連載『lit!』第95回:DECO*27、Eve、DIVELA、baker…3月9日=ミクの日を彩った歴戦ボカロP新作4選
『ボカコレ』や『初音ミク「マジカルミライ」』ほか1年を通して様々なイベントが多いのも、VOCALOIDという音楽カルチャーのユニークな特徴のひとつだ。リスナーにとって欠かせないお祭りごとや日付も多い中、シーンは先日、そのひとつでもある歌姫・初音ミクの名前にちなんだ3月9日=ミクの日を迎えている。
毎年このミクの日には、シーン各所で語呂のよい記念日を祝う新曲のリリースやイベントの開催も通例となる中、本稿では2024年のミクの日にあわせて投稿されたボカロ曲4曲をピックアップ。今やシーンには欠かせない超大御所Pの新作から、懐かしの名曲にまつわる動画投稿まで。様々な楽曲が、今年も大勢のリスナーと共に3月9日のにぎわいに華を添えた。
DECO*27 feat.初音ミク「ルーキー」
あまりにも“看板に偽りあり”すぎるタイトルも目を引く、DECO*27による待望の新曲がミクの日に投稿。「ずっと挑戦者でありたい」という自身の心情から本曲名を冠する今作は、音楽を元にイラストを提供してもらう従来の流れとは異なり、自身の経験としても初のイラスト先行で楽曲制作が行われている。ボカロP歴15年を超えてなお、まだまだ変化する姿勢を恐れないDECO*27の能動的な意欲あふれる挑戦作だ。
前のめりにも思えるそのチャレンジングな熱量は、サウンドを実際に聴くことでよりダイレクトに感じられるだろう。非常に大胆な変化を繰り返しながらも、スマートかつスタイリッシュに楽曲は展開し帰結する。思わず唸ってしまうDECO*27ならではの円熟味が光ると同時に、“ルーキー”らしいフレッシュさや尖りをも明確に感じさせる1曲だ。
baker feat.初音ミク「サウンド -2439 remix-」
今なお大勢のリスナーから熱い支持を得る大名曲「celluloid」をはじめ、黎明期より現在のシーン潮流に繋がる「キャラクター性に依存しない曲調」の制作姿勢を貫く古参ボカロP・baker。過去に時代を一世風靡したVOCAROCKの奔りとも呼ばれる人気曲「サウンド」が、初音ミク誕生と同様16年の時を経て、2024年のミクの日にbaker本人によって「-2439 remix-」と題したリメイクを施された。
原曲は当時の邦楽バンドシーンを彷彿とさせる、軽快かつポップなギターサウンドが大きな魅力。だが今回のバージョンは繊細さを感じる優しい曲のムードをそのままに、サウンドを現代風のエレクトロな浮遊感ある音へと大幅にアップデート。現在もアレンジャー・リミキサーとして活躍する、確かな彼の手腕を感じ取ることができるだろう。