LAGHEADS、Blue Note Tokyoレポ KIRINJI、HIMIら個性豊かなゲストと開いた新しいポップミュージックの可能性
3月10日、LAGHEADSがBlue Note Tokyoで『LAGHEADS LIVE at Blue Note Tokyo with KIRINJI / HIMI』を開催した。ここでは2ndステージの模様をレポートする。これまでHIMIやkiki vivi lily、マハラージャン、高木祥太(BREIMEN)、MELRAWら、同世代もしくは彼らより若いミュージシャンとコラボしてきた彼らが、新曲「どうして髭を?」ではKIRINJIとの共作を実現。コレクティブとして、よりポップミュージックの深い部分での化学変化を聴かせたのは双方のファンには周知の事実。会場にはLAGHEADSのファンはもちろん、KIRINJIのファンも訪れ、ジャズ箱であることも手伝い幅広い世代の音楽リスナーがこのレアなステージを待ち侘びる。
会場後方から客席の通路を歩いてステージに上がるメンバーに発破を掛けるように声援を送るオーディエンス。まずこの開演から心躍る。2nd EPのオープナー「Where is "LH"?」でスタートしたアンサンブルの、宮川 純(Key)のフレーズに早くも拍手が起きている。ひねりのきいたリフを繰り出す小川 翔(Gt)のプレイにもついニヤついてしまう1曲だ。すかさず山本 連(Ba)がメンバー紹介して、グッとオフビートなファンクナンバー「Studio M」へ。この曲ではさらにメンバーのソロをフィーチャー。ほとんどの曲で屋台骨を支える端正で渋いプレイをする山本がスリリングなベースソロを弾き、伊吹文裕(Dr)がいちいちツボに入るフレーズを放つと全身がほぐされる感じだ。音源にはないインタープレイはライブならではの醍醐味なのはもちろん、前回のライブハウス公演以上にソロを楽しめるのはブルーノートというシチュエーションなればこそだろう。続くウエストコーストフィールな「Mr.Feeling」はさらに肩の力が抜け、4人で気の向くままに抜き差しする様子は素晴らしい連携プレイで美味しい一皿の料理が完成していくような楽しさに溢れていた。エンディングとともに山本の音頭で乾杯と相なった。
この日最初のゲストはLAGHEADSの歌モノには欠かせないシンガー、HIMI。この日のスペシャルドリンクのグラスを手に友達の家に遊びにきたようなテンションでオンステージ。そうくれば再び乾杯なのである。そしてここからコーラスで佐々木詩織も参加。「だきしめたいよ feat. HIMI」のイントロが始まると、スイートで人間性が自然と溢れ出る一気にHIMIの世界観へ。彼のボーカルに佐々木とメンバーのコーラスも重なり、温かく美しい空間が現れる。特に伊吹はコーラスで大活躍だ。続いてもHIMIをフィーチャーして、この日のスペシャルドリンクの名前の由来にもなった「Dance feat. HIMI」。セクシーでもありホーリーでもあるHIMIのファルセットをはじめ、ウォームな演奏が言葉にならない癒やしとなって、オーディエンスの心を溶かしていく。LAGHEADSとHIMIの相性の良さは回を重ねるごとに更新されているように思う。
HIMIが風のようにステージから去ると、予告していなかったゲストがいるという伊吹の一言に宮川がある曲のイントロを被せる。スタッカート気味のピアノリフに気づいた人から歓声が上がり、WONKの長塚健斗が姿を見せる。同世代の仲間であり、小川はWONKのライブサポートでもお馴染みだ。プレイヤーが変わればもちろんニュアンスが変わるわけで、温かなこの「Orange Mug」が、より穏やかな印象を伴って届けられた。長塚は常にフロントマンの立ち振る舞いで美声を響かせた。と、そこでエンディングに向かうと思いきや、ステージ後方からサックスが聴こえる。この日一番のサプライズはブルゾン姿にリュックを背負ったままサックスを吹きながら登場したお祭り男、MELRAW。時間にして1分か2分で去って行った。「WONKの曲なのに掻っ攫ったな」と、苦笑する長塚。彼らの関係性を知るオーディエンスとしては美味しすぎるサプライズだった。さらにはこの日は初披露の新曲も。モノンクルの角田隆太が作詞した楽曲で、吉田沙良との第一子が誕生した彼にLAGHEADSから「子どもは生命という宇宙だ」というテーマで依頼したそう。その名も「Your Light feat. 長塚健斗(WONK)」この曲はどこかスティーヴィー・ワンダーの「Isn't She Lovely」を彷彿とさせる愛の歌。ちなみに3月20日に配信リリースされている。