2023年の『紅白』で交差した過去と現在 全世代に向けた新たな最適解の探求へ
視聴率の低下傾向を理由に存続を危ぶむ声も聞こえてくるようになった『紅白』だが、音楽番組としての存在意義が失われたわけではない。それは、現在の音楽番組のなかで唯一と言ってよいほど全世代に見てもらうことを目指した音楽番組だということである。年末には他局でも大型音楽番組が目白押しだが、『紅白』くらいあらゆる世代向けに時間と労力をかけてつくられている番組はないだろう。
だがよく指摘されるように音楽的嗜好の細分化が進むにつれて、その「全世代向け」というコンセプトが足かせになってもいる。ただそれでも令和の現在における最適解を見つけなければならない。それが、「国民的番組」という看板を背負った『紅白』の宿命だ。
ここまで述べてきたように、今回の『紅白』では過去と現在の対比が際立っていた。ただ、過去と現在は分離してしまっているわけではなく、交差する部分もあった。たとえば、YOASOBIの「アイドル」のステージと伊藤蘭の「キャンディーズ50周年 紅白SPメドレー」のステージを比べたとき、そこに同じアイドルという優れたエンタメとして時代を超えて変わらないものがふと浮かんでくるように思えたのは私だけだろうか。
『紅白』という番組が、全世代に見てもらうための新たな最適解を求める旅はまだ始まったばかりだ。それは、少し大げさかもしれないが、今後のテレビの命運を握る重要な探求でもあるだろう。
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