Bialystocksに聞く「近頃」制作プロセス ドラマ『RoOT / ルート』OPテーマに導かれたラフなモード

Bialystocksインタビュー

 Bialystocksが2024年第1弾リリースとなる「近頃」をリリースした。同曲は映画化、舞台化と展開してきたアニメ『オッドタクシー』の世界から新たに誕生したドラマ『RoOT / ルート』(テレビ東京ほか)のオープニングテーマとして書き下ろされた1曲。若手探偵のバディものというテーマ性や、背景にある『オッドタクシー』の世界観がこの曲にどう落とし込まれているかなど、聴きどころも多い。エバーグリーンと新しさのどちらにも独特の距離感をとりながら、完成度の高い作品を送り出し続けるBialystocks。テンポ感や音像に新たなフェーズの到来も感じるこの曲の制作プロセスについて聞いた。(石角友香)

“気の抜けた感じ”が鍵を握った「近頃」の制作

――まずドラマの初回放送をご覧になっていかがでしたか。

甫木元 空(以下、甫木元):キーとなるタクシーのラジオから流れてくるのは面白い使われ方だなと思いましたね。いわゆるオープニング映像がある感じなのかなと思ったんですけど、物語の世界観に馴染んでいるように使ってもらってよかったなと。

菊池 剛(以下、菊池):日本のドラマのなかでも絵が暗くて、雰囲気が海外ドラマっぽくてそれがいいなと思いましたね。そういうドラマに曲を使ってもらってよかったです。

――今回はどのように制作をスタートされたのでしょうか。

甫木元:二人とも『オッドタクシー』に対して先入観があったわけではなかったので、結果的には今までと変わらない進め方にはなりました。いろいろ資料を見せていただいてお互い曲を持ち寄って。探偵モノという話も聞いていたので「バラードじゃないほうがいいよね」みたいな話はありました。そして今回、菊池が制作した曲ということで。

――Bialystocksの新しいターンが来たなと感じる痛快な曲でした。

菊池:この曲だけちょっと変わっているかもしれないです(笑)。

――菊池さんのデモは完成形に近かったですか?

菊池:最終的に仕上がったものとはちょっと違ったかなと思いますね。疾走感、ビート感のある曲というイメージをドラマの方からリクエストいただいて。結構苦手なテーマではあるんですけど、とりあえず甫木元が歌うことは無視して、完全に頭の中で別の人が歌っている感じで考えました。

――「Nevermore」以来ぐらいのアップテンポかと思うんですけど、全然ジャンル感は違いますね。

菊池:そうですね。最近速い曲をあんまり作ってないなと思っていたので、ちょうどよかったのかなと。……なんていうか、インテリ感のないというか、ちょっと思考を忘れているようなビート感というか……うまい用語がないんですけど。

甫木元:「Nevermore」の時はイギリスの中学生がガレージでガツンと音を出しているイメージ。今回はまた違いますけど、違う方向のネジがちょっと外れちゃってる感じというか(笑)。いい言い回しが見つからない。

菊池:ダサカッコいい、みたいなことですかね(笑)。

――例えば最近の曲で何か参照点はあったんですか?

菊池:ふだん音楽は流し聴きしちゃっているので具体的な曲名はわからないんですけど、インディのプレイリストを聴いていると、1分とかで終わるようなふざけた感じの速い曲があって。そういう感じは取り入れたいなと思ってました。

――楽器はどんなものがメインになるイメージでしたか?

菊池:楽器は最初は80's感が強い感じで作ってたんですけど、甫木元以外の人の声を想定して書いていたので歌詞はすべて英語詞で作っていたんですね。それを甫木元のボーカルに差し替えたら「65点ぐらいまでしか行かないな」と感じてしまって。甫木元が悪いわけではないんですけど、サウンドとの相性がよくなくて。で、結果的にアコースティックギターが主体な感じになりました。

――出来上がった歌を聴くと制作段階で用いられていた“菊池さん英語”がどういうものか全く想像できないぐらいオリジナルな日本語詞だなと思いました。

甫木元:今回は“空耳アワー”的な感じでしたね。英語の音を日本語の歌詞に替えてもしっくりこないことがすごく多くて。結構ギリギリまでレコーディング中も「やっぱり繰り返したほうがいいかな」とか「もっとシンプルにした方がいいんじゃないか」とか、印象に残るフレーズが繰り返されなくちゃいけないみたいな話はずっとしていたかもしれないですね。

――〈全然まだ〉という歌詞が楽器のリフやトリガーみたいな感じで軽やかだなと。

甫木元:ありがとうございます。これは“菊池英語”の時から印象的だなと僕も思っていたので、〈まだ〉の部分をこのまま生かせるなと思って。そこですかね。

――甫木元さんのボーカルの重ねによる多声感も特徴的ですね。

菊池:音量が出てますよね、ハモリの。

甫木元:確かに。今回初めて座って歌って、脱力とも違うんですけど「ちょっと気が抜けた感じで歌いませんか?」みたいな話をしていて。すごく時間はかかっちゃったんですけど、いい雰囲気で録ることができました。

Bialystocks写真

――歌詞の書き方という意味ではどうでしたか?

甫木元:“菊池英語”の段階で明確に全体像というか、「ここはこうしたい」というのはメモって、その上でいろいろ決めていたんですね。あとは、毎週オープニングで流れますけど、いろんな話を経ていくじゃないですか。すごく陽気な回もあったり暗い回もあったり、いろいろあると思うんですけど、一つの話に寄りすぎないようにもしました。ほぼ二人のバディ探偵モノなので、夜をずっとあてもなくさまよっている感じはなるべく大枠に入れつつ、一つの話にフォーカスするとか誰か一人がパッと思い浮かぶのではなく、抽象的になっちゃうかもしれないですけど、ボヤっとしたその作品の根幹部分に触れていればいいのかなというのは思っていたところではあります。

菊池:僕は歌詞の内容については考えていなくて。勝手に英語の別の歌詞をつけていただけなので、基本的には甫木元に任せています。ただ、今回の曲はいつもよりは英語(で書いた歌詞を残すこと)を諦めてますね。自分で言うのもあれですけど、英語詞がすごくうまく書けていたんです。でも、それを無理やり日本語にあてはめていくよりは日本語として全然違う語呂がいいものを考えた方がいいと判断しました。英語が残っているところも一部ありますけど、サビは英語関係なく甫木元が最初の方にさらっと歌ったのがあって。もっといいものがないか探したりもしたんですけど、最後の最後に今の形に戻したという感じですかね。

Bialystocks - 近頃【Music Video】

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