爆風スランプ、再始動決定 岡崎体育やサツマカワRPG、青崎有吾ら異分野の著名人も虜にするスタイル

爆風スランプ、著名人も虜にするスタイル

 爆風スランプが再始動する。1999年の活動休止以降、2005年・2007年・2010年に単発のライブは行っているが、ツアーを開催し、新曲もリリースする、言わば正式な活動を行うのは、実に26年ぶり。

 オリジナルメンバーの3人=サンプラザ中野くん(Vo)、パッパラー河合(Gt)、ファンキー末吉(Dr)と、二代目ベーシスト・バーベQ和佐田の、活動休止した時と同じ4人が揃い、新しいアーティスト写真も公開された。これは1992年リリースの9thアルバム『アジポン』の時のアーティスト写真を再現して撮られたものだそうである。

 1988年に大ヒットし、日本のロックのスタンダードの1曲となった「Runner」。2ndアルバム『しあわせ』(1985年)の1曲として発表された当時はそうでもなかったが、1989年にシングルで「大きな玉ねぎの下で〜はるかなる想い」としてリメイクされて以降、CMに起用されるなどして世に知られるようになった「大きな玉ねぎの下で」。同年にヒットした「リゾ・ラバ -resort lovers-」。1994年に放送された、『進め!電波少年』(日本テレビ系)の企画で『ユーラシア大陸横断ヒッチハイク』に挑んだ猿岩石の応援曲として書いた「旅人よ〜The Longest Journey」(リリースは1996年)、などが、代表曲である。

 で。ファンではなくても、当時のロックファンなら記憶していると思うが、「Runner」以前と「Runner」以降で、音楽性や、世間的なイメージが、それはもうばっきりと変わったバンド。それが爆風スランプである。

爆風スランプ「Runner」MUSIC VIDEO

 ざっくり言うと、「Runner」が大ヒットして以降は、「青春」が大きなテーマのひとつになった、人生についての曲やラブソングを歌い、『NHK紅白歌合戦』にも出演する、メジャーでポップなバンド。ということに、ある程度本人たちも自覚的だったのか、1991年リリースの8thアルバムには、『青春王』というタイトルがつけられている。

 では、それより前、特にデビュー当時の爆風スランプは、どんなバンドだったのか。過激で破天荒で危険極まりない、それでいて笑いの要素もふんだんに入った、前代未聞なバンドとして、1980年代中盤の世の中に現れたのだ。

 「週刊東京『少女A』」や「美人天国」のような、リアルタイムの日本の文化風俗をシニカルな視点でえぐる歌。〈うでたて うでたて 無理だワニのうでたて伏せ〉などと「無理なこと」を羅列するファストチューン「無理だ!!」や、「びっくりしたなぁ、もう」という三波伸介(爆風スランプ結成の年に亡くなったコメディアン)のギャグを引用した「びっくりミルク」、「すいか 買わねえか」と唸り叫ぶ「すいか」のような、ナンセンスもしくは不条理な曲。

 当時隆盛を極めていたジャパメタ(ジャパニーズヘヴィメタル)ブームを力いっぱいおちょくった「たいやきやいた」では、ライブの時にその界隈の人気バンドをけなしてから曲に入るのが、恒例になっていた。Wikipediaで得た知識ではなくて、当時、実際にライブを観て記憶している事実です。

 とにかく。そんなロックバンド、当時の日本にはいなかった。というか、そんなことをロックバンドがやる、という発想自体が、少なくともメジャーレーベルの音楽シーンには存在していなかった(インディーズには、ほぶらきんという、のちの人生→電気グルーヴに大きな影響を与えたバンドがいたが)。

 どんとと永井利光がBO GUMBOSの前に活動していたローザ・ルクセンブルグや、ローザと同時期に出てきたナゴムレコードのバンドたちなどが、強いて言えば近いかもしれないが、つまりそれよりも数年早く登場したのが、爆風スランプだったわけである。

 また、音楽性においても、ボーカル/ギター/ベース/ドラムというロックバンド編成で、ファンクをベースにした音楽をメジャーシーンでやる、という、当時他に誰もいなかったことを実行したバンドでもあった。

 今は普通だが、ジャズやフュージョンではなく歌ものの楽曲に、ばしばしスラップベースが入っていることなど、当時の日本ではありえなかったのだ。アメリカでは同時期にRed Hot Chili Peppersがデビューしているが、日本で人気が出るよりも前である。ミクスチャーロックという概念など、まだ影も形もない時代だった。

 そのパフォーマンスや歌詞の過激さと、音楽性の斬新さは、当時、一部のバンドキッズに深く強く突き刺さった。って、つまり自分がそうだったわけだが、同年代のミュージシャンも、僕と同じく衝撃を受けた、という例は、数多あるようだ。30年くらい前、真心ブラザーズの桜井秀俊(同い歳です)にインタビューした時、お互い高校生の頃に爆風スランプのコピーをしていた頃がわかり、いかに爆風がラジカルだったかという話で盛り上がったことがある。

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