そらる&まふまふ、ふたりだけの特別な絆 After the Rain『アイムユアヒーロー』から紐解く
そらるとまふまふによる2人組ユニット・After the Rain。今年は4、5月に春ツアーとして『After the Rain Tour 2023 -春音-』を開催し、10月にフルアルバム『アイムユアヒーロー』をリリースするなど、精力的な活動を見せている。『Venue101 Presents After the Rain スペシャル』(NHK総合)でも、ふたりの自然体のバーベキュートークや、凛々しく華やかなスタジオパフォーマンスを見せ、その空気感からも公私ともによき相棒であることが伝わってきた。
だが、彼らが波乱もなくここへとたどり着けたかというと、そうとは言い切れない。その最も大きな出来事が、2022年6月11日・12日に開催されたまふまふのワンマンライブ『ひきこもりでもLIVEがしたい!~すーぱーまふまふわーるど2022@東京ドーム~「表/裏」supported by povo』のあとである。彼は数年間抱えていた病症の療養期間を設けるため、同ライブをひと区切りとし、個人活動の無期限休止に入った。
当時出された本人の声明では、「楽曲提供やユニットの活動には参加する」「いつかみんなの前でひとりで歌う日がきたら、その時には最強の存在になっている」などポジティブな言葉も並び、東京ドームでの2DAYSライブでも「またね!」と何度も再会を約束した。感情をさらけ出した清々いステージは、明るい未来を見据えているから成せるものであると、当時は思った。
だが、『CUT』2023年12月号に掲載されたまふまふのインタビューによると、ドーム当日を迎えるまで、彼は苦しみに満ちた日々を送っていたという。あの清々しい立ち居振る舞いは、最後の力を振り絞ってドームのステージに立ち、「心残りは全部なくしておきたい」と体当たりをした結果だったのだ。だからこそ彼も「あれほど楽しかったライブは後にも先にもない」と感じられる2日間になったのだろう。
個人活動休止中、彼には様々な変化が訪れた。時間を取って向き合えたからこそ、純粋な気持ちで自由に音楽を楽しめるようになったこと。自身に過度に課した責任感から解放されたこと。そして、本当の意味での仲間の大切さに気づいたことだった。自分の味方でいてくれようとする友人がたくさんいたことへの感謝で、少しずつ心を持ち直したという。その回復の過程で、チーム内にてAfter the Rainの活動再開の話が持ち上がった。そらるをはじめとした仲間からのあたたかい言葉を励みに、まふまふはユニットで動き出すことを決めた。
そうして『After the Rain Tour 2023 -春音-』に備えるなかでさまざまなことに考えを巡らせた結果、彼は「まふまふはあの東京ドームの有観客ライブで一度死んだことにしよう」「これから始まる復帰後の活動は、死後の世界の僕がやっているくらいの気持ちでいよう」という結論を導き出した。それから、より純度高く音楽ができるようになったという。
ツアーも大成功を収め、そらるはその時のMCでも「年内にはAfter the Rainに関するアナウンスができる」という旨を明かした。すると1カ月後の2023年6月、まふまふは個人活動の再開を発表。さまざまな文脈がひとつに交わり生まれ変わった彼は、再スタートを切ったのだった。