フォーリミ、バニラズ、SHISHAMO……リアレンジで過去曲を再解釈 新たなアプローチによる可能性

 バンドがアニバーサリーイヤーを迎える時、何を象徴的なアイテムとしてリリースするかには個性が強く出るものだ。2010年代前半からロックシーンで最前線を走ってきたバンド3組がこの秋、アニバーサリー作品として過去曲のリアレンジアルバムを立て続けにリリースしている。すでに定着した楽曲を再解釈するリアレンジというアプローチ。本稿では各作品を紹介しつつ、その意義を考えていきたい。

 04 Limited Sazabysは結成15周年を記念してセルフカバーアルバム『Re-Birth』をリリース。6組のアレンジャーを迎えて過去曲を再編曲したアコースティックアルバムである。メロディックパンクを主軸に活躍してきたフォーリミだが、優しく温かな曲調で過去の楽曲を再解釈している。

 例えばフレデリックがアレンジを担当した「Re-Letter」は口笛のフレーズを交えてボサノバ風に変貌。玉屋2060%(Wienners)が担当した「Re-fiction」はフラメンコでも踊り出すかのようにスパニッシュで情熱的な楽曲に化けている。ミト(クラムボン)が担当した「Re-swim」はシンフォニックな響きを持つ清廉なポップナンバーに仕上がった。それぞれの自由奔放なアレンジは楽曲を予想外な方向へと飛翔させ、驚きと衝撃をもたらしてくれる。

04 Limited Sazabys / Self Cover Album "Re-Birth" trailer
04 Limited Sazabys「Re-swim」(Official Music Video)

 GEN(Vo/Ba)は「コロナ禍にモッシュやダイブができない、座席ありのライブをすることが増えて、それをきっかけに“座って観られるフォーリミ”を見せたいと思った」ことが本作の制作のきっかけだったと語る(※1)。結果として様々なリズムパターンやGENのリラックスしたボーカリゼーションなど新たな武器を手にしている。また「Buster call」のようなライブで大爆発を巻き起こす曲も、その中心には美しいメロディがあることを再確認できる。これからのフォーリミにもフィードバックされていくであろう、多くの発見に満ちたリアレンジアルバムだ。

 go!go!vanillasはデビュー10周年を記念し、ギフトアルバムと題した『DREAMS - gift』をリリースした。現在ライブでサポートを担当している井上惇志(Pf)、手島宏夢 (Fid, Mand)、ファンファン(Tp)、山田丈造(Tp)を客演に迎えて代表曲を再録したアルバムだ。

 牧達弥(Vo/Gt)は「僕の頭の中にあるものをより具現化した」(※2)と形容している通り、原曲をより色濃く印象づけるようなアレンジばかり。「マジック(alt ver.)」や「平成ペイン(alt ver.)」はまるでアイリッシュパンクかのようにフィドルが暴れ回り、「ヒンキーディンキーパーティークルー(alt ver.)」ではマンドリンのからっとした音色がカントリーテイストを付与する。go!go!vanillasがこれまで取り込んできた幅広いジャンルの一つひとつをクローズアップするような大胆な再録盤である。

go!go!vanillas ‐10th ANNIVERSARY GIFT ALBUM「DREAMS」 Trailer

 加えて、トランペットと鍵盤によるムーディーなアレンジを施した「ツインズ(alt ver.)」ではテンポをぐっと落とし、よりファンキーでソウルフルな華やかさを加えた「サイシンサイコウ(alt ver.)」ではリズムを大幅に変えたりもしている。ただ楽器を加えるだけに留まらない、go!go!vanillasズ自身の鍛錬も大きく反映されているのだ。常に音楽性を変遷させ、自分たちが今最も鳴らしたい音を貫いているバンドだからこそ、現在の姿を鮮明に捉える選択肢として最適なアニバーサリー作品と言えるだろう。

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