まふまふが音楽シーンの歴史を変えるか 時代の必然として生まれたネット発アーティストの活躍

まふまふ、音楽シーンの歴史を変えるか

 2019年、ネット発の表現者が日本の音楽シーンの歴史を変えようとしている。そんななか、まふまふの活躍が目覚ましい。

 いや、もともとまふまふはすごかった。2010年からニコニコ動画で“歌ってみた”を投稿するやいなやシーンを代表する存在となり、オリジナルのボーカロイド作品『明鏡止水』(2013年)、自身によるオリジナル曲の歌唱アルバム作品『明日色ワールドエンド』(2017年)での大ブレイク。自ら歌唱、作詞、作曲、編曲、演奏、エンジニアリングまで行う、マルチな才能を発揮する逸材なのだ。

【MV】サクリファイス/まふまふ かつて神だった獣たちへOP主題歌

 まふまふの歌声には特徴がある。ボーカロイド作品そのままの“高さ”を体現する人智を超えた高音表現はもちろん、作品の解釈に応じてキーを自在に操るボーカリゼーションの妙。繊細かつ強靭。アンビバレンツな魅力を、作品が持つ説得力を最大限に発揮する形で表現するエンターテイナーであり、唯一無二のアーティストなのだ。

[MV] 輪廻転生/まふまふ [オリジナル曲]

 疾走感溢れるロックサウンドはもちろん、和のテイストを感じさせる歌詞世界や、懐かしさを刺激するメロディの芳醇さにも注目したい。90’s J-POPや邦楽ロックファンなど、世代を超えてより強固なマーケットを飲み込む可能性を感じる表現センス。歌声のすごさ、ライブ表現の凄みなど、ロックフェスシーンでの活躍、世代を超えていく浸透も期待したいところだ。

夢のまた夢/まふまふ 【Music Video】

 現在、Twitterフォロワー数が160万人近く、YouTubeでは180万人を超える登録者数を誇る。中国の動画サイトbilibiliでも登録者数が30万を超えるなど、日本のみならず海外でも支持を得ている。躍進の決定打となったのは2017年10月にリリースしたソロアルバム『明日色ワールドエンド』での高評価だ。注目したいのがアルバムラストに収録された「終点」が持つ“ギリギリの精神性”を歌うナンバー。青春の葛藤、苦しさを吐露することで、逆説的に今を生きるべきと歌うメッセージ。もしかしたらアイコンとなるイラストキャラクターが持つイメージは、ゆるふわに見えるかもしれない。YouTuber的にバラエティに富んだ動画投稿活動にはキラキラな陽キャを感じられるハイブリッドな一面もあるが、しかし、まふまふの本質を、深遠なる闇を「終点」に感じたのだ。 

[MV] 終点/まふまふ [オリジナル曲]

 そして邦楽ロックファンに聞いて欲しいのが「とおせんぼう」だ。〈嫌われるより嫌われ未満が怖い〉というパワーワードが胸を突き動かす。爪弾かれる煌めきのギターサウンドと、自己嫌悪に落ちるメンタルが相反しながらも絡まり合い疾走するビートが、心の痛みをえぐり胸に刻むロックチューンに昇華する。

【MV】とおせんぼう/まふまふ

 さらに注目すべきは、その幅の広い音楽的センス。童謡のように甘酸っぱい世界観を生み出す物語的にキラキラしたポップチューン「水彩銀河のクロニクル」では、より繊細に歌詞世界を儚い気持ちを揺さぶるように紐解いていく。

【LIVE】まふまふ - 水彩銀河のクロニクル/幕張メッセ

 そんななか、今年の10月16日には、最高傑作と噂される2年ぶりのソロアルバム作品『神楽色アーティファクト』をリリースする。テーマは、自然と人工物の対比であり“先天的存在はもちろんのこと、後天的に生み出されたものも、絶対的何かの掌上である”という哲学的なメッセージだ。アルバムとしては本作より、気鋭のレーベル・A-Sketchからのリリースとなることにも注目したい。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる