リアルサウンド連載「From Editors」第32回:『コタツがない家』『きのう何食べた?』印象的なシーン
「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。
『コタツがない家』『きのう何食べた? season2』を観て
先日、「今期ドラマのおすすめ」をふいに尋ねられた時、いちばん最初に頭に浮かんだのが『コタツがない家』(日本テレビ系)でした。私も友人から薦められて途中から見始めた本作。カリスマウェディングプランナーの万里江(小池栄子)が、一癖も二癖もある夫の悠作(吉岡秀隆)・息子の順基(HiHi Jets 作間龍斗)・父の達男(小林薫)との日常や、仕事のなかで次々と起こる問題と真正面から向き合っていく“ネオホームドラマ”です。
悠作は言い訳ばかりで自堕落な生活を送る廃業寸前の漫画家。つい周囲が世話を焼きたくなってしまう憎めない人間性や、漫画家としてのポテンシャルはあるにせよ、あまりの自分本位ぶりに、なぜ万里江が愛想をつかさないのか疑問でした。「彼女に頼めば離婚しない」という仕事でのジンクスを守るための意地なのかと思い始めていたところ、第4話でその理由を垣間見ることになります。万里江が進路の話題をきっかけに息子と衝突した後、悠作が不器用ながらも寄り添い、これまでの万里江の頑張りを称えたのです。初めて悠作が見せた夫・父としての顔、ふたりの間にたしかにある他人からはわからないつながりが感じられたシーンでした。どんな問題が起こっても悲観を引きずらず、時に自省もしながら、ささやかな幸せを日々の原動力にして生きる万里江。あまりにも自立していてなかなか真似できるものではありませんが、見ていると元気がもらえるドラマです。石川さゆりさんの主題歌「ダメ男数え唄」もいい味出てます。
家族といえば、『きのう何食べた? season2』(テレビ東京系)も、ホームドラマとしての側面が強くなってきました。season1、劇場版とシロさん(西島秀俊)とケンジ(内野聖陽)の歩みを継続して見届けられるのは、ファンとしてはうれしいかぎり。今シーズンからは、二人が積み重ねてきた時の長さや時代の移り変わり、その中で起こる変化を感じさせるストーリーが増えています。現実的な問題に向き合うなかでハッさせられるシーンは多々あるものの、シロさんが元カレ・ノブさん(及川光博)との思い出を回顧する第5話。ノブさんと過ごしていた時にはなかった、日々の風景の中に当たり前に存在するケンジの思いやりを噛み締めて「そうか、俺……いま幸せなんだ」とつぶやき流したシロさんの一筋の涙は、疲れた私の心を潤すのに十分でした(Bialystocks「幸せのまわり道」が流れるタイミングもバッチリ……)。ふとした時に感じられる幸せほど、かけがえのないものはないな……としみじみ思った素敵な場面でした。
いずれのドラマもまだ追いつける話数なので、見逃している方はぜひ。
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