ハンブレッダーズの音楽に反映されるムツムロ アキラの思想 “本音”を曝け出すことの大切さ
僕にとっての音楽は「無駄な抵抗」だった
――先程、コンセプトアルバムを作るつもりでは始めないとは言っていましたが、何となくのパッケージングは考えておられますよね。
ムツムロ:なんとなくはありますね。今回のアルバム、最初は『パンクな気分』というタイトルにしようと思ってたんですよ。コロナ禍の中で「ダンス」と「パンク」という言葉が自分の中に強くあって。あの頃から加速度的にみんな建前と本音を使い分けるようになって、お笑いや芸術も全部漂白されてるような気がして。それらを打ち破る意味でパンクという言葉がチラついていました。みんな多様性を過度に意識して優しい建前ばっか言うだろうけど、きっともっと本音を曝け出して歌うことが大切になるだろうと。
前作の『ヤバすぎるスピード』というアルバムタイトルは、聴いてバカバカしくて笑ってほしいというか、ユーモアにフォーカスしたアルバムだったんですが、その頃から『パンクな気分』というタイトル案はありました。ただ直接的な言葉だし、「パンク」の説明もいるかなと。ギリギリ最後まで案としては残っていましたけど、「はじめから自由だった」という曲がアルバムの終盤にできた時に、でらし(Ba)に「これタイトルでいいんじゃない?」と言われて。ジャケットももともとデニムジャケットにピンズみたいな『パンクな気分』にフォーカスしたデザインを考えていたので、今のジャケットとは違いましたね。今、海外でポップパンクが流行っているのも、そういうことを考えている人が増えているのかなと思ったり。
――僕なんかは『パンクな気分』って最高のタイトルだなと興奮しますけど、パンクの意味を説明しないといけないと冷静にムツムロくんが考えられるのはすごいですよね。
ムツムロ:パンクは人それぞれの解釈がありますからね(笑)。
――そういう丁寧な説明の気持ちを持っているのに、ハンブレッダーズの音楽は丁寧すぎるであったり、わかりやすすぎるであったり、そういった変な感じはないんですよ。
ムツムロ:あくまで表現だと思ってて、教科書にはなりたくないんですよね。『はじめから自由だった』は自分でも良い言葉だなと思っていて、コロナ禍が終わってからのムードとか、バンドの感じを表しているというか。がんじがらめになっている中でも、窮屈な中にも、その時その時の自由度があって良いんじゃないかなと思って名付けましたね。
――そういう風に理論づけて考えるのは、昔から好きでしたか?
ムツムロ:どうなんでしょうね。遡れば学生時代、学校に好きな先生がいなくて、「何で勉強しないといけないのか?」という屁理屈をずっと並べていました。逃げですよね。バンドを始めたのも剣道が嫌で、逃げるための理由を探して……だから僕にとっての音楽は「無駄な抵抗」だったんです。今も関わってくれる人が増えつつ、世間に対しての無駄な抵抗を続けているというか。バンドなんて聴かなくても生きていける人がほとんどだと思うので、自分のほうがズレているという達観と諦観がずっとあります。学生時代は屁理屈をこねくり回すしかなかったけど、自分がサッカー部のエースになっていたら音楽を聴いていなかっただろうなとも思う。当時はそこに逃げるしかなかったんですよね。
最も生存を実感するのが、歌詞を書いている時
――音楽に救われたとか、音楽に助けられたとかという意味ではなくて、シンプルにムツムロくんは音楽が好きですよね。
ムツムロ:好きやと思います。自分から言う人って、たいして好きじゃないと思っているので、あまり言わないですけど。でも、だからこそ自分が「きっと音楽がなくても生きていけるんだろうな」と思えてしまう瞬間がキツいです。バンドを組んでから毎日ハンブレッダーズのことを考えてたんですけど、コロナ禍で初めて、バンドのことを考えない期間が2週間ぐらいあって。思ったより平然と暮らせていたことが逆にキツかったですね。音楽を辞めても自分は生きていけるんだろうなと。ライブハウスには「あー、きっとこの人は音楽なしでは生きていけないんだろうな」と思わされるミュージシャンがいっぱいいて、自分は心の底からそう言えないのでは?と考えてしまうし、その不安を払拭するために、音楽に触れる時間を増やしているのかなと。
――充分に音楽を好きな人ですから、そこまで思っているとは想像もつかなかったです。
ムツムロ:人が思っているよりは好きですけど、本当に好きな人よりは好きじゃないのかなと寂しくなるというか。コンプレックスですね。
――現状に満足されないですよね。
ムツムロ:満足しないですね。もちろんシンプルに楽しいというのもありますけど。
――それでもアルバムに達成感はありますよね?
ムツムロ:ありますね。僕、最も生存を実感するのが、歌詞を書いている時なんです。メロディよりも歌詞で。例えば、こっちのほうが言いたいこととしては正しいけど、こっちのほうがメロディのハマりは良いからこっちにしようみたいな、定石や法則から外れた時に嬉しくなるというか。「DANCING IN THE ROOM」(5曲目収録)で〈まるで時計の針が止まったかのように~〉という歌詞があって、文章の正しさとしては逆の書き方なんですけど、なんとなく〈まるで〉から歌い始めたくて。ロジックからあえて外れて「なんとなく」に身を任せる瞬間がすごく気持ちいい。これも理屈っぽいのかもですけど。
――それだけ考えていると煮詰まりはないですか?
ムツムロ:一度悪いほうに入っちゃうと確かに抜け出せなくて。メジャーに入りたての頃は何度か苦労しました。でも曲が降りてくるまで待つなんて運任せなことにはしたくないので、常に動いています。毎日メロディも歌詞もなるべくストックして、煮詰まらないようにやっていますね。でもこれが本当に楽しいんですよ。こないだカート・ヴォネガットの『タイタンの妖女』を読んだんですけど、「人生の目的は、どこの誰かがそれを操っているにしろ、手近にいて愛されるのを待っている誰かを愛することだ」というセリフがあって、ここ数年で一番自分にフィットした言葉でした。あざとさや計算は放棄して、自分は自分の好きなものを精一杯作ろうと、30歳になって自然と思えています。
■リリース情報
4thフルアルバム『はじめから自由だった』
2024年2月21日(水)リリース
https://lnk.to/humbreaders_4thfullAL
初回生産限定盤【CD+BD+Special Booklet】TFCC-81061~2 / ¥6,500(税込)
通常盤【CD】TFCC-81063 / ¥3,300(税込)
@Loppi・HMV限定「自由帳セット」付き初回生産限定盤 ¥7,500(税込)
@Loppi・HMV限定「自由帳セット」付き通常盤 ¥4,300(税込)
<収録曲>
01. はじめから自由だった
02. サレンダー
03. ビートアディクション
04. 十七歳
05. DANCING IN THE ROOM
06. ひらがな
07. またね ※テレビ東京系アニメーション『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』エンディングテーマ
08. ペーパームーン
09. 無駄な抵抗
10. グー
11. THE SONG ※『男子ゴルフ ABEMAツアー2023』テーマソング
<初回生産限定盤付属BD収録内容>
・『ハンブレッダーズ“ヤバすぎるワンマンツアー2023”』at NHK Hall
起きろ!/ワールドイズマイン/見開きページ/いいね/再生/プロポーズ/パーティーを抜け出して/ファイナルボーイフレンド/ドラムソロ/ヒューマンエラー/才能/アイラブユー/常識の範疇/ギター/光/ヤバすぎるスピード/東京/BGMになるなよ/THE SONG/またね/DAY DREAM BEAT/逃飛行/ライブハウスで会おうぜ
・『ハンブレッダーズ“ヤバすぎるワンマンツアー2023”』TOUR DOCUMENTARY
<初回生産限定盤付属別冊ブックレット掲載内容>
メンバーによる全曲解説
■主催ライブ情報
『ハンブレッダーズ ワンマンライブ 放課後Jタイム 〜15th Special〜 Extra 東京編』
2024年3月14日(木)東京都 EX THEATER ROPPONGI
OPEN 17:30 / START18:30
『ハンブレッダーズ ワンマンライブ 放課後Jタイム 〜15th Special〜 Extra 名古屋編』
2024年3月18日(月)愛知県 名古屋DIAMOND HALL
OPEN 17:30 / START 18:30
『ハンブレッダーズ ワンマンライブ 放課後Jタイム 〜15th Special〜』※SOLD OUT
2024年3月24日(日)大阪府 大阪城ホール
OPEN 16:30 / START 17:30
『ハンブレッダーズ “はじめから自由だったワンマンツアー”』
2024年4月5日(金)福岡県 Zepp Fukuoka
OPEN 17:30 / START 18:30
2024年4月10日(水)新潟県 新潟LOTS
OPEN 17:45 / START 18:30
2024年4月15日(月)神奈川県 CLUB CITTA’
OPEN 17:30 / START 18:30
2024年4月21日(日)香川県 高松festhalle
OPEN 17:15 / START 18:00
2024年5月1日(水)愛知県 Zepp Nagoya
OPEN 17:30 / START 18:30
2024年5月9日(木)石川県 金沢 EIGHT HALL
OPEN 18:00 / START 18:30
2024年5月11日(土)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
OPEN 17:15 / START 18:00
2024年5月18日(土)宮城県 仙台PIT
OPEN 17:00 / START 18:30
2024年5月21日(火)東京都 Zepp Haneda
OPEN 17:30 / START 18:30
2024年5月25日(土)北海道 札幌ファクトリーホール
OPEN 17:15 / START 18:00
2024年5月30日(木)大阪府 Zepp OsakaBayside
OPEN 17:30 / START 18:30
2024年5月31日(金)大阪府 Zepp Osaka Bayside
OPEN 17:30 / START 18:30
2024年6月8日(土)沖縄県 Output
OPEN 17:00 / START 17:30
2024年6月9日(日)沖縄県 Output
OPEN 16:00 / START 16:30
ハンブレッダーズオフィシャルサイト:http://humbreaders.com/
ハンブレッダーズ | TOY'S FACTORY:https://www.toysfactory.co.jp/artist/humbreaders/