コアラモード.自分たちらしい曲作りへの自信 集大成と楽しみな未来が詰まった5年ぶりアルバム

 あんにゅ(ボーカル)と小幡康裕(サウンドクリエイター)からなるコアラモード.が、3rdアルバム『COALAMODE.3 ~Blue Moment~』をリリースした。約5年ぶりのアルバムとなる今作は、インディーズ時代に制作された「雨上がりには好きだといって」が初収録され、2019年に配信シングル曲としてリリースされた「ビューティフルデイズ」から最新曲「ビデオテープ」まで全13曲を収めた、まるでベスト盤のような充実作。美しくメロディが移ろう曲展開や、言葉がまっすぐに届いてくるあんにゅの歌声など、コアラモード.のポップミュージックへのこだわりが存分に感じ取れる内容だ。あんにゅ、小幡の2人にこの5年を振り返ってもらいつつ、今作について語ってもらった。(上野三樹)

配信曲を重ねたアルバムならではの面白さ

――3rdアルバム『COALAMODE.3 ~Blue Moment~』がリリースされました。前作以来、約5年ぶりのアルバムということですが、コアラモード.にとって、この5年はどんな時間でしたか。

小幡康裕(以下、小幡):5年という年月はやっぱり大きくて。1人のアーティストとしても日々いろんなことを吸収していますので、5年前に作った曲と最新曲を比べると、普段感じていることや張っているアンテナが違うくらいの変化があると思います。今回のアルバムはこの5年間のコアラモード.の集大成となるような、ベスト盤のような作品になりました。

あんにゅ:私たちもこの5年間で作ってきた楽曲たちをあらためて振り返りながらアルバム制作をしていたんですけど、コロナ禍の数年間に作ってきた曲たちをこうしてアルバムに収録できて、コアラモード.の歩みと変化を感じられる5年だったなと思います。「カンパイ!」を作ったのなんて、すごく昔に感じますね。

あんにゅ

――「カンパイ!」は2019年のリリースで、この年に配信リリースされた曲は他にも「思い出コレクション」「ビューティフルデイズ」がアルバムに収録されています。

小幡:2019年あたりからコアラモード.としても配信で曲をリリースすることが増えてきて。もちろんどういう形態でも大事な曲を届けるという作業自体は変わらないんですけど、配信だと1曲単体で聴かれるのでイントロから粒立って聴こえるようなものを作ろうという意識の変化がありました。1つのストーリーを1曲ごとに完成させていくような曲作りをしてきたから、こうしてアルバムに並ぶと、1曲1曲の「私を聴いて!」という主張が、これまでのアルバムよりも強く出ている気がして。それが今回のアルバムの面白いところだなと感じます。

――跳ねたビート感が楽しい「思い出コレクション」と、エモーショナルに歌い上げるサビが印象的な「ビューティフルデイズ」は対象的な2曲ですね。

小幡:そうですね。「思い出コレクション」はハッピーな曲調で、コアラモード.のライブに来てくれるお客さんたちに、一つひとつの公演ごとの思い出を刻んでもらいたいという思いで作った曲です。

あんにゅ:「ビューティフルデイズ」は私が弾き語りで作った曲なんですけど、この5年間で自分の中で歌詞の解釈が大きく変わりました。もともとは誰の記憶にも寄り添えるような抽象的な歌詞を書いたつもりだったんですけど、〈守りたい ビューティフルデイズ/100年先もずっと〉というサビをはじめ、コロナ禍でみんなに会いたいのに会えなかった時の感情にぴったりと当てはまって。日々生きていることのかけがえのなさを再認識させられるような内容が、コロナ禍においてより説得力を増した1曲になりました。今回のアルバムタイトルの『~Blue Moment~』は、夜から朝にかけて空が青く輝く瞬間という意味なんですけど、「ビューティフルデイズ」の曲中で描かれている景色もまさにそのイメージでした。

コアラモード. 『ビューティフルデイズ』

――2020年に配信リリースされた曲では「アンダンテ」「あなたに会えて」が収録されています。このあたりの曲はまさにコロナ禍での制作でしたか。

小幡:そうですね。「あなたに会えて」はコロナ禍に入る頃にリリースした曲で、なおかつ僕たちのデビュー5周年というタイミングだったことを覚えています。私がいてあなたがいる、そのシンプルな関係性をいろんな角度から見た感謝の形を歌詞に落とし込んでいて、ファンの方に伝えたいメッセージが1つの完成形を迎えたなという想いが当時はありました。

あんにゅ:「あなたに会えて」は弾き語りでキャッチーなサビを考えようと思ってできた曲だったんですけど、でき上がってみたら、ファンの方たちや自分の家族や友達といった身近な人に感謝を届けるメッセージソングになって、明るい曲なのにライブで歌うと泣きながら聴いてくださる方もいらっしゃるんです。

小幡:リリース直後はコロナ禍に突入したばかりだったので〈あなたに会えてよかったわ〉というフレーズを、これまでの日常はもう戻らないんじゃないかと思いながら歌っていた時期もありました。この頃から歌詞で歌われる〈あなた〉にはファンの皆さんの顔が思い浮かぶようになっていったし、「アンダンテ」や「ユラユラリカ」もそういう意識で書いた曲です。

コアラモード. 『あなたに会えて』

「『はるつげどり』は1つのピリオドを打つのにふさわしい曲」(小幡)

――その「ユラユラリカ」は2021年に配信リリースされていて、他にも「ネモフィラ」「わたしの願いごと」「ラッタッタラッタ」が今回のアルバムに収録されています。「ラッタッタラッタ」の歌詞には〈ポテサラ〉が出てきたりしてリアリティがあっていいですね。

あんにゅ:「ラッタッタラッタ」は「バローホールディングス年末CMソング」としてお話をいただいて作っていたので、せっかくだからスーパーで買うものを歌詞に入れてみようよっていう話になって。そこで出てきたのが〈ポテサラ〉で、歌ってみたらメロディにもぴったりだったんです。

小幡:何気ない日常をどういう角度で描写したらハッとするだろうかという言葉を、ある意味ちょっとコピーライティングみたいな感覚で考えて入れてみました。曲が始まってわりとすぐに〈ポテサラ〉が出てくるので、聴いてくれた人が「おっ!」と思ってくれたらいいなと。そこでダサいと思われるか絶妙なラインなんですけど(笑)。サブスクとかで曲がどんどん流れていって聴かれちゃう世の中だからこそ、どうやって耳に残る歌詞を生み出せるかっていう貪欲さが出てますね。

あんにゅ:“ポテサラ!?”ってなるかもしれませんが、親しみやすさがありますよね(笑)。

小幡康裕

――2022年の作品からは「はるつげどり」と「I’LL BE」(音源化は初)が収録されています。このあたりはもう最近作られた曲という感覚ですか。

小幡:「I’LL BE」は実はデモとしては2014年からある曲で、9年寝かせて『ハマナビ』(テレビ神奈川)のエンディングテーマソングとしてオンエアしていただきました。歌詞の大枠を書いたのも随分前のことで、コアラモード.を結成したのが2013年でしたから、僕たちがどんな音楽を作っていこうかと模索していた時期で。当時の僕が感じていたコンプレックスや内面性に向き合って書いたので、これをあんにゅに歌ってもらうというようなビジョンもなかったんですよね。

――そうなんですね。「I’LL BE」は、あんにゅさんにすごく似合っている歌だなと感じたので意外でした。

小幡:このアルバムの中では特に青い歌詞だと思うんですけど、その青さがあんにゅの中の少年性みたいな部分とリンクして説得力を増してるのかなって気がしますし。あるいはこの「I’LL BE」という曲を2014年からの月日の中であんにゅの中に落とし込めていたのかなという感じもします。

あんにゅ:デモから完成まで何回も歌っているので、今ではすごく自然に歌えています。「I’LL BE」は最近やっとラジオでもオンエアできるようになって、ファンの方に「コアラモード.らしいね」って言っていただくことが多くて嬉しいですね。

――「はるつげどり」は今回のアルバムの最後を締めくくる優しくて爽やかなミディアムナンバーですが、この曲は作詞作曲のクレジットが初めてコアラモード.名義になったそうですね。

小幡:この曲はワンコーラスができた時に「いい曲だね」って、僕ら2人もスタッフさんもみんな素直に感じられたというか、なんか腑に落ちたような感覚があったんです。そういう経験が初めてだったから、この曲は然るべき時にリリースしましょうということで温めていました。だから今回のアルバムを締めくくる曲を考えた時に、やっぱり「はるつげどり」だねって、満場一致でした。まさにこの5年間の集大成、1つのピリオドを打つのにふさわしい曲だと思います。

 クレジットに関しても、これまではあんにゅと小幡のどっちがリードして作った曲なのかを気にしながら表記していたんですけど、この曲は2人で、このチームで作った曲だから、これからは一緒に作った曲なら「コアラモード.」表記をメインにしていこうかっていう、そんな考え方の変化ももたらしてくれた制作でした。

コアラモード.『はるつげどり』× 360 Reality Audio

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