北山宏光、野心に駆り立てられた男の覚悟 「乱心-RANSHIN-」に表れる音楽を楽しむ姿勢

北山宏光、初楽曲に表れた決意の姿勢

 北山宏光がTOBEに合流後初のデジタルシングル『乱心-RANSHIN-』を11月17日にリリースした。発売に先駆けて11月10日には公式YouTubeチャンネルを開設し、ティーザー映像をアップするとLINE MUSICの「LINE 着うた」で1位を獲得。そして、リリース後も11月21日付で発表された「レコチョク」デイリーシングルランキングで1位に躍り出る躍進ぶりを見せた。

 「乱心-RANSHIN-」を初めて聴いた時、どこか懐かしい気がした。エレキギターがかき鳴らされる音から始まるロックサウンドは、北山と同世代、あるいはその前後を生きてきた人ならグッと心を掴まれたはず。

 それはもしかしたら、90年代に到来したV系バンドブームの熱気に近いものがあるからではないだろうか。人は10代の頃に触れた音楽の趣味が、生涯の「好み」として大きく影響を及ぼすと言われている(※1)。この時代の名曲たちに触れてきた人の心を無条件に熱くさせてしまうものが、この「乱心-RANSHIN-」にもあるように思えてならない。

 そんなV系バンドブームそのものがまずは日本独特のカルチャーとしてあるが、そのスパイスを感じさせるサウンドに合わせて歌われるのが、さらに日本語の面白さが散りばめられた遊び心溢れる歌詞だ。「待てないし」としか聴こえない部分を、よくよく歌詞を見ると〈正直…転生なんか待てない Sick〉と“Sick”が隠れているのを見つけて、ニヤリとしてしまう。

 〈ゆらゆら刻を〉と〈ゆらゆらTOKIO〉の韻を踏む歌詞もまた然りだ。さらに〈スバッとバーン〉といった漫画のようなオノマトペ表現が取り入れられていたり、「音符」と書いて「ジュウダン」と読むところも、日本語を存分に楽しむ姿勢が見て取れる。この歌詞を北山自らが手掛けたというのも、本作の大きな特徴と言えるだろう。

Hiromitsu Kitayama「乱心-RANSHIN-」Official MV

 リリース時、北山は「今の僕の頭の中を楽曲や歌詞、パフォーマンス、映像で楽しみながら表現いたしました」とコメントを寄せていた。さらに、雑誌『AERA』(2023年11月27日号)のインタビューでは、「最初から僕が一緒にやりたいプロの方たちとスタジオに入って、その場で一緒に作っちゃう」「その場でやりたいことが全部反映できる」とも。

 これまでも楽曲制作には関わった経験を持つ北山だが、これほどじっくりと、そしてスピード感を持って取り組んだことはなかったようだ。思ったことがすぐに形になっていく面白さ。ダイレクトに意見を交換しながら物を作る醍醐味。「なんか音楽作るって楽しい!」と、まるで童心に返ったような言葉が印象的だった。

 表現したいものを、そのまま発信していく。こう書くと至ってシンプルな図なのだが、関わる人が増えるほど、プロジェクトが大きくなるほど、そのスピード感を保ち続けるのが難しくなるのは世の常だ。北山もインタビューで「下ろさないと新しい荷物は背負えない」と話していたように。大きな組織になるほど、できることも増えるが、身動きが取りにくくなるのは、一長一短としてある。

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