“踊るw-inds.”を堪能した『Beyond』ツアー 何度でも目に焼き付けたい熱量MAXのパフォーマンス

w-inds.『Beyond』ツアー横浜公演レポ

 w-inds.の全国ツアー『w-inds. LIVE TOUR 2023 "Beyond"』が、11月11日の台湾、12月2日の香港の海外2公演を終了した。同ツアーについては「w-inds.史上、いちばん踊るライブになると思います」(橘慶太)という予告もあり、期待に胸を躍らせていたファンも多かったのではないだろうか。 歌に注力し踊らない構成で魅せたファンクラブツアー『~Bring back memories~』(2023年1月)から趣向を一転させた振り切り方も、いい意味で予想を裏切り続ける彼ららしい試みだと感じた。本稿では、10月29日に開催された神奈川県民ホール公演の模様を振り返る。

 開幕早々、現行のハウス×ヒップホップのエッセンスが濃厚に香る「FIND ME」をドロップ。続く2曲目「Let’s get it on」では、超ハイトーンのブロックを含む慶太の歌唱やダンサー4人を従えてのパフォーマンスの勢いにはもちろん、詰めかけたw-inds. crew(ファン)の青のサインライトの動きが、もはや一つの舞台装置のようで圧倒された。彼らの師匠的存在の1人である今井了介が手掛けた2曲を堪能しながら、w-inds.のダンスナンバーの変遷に思いを馳せた。「K.O.」では千葉涼平が見事なブレイキンを披露。MVの鮮烈なビジュアルイメージを表現するかのようにオレンジ色の照明が瞬く「Bang! Bang!」では、振りでアグレッシブなガンフィンガーを炸裂させる。

 「バチバチのダンスナンバーをたくさん持ってきたので、久々にこれだけ踊るw-inds.をみなさんに堪能していただきたいなと」(慶太)のコメントに続く「Drop Drop」では、近年のw-inds.のライブに欠かせないShow-heyがリードする形で、ダンサー陣もフロア技で魅了。慶太、涼平が2つのサブステージに分かれて披露した「Temporary」では、曲中にスクリーンに映し出された水のように、しなやかに構成を変えながらパフォーマンスを展開していく。2人体制の“始めの一歩”といえる楽曲「Beautiful Now」は、穏やかな曲調に反して歌もダンスも非常に熱量が高く、より意欲的にパフォーマンスに向き合おうとする現在の彼らの気概を感じた。w-inds.とcrewの関係性をイメージして制作されたという「Unforgetable」では会場の熱気もさることながら、引き出しが多彩なダンスの構成など、終始目が離せなかった。

 そしてこのツアーでは数少ないバラード「I Swear」へ。現体制になってからの彼らはもともとパフォーマンスをリードする立ち位置だった涼平が歌で、リードボーカルの慶太がダンスで魅せる割合がそれぞれ増えており、ここへ来て新たな魅力を開花させている。特に涼平の甘く伸びやかな歌声には「これだけ歌えたのか」と改めて驚かされた。

 MCでは同ツアーのNHKホール公演(9月21日)の盛り上がりぶりを振り返った。デビュー当時は同ホールに歌番組出演で立つことが多かったため「歓声が凄くてイントロが聴こえなかった!」と、会場のcrewも巻き込んでその流れを“再演”。司会の曲紹介のものまねも交えて会場を沸かせ、crewも全力の黄色い歓声で応える。一気に会場が温まったところで新作『Beyond』から「デビュー曲を書いてくれた葉山(拓亮)さんが今の僕らに向けて書いてくれた、大切な一曲です」(慶太)と、グループのこれまでを温かな眼差しで振り返るような「Over The Years」を披露。w-inds.の歴史を彩ったクリエイターの1人である松本良喜プロデュースの「Blessings」へと続き、同曲はややしっとりとスタンドマイクで聴かせた。慶太プロデュースの「Fighting For You」を含め、大人になったcrewや自分たちにもエールを送るような世界観の楽曲が連なる。

 そしてこのツアー最大の“キャーポイント”(※イケてるポイントを指す涼平用語)の「Strip」へ。艶やかなMVの世界観を再現するかのような椅子やソファに座っての歌唱やダンス、セクシーなジャケットプレイで、大人のダンスボーカルグループとしての完成度の高さを見せつける。MC時のリハーサル(?)効果もありつつ、デビュー20数年を経てここまで黄色い歓声を集められるカリスマ感には正直、舌を巻いた。

 続くMCでの「最近はトーク力を褒められることも増えたけど、僕らは調子に乗っちゃうとダメなタイプで」というコメントに「ああ……」とcrewが小声で納得するくだりがあり「さすがみんな、20年見てきただけあるなあ」(慶太)とボソリ。ここで会場をさらに盛り上げる“キャーポイント”を作ろう! という流れになり、慶太が「SUPER LOVER~I need you tonight~」のオープニングの英語のセリフ〈Hi baby! Don’t you know me?……〉を流暢に披露。バトンを渡された相方の涼平は、ステージのあちこちに寄りかかったり座ったりしながら悩みまくり「いったん曲に行く?」(慶太)の提案に、「えぇーーー!?」とcrewがツッコミを入れていた。結局、次の曲へ移ることになったのだが「MC5分の予定がもうすぐ20分。ダンサーが待ちくたびれてるわ!」(慶太)と苦笑い。

 脱力感のあるMCのあとには、新作アルバムからの躍動的な「Delete Enter」「Lost & Found」で一気に空気を切り替え、彼らの楽曲中でもステップを多用した振りが高難易度な「We Don't Need To Talk Anymore」で畳みかける。道ならぬ恋愛を示唆する歌詞を象徴するように“つながれることのない2本の手”がスクリーンに映し出されていたのも印象深かった。crewの掛け声もキレキレだった本編ラスト「New World (Remix)」は冒頭2曲と同様に今井了介プロデュース作品で、w-inds.のダンスナンバーの原点へと戻っていくような流れだった。

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