45億回再生のヒットを生んだSHAUNが追求した“イージーさ” 日本EP『For a While』までの道のり

45億回再生ヒット生んだSHAUNの手腕

SHAUNが感じるJ-POPへの憧れは「プロトコル=儀礼上のルール」

――「Way Back Home」は日本でZ世代を中心にバズり、2022年TikTok年間再生回数ランキングではTOP10入りして、TikTokの定番曲として浸透しています。

SHAUN:TikTokのおかげで、たくさんの恩恵をいただいたと思います。あとは“踊ってみた”や“歌ってみた”のおかげで、たくさんの方がこの曲を知ってくれたし、愛もたくさんいただけた。韓国だけでなくほかの国でも反響が大きかったですが、なかでも日本では本当にたくさんの方々に愛されているなと思いましたね。

――それで去年10月には「Way Back Home (Japanese Ver.)」をリリースされて。

SHAUN:はい。何より、この曲は日本語に合うと思ったんです。「Way Back Home」のメロディに日本語の歌詞をつけたら、この曲が持つエモさがしっかりと伝わると思いましたね。

SHAUN 「Way Back Home (Japanese Ver.)」Lyric Video

――そもそもSHAUNさんは、日本の文化がお好きだとか。

SHAUN:幼い頃から、日本の文化に触れることが多かったです。音楽もそうだし、アニメもそう。それだけに留まらず、多岐にわたって日本のエンターテインメントにたくさん触れてきて、それが今の表現にも活かされてると思います。

――ご自宅には日本の漫画やアニメのフィギュアもたくさんあるそうで。

SHAUN:そうなんです! 来日するたびにフィギュアの友達が増えていまして(笑)。最近もまた新しく仲間が増えました。

――『魔法少女まどか☆マギカ』に関しては、全キャラのフィギュアがあるっていう。

SHAUN:ああ、『マママ』ですね! アニメに関しては本当に幅広く好きで。全般的に応援したい気持ちがあるからこそ、フィギュアを集めているというのもありますし、それだけに限らずグッズもいろいろと買い揃えています。音楽がメインの仕事なので、音楽以外に気を紛らわす何かが必要になるんですけど、僕にとってはそれが日本のアニメと漫画なんですよね。

――『ベルサイユのばら』や『ガラスの仮面』がお好きと知った時は「さすが!」と思いました。

SHAUN:ははは! 絵のタッチもそうですけど、池田理代子さんの作品はストーリーがすごいんですよね。日本のアニメや漫画が好きな理由は、その種目だけの世界が開かれるところにあると思うんですね。たとえば、ミニカーを題材にしてる漫画だったら「世界最高の競技はミニカーだ!」と思えたりとか、『SLAM DUNK』のようにバスケットボールで全国制覇を狙う漫画を読んだら「世界最高のスポーツはバスケだ!」と思わせる魅力がある。そういう意味で、いろんな世界を間接的に体験させてもらえるのが、僕にとってエネルギーの源になっています。作品を通して情熱に向かってひた走る人々、そのキャラクターを見ていると、自分に問いかけることができるんですね。「お前は今何に向かって走ってるんだ!」と。日本の漫画やアニメは、自分の情熱的な欲求を満たしてくれるんです。

――SHAUNさんはJ-POPもお好きだそうですけど、どんなところに魅力を感じていますか?

SHAUN:音楽性よりも前に、日本の音楽シーンのプロトコル(儀礼上のルール)な部分に憧れる気持ちが大きいんです。ファンがまったくいなかったバンドがゼロから音楽活動を始めて、3年後に日本武道館に立つこともあるじゃないですか。そういう「いつか人気になれる」「光を浴びられる」と夢を見ることができる日本の音楽の世界が羨ましいなと思っています。僕はバンド(The Koxx)でキャリアをスタートさせたのもあって、なおさらそう思うんですね。

 韓国とは違って、日本はインディーズでもマネージャーがついていたり、しっかりとファンがいたり。そういった素晴らしい環境が維持されているプロトコルや基盤作りが、かっこいいなと思います。J-POPを聴くのが好きなのはもちろんのこと、それ以外のチームごとの歩んできたストーリーやチームを支えているシーンがあることや、応援しているファンやリスナーがいること――そういった構造自体が本当に素敵だなと思います。

――日本と韓国で音作りの違いって感じますか?

SHAUN:一概にこれとは言えないんですが、日本の音楽だけが備えているサウンドってあると思うんですね。ただ、音を作る過程に関しては、日本も韓国も本質は一緒だと思います。材料さえよければ、いい音楽はどこの国でも認められると信じています。個人的には、すべての楽器の音を消して、ボーカルだけを残してもちゃんと音楽として渡り合えるものが本物だと思っているし、それが歌だと思いますね。

――EPの話に繋げると、表題曲「For a While」は日本オリジナル楽曲とのことですが、どんなことを考えて作られたのでしょうか?

SHAUN:昨年のクリスマス前に、会社の人達やチームのみんなで海に合宿に行ったんです。

――冬の海に?

SHAUN:海に行っても、僕はずっと部屋に引きこもって。つまり同じ空間で合宿をしていたといいますか……監禁されながら作ったのが「For a While」なんです(笑)。だけど作ってすぐに発表するんじゃなくて、一旦データとしてしまっていたんですね。で、EPを作ることになり、ワーナーミュージック・ジャパンの方々に、この曲を聴いてもらったら「これは日本で受け入れられる曲だ」と言っていただきまして。歌詞については、幼い頃に自分の経験したストーリーが土台になっています。スタジオで仲間たちと一緒に音楽を鳴らしていた時、すごく幸せな瞬間だった。「10年、20年して、またこの建物に来て扉を開けたら、あの時ままのみんながいてくれたらいいな」みたいな話をその時もしたし、当時のことを今振り返っても、やっぱり心がときめくんですよね。もちろん時を戻すことはできない。だけど、あの時思ったドキドキやときめき、そういったものは誰もが感じたことがあるし、誰よりも熱く音楽と生きてきた自分の姿をそのまましたためたいと思ったからこそ、この内容になりました。きっとリスナーの方々にも、共感してもらえるんじゃないかなと思ってます。

――サウンド面では、どんなことを意識されましたか?

SHAUN:僕が今いちばんハマっているのが、リキッドファンクなんです。そもそもリキッドファンクは、キックの音がハウスほど大きくなくて、こじんまりとしているけれども、しっかりと耳に残る。そのなかでサブベースが大きいアンサンブルで構成されているんですけど、ほかの国の曲は808(低音のシンセサイズされたドラムサウンド)が響く感じで、それに比べると日本は無理なくバランスを取っているなと思うんですね。「For a While」はそういったエアー感をしっかりと活かせたら、と考えています。とはいえ、最近の日本の音楽を聴いていると、しっかりとローを効かせる傾向が強くなっていると思うんですけど、僕の好きな日本の音楽は無理のない範囲でしっかりとバランスを取って、いろいろな音が聴けるところ。なので、なるべく淡白な心地好いところを探している最中です。

――今、制作が大詰めの段階(取材は3月下旬に実施)とのことですが、EP『For a While』はどんな一枚になりそうですか?

SHAUN:これまで僕の歩んできた道を既存曲の3曲で表現している一方、今自分が好きで推していきたい曲を「For a While」で表しています。つまり、このEPをもって「これが僕だよ」という挨拶ができたらと思いますね。

――最後に、今後のビジョンについて教えてください。

SHAUN:日本でより多くの方々に僕の曲や姿を見せたいです。今後はアジアツアーを予定しているんですけど、ツアーが終わった後には世界中を回って、いろいろな方々にお会いする計画があります。僕は幸いなことに、ワーナーミュージック・ジャパンの方々から、たくさんの関心と応援と、それから支援をしてもらっていて。自分も積極的に日本語の楽曲を発信していきたいなと思います。同じように、韓国でもこれまで通りひたむきに音楽に取り組みながら、少しでもたくさんの方々に曲の名前じゃなく僕の名前を驚かせられるようにして、一生懸命頑張りたいと思います。

■配信情報
EP『For a While』
4月26日(金)リリース

・For a While
・Bad Habits (Japanese Version)
・Terminal (Japanese Version)
・Way Back Home (Japanese Version)

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