BiS、アルバム『NEVER MiND』が導く新たな“始まり” 徹底クロスレビューで解き明かす

BiS、新アルバム『NEVER MiND』徹底合評

BiS、そしてWACKの変わらない精神性(宗像明将)

 2011年の第1期BiSのデビューアルバム『Brand-new idol Society』からすでに13年。第3期となる現在のBiSによるニューアルバム『NEVER MiND』は、タイトルからしてNirvanaの1991年のアルバム『Nevermind』を連想させるが、BiSの変わらない精神性を伝えるアルバムだ。

 現在のWACKでは珍しいほどロックを主軸としているBiSだが、現在のトレンドを汲んでか『NEVER MiND』は3分台の楽曲が多い。メンバーが作詞した楽曲こそないが、マネージャーである渡辺淳之介による歌詞が重要な意味を持っている。

 1曲目の「R.U.N」は、奈良発の3人組ロックバンドであるAge Factoryがプロデュースした楽曲。BiSのボーカルには青臭さも感じるが、それもそのはず、2019年に結成された第3期BiSのオリジナルメンバーはトギーだけであり、2021年にナノ3、2022年にヒューガーが加入。そして、イコ・ムゲンノカナタ、クレナイ・ワールズエンド、シオンエピックは2023年に加入したばかりなのだ。しかし、それが逆に歌に切迫感をもたらしている。「R.U.N」にはシンガロングのパートもあり、BiSに大きなスケールをもたらす。

"STiLL BE CHiLD" Produced by AxSxE / BiS 新生アイドル研究会 [OFFiCiAL MUSIC ViDEO]

 2曲目の「STiLL BE CHiLD」は、活動休止中のバンド NATSUMENのギタリストであるAxSxEがプロデュース。渡辺淳之介の作詞家名義はJxSxKだが、その由来はAxSxEだという。JxSxK作詞、AxSxE作編曲による「STiLL BE CHiLD」では、曲名の通りストレートに少年性が描かれる。AxSxEとともにかつてNATSUMENで活動していた村田シゲがベース、マシータがドラムで演奏に参加。

 プログラミングのドラムが鳴り響く3曲目の「Olenimorph, Ole」は、元SUPERCARの中村弘二がプロデュースした楽曲。ここでのBiSは、ラップの勘が実にいい。さらに、福岡在住のトラックメーカー/ラッパーのabelestによる歌詞は、〈胃が痛い辛い日々なのは、濃いラーメンじゃない/かつての陸上部部長/大学退学、アルバイト〉と意外性のある単語を並べながら、ドロップアウトを描く。

イーアーティエイチスィーナーエイチキューカーエイチケームビーネーズィーウーオム / BiS 新生アイドル研究会 [OFFiCiAL ViDEO]

 「イーアーティエイチスィーナーエイチキューカーエイチケームビーネーズィーウーオム」という長いタイトルの4曲目は、BOOM BOOM SATELLITES/THE SPELLBOUNDの中野雅之のプロデュースによる楽曲。作詞作曲はTHE SPELLBOUND名義だ。5曲目と6曲目は、DOPING PANDAのフルカワユタカがプロデュースした「LAZY DANCE」「なまえをよんで」が続く。両曲ともフルカワユタカによる作詞作曲編曲で、「LAZY DANCE」のドラムプログラミングはDOPING PANDAのHayato Beatが手がけている。

「LAZY DANCE」/ BiS 新生アイドル研究会【Hypers kids africaコラボMV】

 7曲目の「青風」も中村弘二がプロデュースした楽曲。こちらでもabelestが作詞を担当しており、オルタナ以降のギターサウンドが響くなか、〈歯磨きして/飛んだ白いシミ/指摘する君〉というイ音での押韻も鮮やかだ。そして、〈ドラム式の洗濯機やっと働いて買ったんよ〉をはじめとする歌詞が、日常性と鬱屈を浮き上がらせていく。

 8曲目の「僕の目を見つめて 君の世界になりたい」も中野雅之のプロデュースで、ロックなトラックにラップが乗る。fOULがプロデュースした9曲目の「悲しみを纏う男たちの行進」は、歌詞の一人称が“俺”であり、実に男臭い。BiSが愚直なほどの歌でfOULの世界を描き出そうとしており、ボーカルの低音を駆使した歌声を聴かせる。10曲目の「Sakura」はAge Factoryがプロデュースした楽曲であり、春の情景とメランコリーが柔らかに重ね合わされる。

僕の目を見つめて 君の世界になりたい / BiS 新生アイドル研究会 [OFFiCiAL LYRiC/DANCE MOViE]

 アルバムの最後を飾る「NO CHOiCE」も、AxSxEがプロデュースしており、村田シゲとマシータが参加。こちらもJxSxK作詞、AxSxE作編曲だが、JxSxK=渡辺淳之介が描く歌詞のポジティブさに少なからず驚いた。これがロンドン在住となった渡辺淳之介の現在の心境なのかもしれない。

 BiSのデビューアルバム『Brand-new idol Society』に収録されていた「BiS」では、〈いかなくちゃ〉という歌詞が出てきており、同様のフレーズはWACKのアーティストの歌詞に繰り返し登場してきた。たとえば、BiSHの2015年のデビューアルバム『Brand-new idol SHiT』に収録されていた「BiSH-星が瞬く夜に-」には〈行かなくちゃ〉という歌詞が出てきたように、それはWACKの精神性として息づいている。BiSの「NO CHOiCE」では、それが〈いかなきゃ〉〈やらなきゃ〉〈やるっきゃないのだ〉と変奏のように表現を変えて繰り返される。渡辺淳之介の愛するNirvanaの名盤のタイトルを冠したBiSの『NEVER MiND』には、BiS、そしてWACKの現在地がはっきりと刻まれている。

BiS『NEVER MiND』通常盤
『NEVER MiND』通常盤

■リリース情報
MAJOR 3RD ALBUM『NEVER MiND』
2024年2月28日(水)発売
配信URL:https://bis.lnk.to/nevermind

・初回生産限定盤(CD+Blu-ray+写真集)/CRCP-40675/定価6,500円
・通常盤(CD)/CRCP-40676/定価3,300円

<収録内/初回盤・通常盤共通>
1. R.U.N ※Age Factoryプロデュース
2. STiLL BE CHiLD ※AxSxEプロデュース
3. Olenimorph, Ole ※中村弘二プロデュース
4. イーアーティエイチスィーナーエイチキューカーエイチケームビーネーズィーウーオム ※中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES/THE SPELLBOUND)プロデュース
5. LAZY DANCE ※フルカワユタカ(DOPING PANDA) プロデュース
6. なまえをよんで フルカワユタカ(DOPING PANDA)  プロデュース
7. 青風 ※中村弘二プロデュース
8. 僕の目を見つめて 君の世界になりたい ※中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES/THE SPELLBOUND)プロデュース
9. 悲しみを纏う男たちの行進 ※fOULプロデュース
10. Sakura ※Age Factoryプロデュース
11. NO CHOiCE ※AxSxEプロデュース

BiS『NEVER MiND』初回生産限定盤
『NEVER MiND』初回生産限定盤

<初回生産限定盤のみ>
※スリーブ付きトールサイズデジパック仕様
・2023.11.2 『INCREDIBLE BiS TOUR』FiNAL@Zepp Haneda フル収録
・写真集50P

<『NEVER MiND』リリース記念ミニライブ&特典会スケジュール>
・2/25(日)タワーレコード渋谷 B1F CUTUP STUDIO 13:30〜
・2/26(月)HMV&BOOKS SHIBUYA 5F イベントスペース 19:00〜
・2/27(火)タワーレコード川﨑 18:30〜
・2/28(水)タワーレコード渋谷 B1F CUTUP STUDIO 19:30〜
・2/29(木)タワーレコード錦糸町パルコ 19:00〜
・3/2(土)タワーレコード新宿 ①14:00〜/②17:30〜

■ツアー情報
『We Gotta Go BiS TOUR』
・2024年5月5日(日)[東京] Spotify O-Crest
OPEN 16:00/START 17:00
・2024年5月12日(日)[埼玉] HEAVEN'S ROCK SAITAMA SHINTOSHIN VJ-3
OPEN 16:00/START 17:00
・2024年5月14日(火)[東京] 代官山UNIT
OPEN 16:00/START 17:00
・2024年5月19日(日)[茨城] 水戸ライトハウス
OPEN 16:00/START 17:00
・2024年5月25日(土)[神奈川] F.A.D YOKOHAMA
OPEN 16:00/START 17:00
・2024年5月26日(日)[千葉] 千葉LOOK
OPEN 16:00/START 17:00
・2024年5月31日(金)[東京] Spotify O-Crest
OPEN 16:00/START 17:00
・2024年6月1日(土)[栃木] HEAVEN'S ROCK USTUNOMIYA VJ-2
OPEN 16:00/START 17:00
・2024年6月8日(土)[群馬] 前橋DYVER
OPEN 16:00/START 17:00
・2024年6月9日(日)[東京] 代官山UNIT
OPEN 16:00/START 17:00

BiS オフィシャルサイト:https://www.brandnewidolsociety.tokyo/
X(旧Twitter):https://twitter.com/BiSidol
YouTube:https://www.youtube.com/@BiS_official
TikTok:https://www.tiktok.com/@bis_ultrastupid

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