スナックJUJU、人生を豊かにする問いかけ “帰ってきたママ”が新たな解釈で歌う昭和歌謡

スナックJUJU、新たな解釈の昭和歌謡

 “スナックJUJUのママ”が帰ってきた。

 スナックJUJUとは、JUJUとそっくりな“ママ”が昭和歌謡の名曲をカバーする人気企画で、2016年の第1弾カバーアルバム『スナックJUJU 〜夜のRequest〜』以来となる第2弾『スナックJUJU 〜夜のRequest〜「帰ってきたママ」』が11月1日に発売された。今年5月13日から10月28日にかけての全国ツアー『ジュジュ苑スペシャル「スナックJUJU 2023」~47都道府県出店!! “あのママ”がJUJU20周年を勝手に前祝い全国ツアー~』で披露された楽曲を中心に、往年の昭和歌謡曲が新たな解釈でたっぷりと収録されている聴き応えある1枚だ。

【JUJU 11.1発売】最新作「スナックJUJU ~夜のRequest~ 『帰ってきたママ』」全曲ダイジェストムービー

 前作は全日本スナック連盟の協力により、「もしも自分のお店にJUJUが来たら歌ってもらいたい曲は?」というリクエストを募っていたが、今作はファンからリクエストを募集。ライブではイントロが流れただけで盛り上がり、「フワフワフワフワ」という合いの手が鳴り響く「あゝ無情」(アン・ルイス)から始まり、リクエストが多かったという「なごり雪」(かぐや姫)から「時の流れに身をまかせ」(テレサ・テン)で締め括られる全15曲。亀田誠治、川口大輔、小林武史、島田昌典、武部聡志、蔦谷好位置、松浦晃久というJ-POPの名プロデューサー陣が集結し、「メモリーグラス」(堀江淳)はスタンダードジャズに、「じれったい」(安全地帯)はメロウなアーバンR&Bにアレンジ。JUJUが幼稚園生の頃から歌っていたという「別れても好きな人」(ロス・インディオス&シルヴィア)は、フレンチポップスを想起させるウィスパーボイスによるアプローチで、70年代末にデュエット曲として大ヒットした際は〈歩きたいのよ高輪〉と歌われていた歌詞を、ロス・インディオスによるオリジナルの〈狸穴〉に戻し、雨の夜の散歩道を修正。音楽的充実も見逃せないが、心が惹かれるのは、やはり歌詞世界だろう。

JUJU 『あゝ無情』 Music Video

 JUJUはかつて「子供の頃に親に連れて行かれたスナックで大人たちが歌う歌謡曲に魅せられた」と語っていたが、昭和歌謡の音盤の中にいる女性は皆、凛としていて、潔く強い。実際は強くはなくて、涙に濡れる夜もあるのだが、人前に出る時は、流した涙を拭って笑顔を見せる。その仕草がやるせなくて、切なくて、可愛らしくもある。〈サヨナラだけの手紙〉を書き置きして去っていく「異邦人」(久保田早紀)、〈好きな男の腕の中でも/違う男の夢を見る〉という「魅せられて」(ジュディ・オング)、〈私は泣いたことがない〉とクールにうそぶきながらも、本当の恋をした時に〈私泣いたりするんじゃないか〉と思いを巡らせる「飾りじゃないのよ 涙は」(中森明菜)。夏はそばにいたけど、冬は〈さだめといういたずら〉に引き裂かれた「たそがれマイ・ラブ」(大橋純子)。〈飲めるわよ 酒ぐらい/たかが色つき 水じゃない〉と強がる「酔っぱらっちゃった」(内海美幸)……など、どの曲も「一体何があったの?」と聞かずにはいられないが、詳しい事情は語られない。簡潔で含みのある、味わい深い言葉に主人公たちの気持ちをそっと添わせる慎ましやかな描写。昭和情緒の最良の部分をにじませる世界観。誰もが一番大事なことは話さずに、言わない思いを抱えたままで、表面上の平穏を保って日々を生きていく。そんな不安定なように見えて、だからこそ愛おしい市井の情景を求めて、行き場のない気持ちを抱えた大人たちがスナックに足を運び、涙ながらに熱唱してきたのだろう。

JUJU 『なごり雪』 Music Video

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