XG、世界的ヒットが証明した“X-POP”の画期性 「J-POPでもKーPOPでもない」グローバルでの戦い方

XG、“X-POP”の真価

 デビュー曲「Tippy Toe」から2年足らずで日本だけでなくグローバルでも注目を集めるガールズグループ XG。今年6月にリリースした「GRL GVNG」は、全米ビルボードチャート「Hot Trending Songs Powered by Twitter」で初登場1位を獲得。今年1月に公開された「SHOOTING STAR」のMVは、日本、イギリス、カナダで1位、アメリカで3位など、世界25カ国・地域のYouTube急上昇チャートにランクインした。

XG - GRL GVNG (Official Music Video)

 9月にリリースした1stミニアルバム『NEW DNA』は日本のビルボードチャートでの総合アルバムチャート“Hot Albums”では首位、オリコンCDウィークリーアルバムランキングでは2位、日本人アーティストとして初めてSpotifyの「Top 50 - United Kingdom」チャートで最高24位にランクインしている。

 XGがグローバルで注目を集めるようになった理由は、曲調やジャンルの垣根を飛び越えたーークロス(X)したーー楽曲が、ひとつの一貫したテーマでまとめられていること。『NEW DNA』は、まさにそれを体現しているような作品だ。そして、そこにはプロデューサーであるJAKOPS(SIMON)の哲学やスタンスが、そのまま表れているのではないだろうか。

 XGを立ち上げたJAKOPSは、アメリカのシアトル生まれで韓国と日本にルーツを持ち、K-POPボーイズグループ「DMTN(ダルメシアン)」のメンバーとしてデビューする前はavexでトレーニングを受けていた。グループ解散後も作曲家として人気K-POPアーティストに楽曲提供するなど、エンターテイナーとしてのルーツは日本にもあるが、同時に長年K-POPにも関わってきた人物だ。

XG Documentary Series ‘XTRA XTRA’ EP XX

 XGのメンバーは全員が日本国籍で、韓国語と英語を学びK-POPシステムのトレーニング法で練習し、クリエイションにはDMTNのメンバーだったDaydayを含む多くの韓国人クリエイターが参加。韓国のビジネスシステムで新曲も発表するという活動形式をしている。一方で、オリジナル楽曲の歌詞は現状すべて英語だ。これはまさにJAKOPSの多国籍なキャリアをそのまま生かしたやり方だが、このような活動形態のグループ自体が現状では他にないため、“J-POPでもKーPOPでもない”XGだけの音楽・ジャンルである「X-POP」という表現を使っている。

 「X」にはミックスの概念があるが、JAKOPSは「様々な偏見を脱してJ-POPやK-POPがミックスされたという意味が込められている」と語っている。「グローバルに通用するグループを育てる」という目的でXGALXを立ち上げた当初からこの“X”というキーワードは多用されており、日本と韓国両方でエンターテインメントの業界に身をおき、パフォーマーとしてトレーニングや活動した経験のあるJAKOPSにとっては、外せないアイデンティティのようなキーワードということなのだろう。

 “J-POPでもKーPOPでもない”という部分は、どちらをも内包しているという理解が正しいのではないだろうか。メディアでは時に「日本人のグループ」という部分が強調されるが、元々XGALX自体が「日本人のグループ」を作るためのプロジェクトではない。実際、日本だけでなく韓国、ベトナム、タイなどさまざまな国籍の約1万3000人の志願者をオーディションしており、選抜の結果たまたま全員日本国籍のメンバーが残ったのだという。(マルチレイシャルのメンバーも含んでいる)

 また、JAKSOP自身が「デビューする時は韓国で制作して活動することを熱望してきた。それは韓国がアイドル文化産業の中で最高のシステムを持っており、長年熾烈に戦ってきた人々によって形成されたひとつの文化だからだ」「自分自身が10年以上KーPOPに関わってきたことに強いプライドもある。そのようなフィールドで我々がアーティストグループとして沢山成長し、それを多くの人に見てもらう良い機会だと思う」とデビュー当時からKーPOPという文化へのリスペクトをはっきりと表明している。「グローバル」を目指すだけなら英語だけでも良いという考え方もあるが、メンバーは韓国での活動を前提とした韓国語の習得や歴史教育なども行っている。

 一方で、できるだけグローバルなリスナーにアプローチするという部分で、XGはすでにグローバル人気を獲得しているK-POPの伝統的な方法とは異なるアプローチを取っている。通常は活動国のファンダムを築くことを目的に母国語で曲をリリースし、その後グローバル展開の一環として他言語の楽曲リリースするのがKーPOPでは通常行われることだが、XGは活動する韓国の言葉でもメンバーの第一言語でもない英語の楽曲でデビューした。これはむしろ「K-POP」を標榜した場合には難しい手法だろう。

 J-POPとK-POPのどちらもを内包し、なおかつ両者の現状での境界や限界を超えて領域を広げていきたいという心意気には、「X-POP」という新しいカテゴリーがふさわしいようだ。

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