「音楽で壁を取り払いたい」 三上ちさこ18年ぶりの新バンド sayuras、“もがく大人のかっこよさ”

sayuras、“もがく大人のかっこよさ”

 シンガーソングライター 三上ちさこ(Vo)はキャリア23年を迎えた昨年、2005年のfra-foa解散以降18年ぶりとなる新バンド sayurasを結成した。メンバーは、根岸孝旨(Ba)、西川進(Gt)、平里修一(Dr)。近年の三上のソロライブを支えてきた手練れのプレイヤーたちだ。満を持して3月20日にリリースされた1st EP『Adult Organized Rock』はロック好きの心を掴むに違いない、抜群の歌と演奏を楽しめる素晴らしい作品。酸いも甘いもよく知るベテラン4人ならではの、大人の衝動、大人のオルタナティブロック――それこそがsayurasの個性である。

 リアルサウンドでは、sayurasの1st EPリリース、そして開催目前の『sayurasレコ発ワンマンライブ 「Adult Organized Rock」』を記念して、2回連続のインタビューを行った。後編となる本稿には、sayurasのメンバー全員が登場。このタイミングで結成に至った経緯、各メンバーの個性、垣根にとらわれないリファレンスを駆使してでき上がった1st EPの制作過程、そして日常と地続きだからこそ深く響く三上のメッセージ……など、様々な角度からsayurasに迫った。(信太卓実)

sayuras結成に至ったソロライブでの大きな手応え

――まず三上さんから、sayuras結成に至る経緯を教えてください。

三上ちさこ(以下、三上):ソロ曲の「レプリカント(絶滅危惧種)」のプロデュースを、fra-foaの2ndアルバム『13 leaves』(2002年)をプロデュースしてくれた根岸さんにお願いしようということになって、約20年ぶりにお会いしたのが最初のきっかけでしたね。

根岸孝旨(以下、根岸):その前に、僕がやっていたバンド(Dr.Strange Love)を観にきてくれたりもしたよね。だからそんなに久しぶりに会うわけでもなかったんだけど、仕事は全然していなかったので。

三上:そうなんです。『Re: Born 20+2 Anniversary Live -三度目の正直-』(2022年に下北沢SHELTERで開催された三上のワンマンライブ)のときもベースを根岸さんにお願いしたんですけど、一緒にやるならギターは西川さん、ドラムは平里さんがいいんじゃないかと紹介してくれて。それで、このメンバーでライブをまず1回やったんですけど、リハのときから「終わらないでほしい!」と思うくらい、めちゃくちゃ気持ちよくて。音楽はもちろん、人間的にも一緒にいてすごく心地よかった。なので、そのライブが終わったときに「一緒にバンドをやりたいです」とお誘いしました。その後も同じメンバーで何度かワンマンライブをやっていく中で、どんどん気持ちよさが増していって。満を持して昨年、やっとバンドを組めたという感じですね。

――このメンバーのグルーヴは何がそこまで特別だったんでしょう?

三上:いろんなメンバーと一緒にfra-foaの曲をやってきましたけど、この4人でやったときが一番しっくりきたんです。とにかく一人ひとりの出す音が素晴らしくて。音圧、音像、そこに乗っている感情とか歴史とか。メンバー全員がfra-foaに対して愛情とリスペクトを持って奏でてくれていることがわかったし、そこに自分のオリジナリティを加えていることもひしひしと感じていました。きっとライブを観てくれたお客さんもそう感じてくれたんじゃないかな。

三上ちさこ
三上ちさこ

――この編成のソロライブを観続けてきた自分もまさにそう感じますね。ソロで復帰した三上さんはもともとバンドを組みたい気持ちがあったのでしょうか?

三上:ありました。確かにソロってバンドではできないことがいろいろできるけど、私の中では“構築美”みたいなイメージというか。でもバンドって、轟音の中で何でもできる、自由になれる、“大解放”みたいな感覚があるんです。それをずっとやりたかったんだと思いますね。

――三上さんから声をかけられて、皆さんの素直な想いはどうでしたか。

根岸:最初に返事をしたときは、正直何も考えずに「やろうやろう!」という感じでした。このメンバーでやれば形になるだろうし、ライブの後で頭がハイになっていたからね(笑)。あと、平里はスタジオミュージシャンとよく一緒にやっていて、業界で知っている人は知ってるんだけど、もっと一般の人たちにも彼の演奏を見てもらいたいなという気持ちがあったんですよ。ロックバンドをやっているイメージがない人だったので、このメンツと一緒にやるのは面白いかなと。そういう狙いもありました。

――ということですが、平里さんはいかがでしたか。

平里修一(以下、平里):単純に何度かこの4人でやったライブが楽しかったんです。根岸さんと西川さんの演奏は昔から知っているし、自分が何かやらなくてもかっこいい雰囲気になるだろうという気持ちはありましたけど、バンドとして向き合うことでどうなるかなっていうのは楽しみでしたね。お二人はプロデューサーとしてもベテランなので、まず僕が好きにやってみた上で、意見を聞くのも楽しいんですよ。

――西川さんはいかがですか。

西川進(以下、西川):サポートとしてやらせていただいているときから、三上さんの歌に惚れ込んでいたので、バンドの誘いがきたときは嬉しかったですね。やってること自体は(サポート時代と)そんなに変わらないのかもしれないけど、心持ちが全く違う。家族のように信頼するみんなの中で、自由に泳がせてもらっていると言いますか。信頼関係はバンドになってより深まったのかなと思います。

――1st EP『Adult Organized Rock』を聴くと、根岸さんのファンクネス溢れるベースライン、西川さんの爆音のファズギター、一打一打がパワフルだけど器用なバランサーでもある平里さんのドラムが、抜群のアンサンブルになって響いてくるなと思いました。お互いのことはプレイヤーとしてどのように認識しているんでしょうか。まずは平里さんについて。

三上:安定したところからはみ出していくときの加減が絶妙だなと思います。人間的にもバランスが取れているなって思うので、演奏に人間性が出るんだなと。洗練されているけどやんちゃで、でもちゃんと品格があるというか。

根岸:平里はこれだけ応用範囲が広いからこそ、サポートミュージシャンの1人で終わらせるのはもったいないなと思って呼んだので。とにかく一般のお客さんにもっと知らせたいね。

西川:僕はドラマーがヒットするタイミングとか、コンマ何秒単位で結構気になるんですよ。なので日本で一緒にやっていて気持ちいいドラマーは限られていて、ドラマーによってはストレスを感じたりするときもあるんですけど、平里さんとはすごく合うんですよね。

平里:ありがとうございます! 僕としては、以前から聴いててよく知っている皆さんの音の中で、自分の楽しさが更新されていくような感覚なんですよね。だから演奏中でもそれ以外でも、皆さんも楽しくいられるといいなっていうのは常に考えています。

根岸孝旨
根岸孝旨

――根岸さんに対しては皆さんどうですか。

西川:いつも冗談ばかり言ってる人(笑)。「このアレンジすごいな」ってよく思っていたので、こんなにも冗談ばかり言う人のどこにそんな才能があるんだろうと思っていました。

三上:ギャップが開きすぎていますよね(笑)。

根岸:いやあ、人間として自信がないだけなんですよ。自分の演奏を聴くといつもベース下手だなと思っちゃう。ライブやレコーディングになると何も考えずやれるし、悲観的な自分はいなくなるんですけど、帰るときに「今日の俺、大丈夫だったか」と不安になったり、みんなに褒められても「俺に気を遣ってない?」とか思っちゃう(笑)。だからこそ、こんな自分じゃいかんとも思うし。

平里:あんなにすごいベースを弾いてるのに。

根岸:ベースを弾くときは、もう、「えいや!」という感じ。「どうしようどうしよう!」と思って演奏したらお客さんに失礼だから。

三上:その反動が凄まじいんですよ。逆にそこまで自分を貶めているからこそ、ベースの音に説得力が出てるのかもしれないですけど。「この人の音じゃなきゃ嫌だ!」と思っちゃう。

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