「私には歌があったんだ」伊藤蘭、41年ぶり歌手活動再開の経緯 キャンディーズ楽曲披露を後押ししたファンの熱量

伊藤蘭、41年ぶり歌手活動再開の経緯

 元キャンディーズの伊藤蘭が、歌手活動を再開していることをご存知だろうか。キャンディーズといえば、1970年代に活躍した伝説の3人組アイドルグループ。「年下の男の子」をはじめとした数々のヒット曲を世に送り出すものの、1978年、人気絶頂のなか解散。伊藤はグループ解散後は俳優としてのキャリアを歩み、ドラマや舞台などで活躍してきた。しかし2019年、41年ぶりに突如ソロでの音楽活動をスタートしたのだ。新作のリリースはもちろん、キャンディーズにとっての聖地・日比谷野外大音楽堂のステージに44年ぶりに立つなど、精力的なコンサート活動も行っている。

 なぜ伊藤は40年以上経って再び歌うことを決意したのか? コロナ禍と重なってしまったコンサートでの経験や、今キャンディーズの楽曲を歌って感じること、時代を越えて交流するファンに対する思いなど、貴重なインタビューをお届けする。(編集部)【記事最後にプレゼント情報あり】

「あ、そうだ。私には歌があったんだ」と気づいた

伊藤蘭(写真=池村隆司)

――2019年に歌手としての活動を電撃的に再開されてから、すでに3年の月日が流れました。ここまでのところは、いかがでしょうか?

伊藤蘭(以下、伊藤):本当にあっという間の3年でした。もちろん最初の頃は、数十年ぶりの音楽活動だったので、いろいろ不安なところも多かったんですけど、コンサートという場でみなさんにお会いできるのは、やっぱり本当に嬉しいことで。ただ、ちょうどコロナ禍と重なってしまって、その大半がコロナ禍での活動になってしまったので。

――そうですよね。

伊藤:ことコンサートに関しては、いろいろ大変でした。一喜一憂の日々だったというか。2020年に予定していたコンサートは、そのほとんどが中止になってしまったし、2021年になってからも……そういう中でも、やれるタイミングと状況があるなら絶対にやろうと思い、去年の秋の日比谷野外大音楽堂公演や中野サンプラザ公演は、何とか開催することができました。改めて振り返ると、その一つひとつが奇跡のようでもあります。さらに昨年の9月には、ソロとしては2枚目になるアルバム『Beside you』をリリースすることもできたので、非常にありがたいことでした。

――2枚目のアルバムは、コロナ禍で制作されたものになったわけで。やはり最初のアルバムとは、楽曲的にも、気持ち的にも、いろいろと違ったものになったのでは。

伊藤:そうですね。『Beside you』に関しては、前作でお世話になった佐藤準さんやトータス松本さんをはじめ、布袋寅泰さんや多保孝一さんなど、新しい人たちにも曲を提供していただいたんですけど、やっぱりみなさん、それぞれがこの時代に感じていることを、それぞれの楽曲に込めてくださったようなところがあったような気がしていて。『Beside you』というアルバムは、みなさんの「こういう時代の中でも、やっぱり希望は失わずにいたいよね」という思いが一曲一曲の中に込められた作品になったと思います。

――改めてお聞きしたいのですが、今から3年前、そもそもなぜそのタイミングで、キャンディーズの解散以来長らく途絶えていた、歌手としての活動を再開させようと思ったのでしょう?

伊藤蘭(写真=池村隆司)

伊藤:「あ、そうだ。私には歌があったんだ」と気づいたのが、そのタイミングだったんです(笑)。

――(笑)。ある日、突然気づいた?

伊藤:それまではずっと、芝居のことと、あとは家のことや子どものことを考えながら、何十年も過ごしていたんですけど、あるとき事務所のスタッフに「歌は、もうやらないんですか?」と言われて、「あ、そうだった」って本当に思って(笑)。そのときに「できそうなことはノーと言わずにやってみたほうがいいんじゃないか」と思ったんですよね。やるなら今しかないというか、この時期を逃したら、もうそんなに機会はないかもなと。キャンディーズが解散してからそのときでもう41年が経っていたので、そこからまた歌をやるのは勇気もいることだったんですけど、ここは思い切ってやってみようと。

――それまで、「また、歌ってみませんか?」という話はなかったんですか。それとも、そういう話を伊藤さん自身が遠ざけていた?

伊藤:うーん、私自身が遠ざけていたというよりも、まわりのみなさんが「もう歌はやらないんだろうな」と思うような終わり方をしていたので(笑)。だから、まわりはもちろん自分自身でも、もう一度歌を歌うという発想はまったくなかったというのが正直なところですね。

――にもかかわらず、2019年に、まさかのソロデビューを果たされて。

伊藤:そうですね(笑)。やらないまま、あれこれ考えるより、とりあえずやってみたほうがいいというか。迷ったときには、とりあえずやる方向に進んで、そこで新しい世界を見たほうが人生楽しくなるし、歌に限らず、そういうふうに生きてきたところがあるので。だから、特に誰かに相談する感じでもなかったです。あくまでも、自分の気持ちに正直に。もちろんやることを決めるまでは、いろいろなことを考えましたけどね。

――そこからまた、ボイストレーニングを重ねたり、いろいろと準備をされて?

伊藤:ボイストレーニングは少しやっていたんですよね。ただ、こんなにたくさん歌うことになるとは思っていなかったので、全然それでは足りなくて。いろいろと準備していく中で自分の課題とか、これからやっていく上で克服しなければいけないことが、たくさん出てきたんですけど、逆にそれが今の自分のモチベーションになっているところもあって。向上心が持てるというのは、すごくいいことですよね。

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