになった感じです。いつもそうなんですよ、僕は。

――キスシーンがひたすら続くMVもめちゃくちゃインパクトがありました。

Aisho:撮影めっちゃ楽しかったです! 映像ディレクターのMatheus Katayamaとはデモ音源の段階から共有していて。歌詞のイメージ、映像のイメージをやり取りしながら、「こういうメイクがしたい」みたいな話をしながら進めていきました。まさにコラボレーションという感じですごく自然でしたね。

Aisho Nakajima - Gangbang feat. Yohji Igarashi (Official Music Video)

――リリースされたばかりの「Made him cry」は切ない雰囲気のバラードナンバー。

Aisho:バラードはかなり久しぶりだったんですけど、今回は春をイメージして作りました。過去の恋愛、有害な関係を持っていた相手に向けて歌っている曲ですね。自分でType Beatを探したんですけど、このビートを聴いたときにすごく切ない、悲しい気持ちになって。そこから「Made him cry」の歌詞につながっていきました。

Aisho Nakajima - Made him cry (Audio)

ガールズグループ、アリアナ・グランデらから受ける刺激

Aisho Nakajimaインタビュー写真(撮影=林将平)

――制作スタイルの幅も広がっているんですね。Aishoさんが気になっている音楽、チェックしている楽曲はどんな感じでしょうか?

Aisho:今は制作期間なので自分の曲ばっかり聴いてますね(笑)。「こういう音を入れたい」とか「この音は要らないな」とか足し算・引き算をずっとやっていて。そういうときは他のアーティストの曲を全然聴かなくなっちゃうんですよ。でも、昨年はいろいろ聴いていました。Spotifyのプレイリストをチェックして「いいな」と思った曲を聴いて。好きになった曲、一生聴いちゃうんですよ(笑)。あと、頭のなかで声とビートを振り分けちゃうんですよね。そうやって聴くことで自然と勉強になってるのかなって。ここ1~2年はK-POPもよく聴いています。もともと少女時代やKARAが大好きだったんですけど、その後、離れていた時期があって。だいぶ遅いんですけどBLACKPINKやTWICEをきっかけに、いろいろなグループの曲を聴くようになりました。とにかくクオリティが高いし、カッコいい曲が多いじゃないですか。

――アーティストとしてもK-POPに刺激を受けている?

Aisho:すごく受けていますね。楽曲の作りもそうだし、ファッションやメイクなどもそうだし、すべてがしっかり計算されていて。すごいなって思うし、インスピレーションを受けまくってます。K-POPに限らず、ガールズグループが大好きなんですよ。Fifth HarmonyとかLittle Mixとか。最近だとXGにもハマっています。デビューまでの様子を撮ったドキュメンタリーも見たのですが、みんな本当に頑張ってきたんだなって思って、さらに応援したくなって。もちろん音楽もダンスもビジュアルも大好きです。メンバー同士の絆が感じられるのもすごくよくて。自分は昔からコミュニティを求めていたんです。自分に当てはまる場所が見つからなかったし、何かのコミュニティだったり、絆で結ばれている人たちを見るだけでホッとするんですよね。

――以前から「いちばん好きなのはアリアナ・グランデ」とも公言してますね。

Aisho:大好きです! 音楽は目に見えないけれど、アリアナの曲はストラクチャーがはっきりしていて、触れられるような感じがするんです。そういう感覚はアリアナ以外では味わえない。“声自体が楽器”というイメージにもすごくインスパイアされています。アカペラバージョンなども聴いて、バックボーカルの入れ方やパンの振り方も参考にしていて。自分の楽曲制作においても、いろいろな面で影響を受けていると思います。特にバラードは「アリアナの曲を聴いていなかったら、こういう作り方はしていないだろうな」と思うほどです。もちろん歌詞も好きです。恋愛が軸になっていると思うのですが、すごく共感できますね。

Aisho Nakajimaインタビュー写真(撮影=林将平)

――Aishoさんは10代のとき“ギャルサー"に入っていたそうですが、そのときも居場所を求めていたんでしょうか?

Aisho:まだ居場所を探していた段階でしたね。当時は「見つけた!」と思ったし、メイクとかも恥ずかしがらずにできたし、すごく楽しかったんですけどね。

――今現在はどうでしょう? 音楽をはじめとする様々な活動を通して、自分の居場所を作れている実感もあるのでは?

Aisho:どうなんだろう? まだしっくり来ている感じではないのかなと思ったりもします。家族みたいな友達はたくさんいるし、そういう人達と一緒のときは自然な自分でいられるんですけどね。ただ、人間は変わっていくじゃないですか。都会の生活にストレスを感じることもあるし、いろんな場所を見て、安心できるところを見つけたいと思ってます。音楽に関しては、僕の曲を聴いたり、MVを見てくれた人がちょっと安心して、「自分はこのままでいいんだ」って思ってくれたら十分というか。一人でも刺さったらいいなと思っています。

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