関ジャニ∞、胸を打つ大阪仕込みの“実直さ” サブスク&『THE FIRST TAKE』で再発見された魅力

笑っていたらなるようになる、体を張って笑わせる関ジャニ∞

 「無責任ヒーロー」も歌い出しの〈オイラ伝説の無責任ヒーロー〉という一人称からして“アイドル離れ”しているし、ここでも〈ジャジャジャジャーン〉とお気楽そうなワードが登場している。象徴的なのが〈笑っておくれよ なるようになるさ〉という一節。これは、アイドルらしい格好良さではなく、アイドルがあまり見せない泥臭さや人間臭さ、そして「自分らのやること、なすことでとにかく笑ってもらえたらエエねん」というスタイルをとる、関ジャニ∞にぴったりかつ素敵な歌詞と言える。「とにかく笑えたら人生オッケー」な方向性は、「関風ファイティング」(2006年)の〈ふられたら笑っチャイナよ〉〈クヨクヨするヤツはツキが逃げる〉といった歌詞などでも貫かれている。

 ちなみに関ジャニ∞は2007年12月から約半年間、不定期放送されたバラエティ番組『それゆけ!ダイダマン』シリーズ(テレビ朝日系)でも私たちを笑わせるために体を張りまくっていた。同番組では、依頼者の困りごと、世の中の疑問などにチャレンジ。たとえば「決定的瞬間の表情を撮りたい」という依頼のために、顔面でバレーボールを受けたり、水風船を破裂させたりするなど、あえて“危険”に身を投じるなどした。メンバー主演の映画『エイトレンジャー』(2012年)然り、そうやっていつも誰かのために世話を焼いているところも、いかにも関西人らしいところ。

「言ったじゃないか」であらわされた男子特有のみっともなさ

 人間味たっぷりの関ジャニ∞だから、みっともなさも愛おしく表現できる。多数の作品で男子特有の情けなさ、みじめさなどをあらわしてきた宮藤官九郎(作詞)、峯田和伸(作曲)による「言ったじゃないか」(2014年)は、曲に登場する人物の好きな相手に向けた“悪あがき”がおもしろい。

 同曲では、〈誰とも付き合わないって 言ったじゃないか〉〈勉強が恋人って 言ったじゃないか〉というイタめな叫びが連発。恋愛がうまくいかないのを相手のせいにしているが、その実、自分の気持ちをちゃんと伝えられない臆病さ、いつでも“相手待ち”な意気地のなさが露呈。この曲も格好良さを売りにしていたり、最初からそういう風に印象づけられたりしているアイドルグループが歌うとリアリティが薄くなる。コテコテ、ベタベタで、笑いに走るあまりに時折“アホ”っぽく映る(もちろんここで言う“アホ”は関西的な褒め言葉)関西人気質を背景に持つ関ジャニ∞だからこそ、この曲の男子の情けなさが歌えるのだ。曲終盤の〈好きって 好きって 好きって 言うたやんか〉の繰り返しはその最高峰。もはや圧巻のみっともなさである。それをちゃんと表現できる関ジャニ∞は、実に魅力的だ。

 そうやっていつも自分をハズしている関ジャニ∞がふと「友よ」のようなまっすぐな曲を歌うと、妙に色っぽく感じられてドキッとする。〈何熱くなってんだ いい歳こいて…って 齢にかまけて己を曲げてたまるか!〉は、イロモノ的な見られ方をしても、ずっと変わらず関西人らしさと笑いを失わず走り続けてきた関ジャニ∞にしか歌えない内容だ。

 泥臭くて、がむしゃらで、いろんな人に笑われて、そして格好つけないところが格好良い。同曲の〈人生って最高だろう?〉という問いかけは、そんな関ジャニ∞がたどり着いた“答え”のように思えてならない。

※1 https://mdpr.jp/news/detail/1541735

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