大谷翔平、登場曲から伝わるアニメ愛 『王様ランキング』『THE FIRST SLAM DUNK』ら作品の共通点
「自分の弱さを知っている主人公」という共通点
そんな大谷選手だが、登場曲のチョイスからはある共通点が感じられる。
「裸の王様」がオープニングテーマとなっている『王様ランキング』、「LOVE ROCKETS」がオープニング主題歌の『THE FIRST SLAM DUNK』、「LOST IN PARADISE feat.AKLO」がエンディングテーマの『呪術廻戦』はいずれも、自分の弱さを知っている主人公たちが、強敵に立ち向かっていく内容であること。
『王様ランキング』のボッジは小柄で、石も持ち上げられないくらい非力な王子。『THE FIRST SLAM DUNK』はかつての弱小校・湘北が絶対王者・山王工業と激闘を繰り広げる。ちなみに物語の中心人物である宮城リョータも小柄だ。『呪術廻戦』の虎杖悠仁は常人離れした身体能力を持つが、呪術師としては未熟である。これらの主人公の設定や背景と大谷選手の歩みは重なる部分が多々感じられる。大谷選手は十代の頃からその才能が高く評価され、日本のプロ野球を経験せずに“メジャー直行”が有力視されていたほど。しかしそんな大谷選手も花巻東高校時代は花の大舞台、甲子園で1勝もできなかった。
2011年夏の『第93回全国高校野球選手権大会』初戦は怪我の影響もあって万全な状態で挑めず、2年生投手としては甲子園最速タイの150キロを記録したものの5回2/3を投げて2失点。チームも7対8で帝京高校に敗れた。3年春の『第84回選抜高等学校野球大会』初戦では、大阪桐蔭高校を相手に8回2/3を投げて11四死球9失点。高校の公式戦では初めて本塁打も浴びた。打者としては本塁打を放つなど大器の片鱗を見せたが、2対9で大敗を喫した。3年夏は地方予選の岩手大会決勝では盛岡大附属高校と対戦し、8回2/3を投げて9安打を浴びるなど5失点。3対5で敗退して涙をのんだ。
2012年にNPB(日本野球機構)の北海道日本ハムファイターズへ入団してからも、現代の野球では前代未聞である投手、打者の二刀流挑戦を何度も否定された。2014年にはNPB史上初となる投手で2桁勝利(11勝)、打者で2桁本塁打(10本)を記録したが、大谷選手の特殊な起用法について紛糾の声があがることもあり、「チームが勝つことと大谷選手の二刀流はどちらが優先されるべきか」といった論争もたびたび起きた。また大谷選手は怪我や不調に悩まされることも少なくなかった。特に身体的負担が大きい二刀流に故障はつきもので、メジャーリーグ史上最高の選手へと成長した現在でも怪我が最大の難敵となっている。
アニメ関連曲で気分を上げて、その試合の主人公に
大谷選手のそういったヒストリーを振り返ると、決して勝ち続けてきた人生ではないことが分かる。何度も敗北を経験し、怪我を繰り返し、激しい批判にもさらされてきた。普通であればそういったことの挫折から立ち直れなくなってもおかしくない。ただ大谷選手のすごさは自分に足りないところや弱さをしっかり受け止め、改善とパワーアップに励み続けてきたところである。そんな大谷選手が、ボッジ、湘北高校、虎杖悠仁たちに共感できるのはうなずけるものがある。
登場曲としてこれらのアニメ関連曲をチョイスしている理由は、自分自身をその物語の主人公に重ねたりなりきったりするためであり、そうすることで打席での気分も上がるからではないだろうか。すなわち大谷選手は、その試合の主人公になるためにこれらの曲を使用していると考えられる。
また大谷選手の個人成績の行方ばかりに目がいきがちだが、今季から所属するドジャースは2021年から毎シーズン100勝以上をあげて、ナショナル・リーグ西地区でも2連覇中の強豪だ。ただ2020年にワールドチャンピオンを獲得して以降、この3年間はポストシーズンを勝ち上がれず、ワールドシリーズ進出を逃し続けている。大谷選手が加わることでチームがより活気づくことは間違いない。大谷選手にとっても今季はチャンピオンリングを手にする最大のチャンス。大谷選手が“世界の主人公”になる日は近い。
※1 https://number.bunshun.jp/articles/-/832210?page=2
※2 https://www.sanspo.com/article/20230322-TOCC3MIYUNF4HIZ2P4WJZX3JDE/?outputType=theme_wbc2023
※3 https://shueisha.online/sports/18507