Dios、本領発揮の充実ステージ バンドの強みも新たな可能性も見せつけた『&疾走』ファイナル

Dios『&疾走』ファイナルレポ

 10月7日の仙台に始まり、全国を巡ってきたDiosのワンマンツアー『Dios Tour 2023“&疾走”』。バンドにとって大きな一歩となった2ndアルバム『&疾走』を携えて進んできたツアーが、10月23日、Zepp DiverCity(TOKYO)でファイナルを迎えた。アルバムに込められたメッセージを全力でぶつけつつ、サポートメンバーも含めて練り上げられてきたグルーヴを最大限に発揮する充実のステージは、Diosというバンドの本領を感じさせるのに充分。アンコールでは新曲も披露され、これからの躍進にも期待を感じさせる内容だった。

たなか

 オープニングムービーに続いてIchika Nito(Gt)、ササノマリイ(Key)にサポートを務めるLITE・山本晃紀(Dr)とオオツカマナミ(Ba)が立ったステージに、たなか(Vo)が遅れて登場。1曲目「自由」からライブは始まっていった。さらに「アンダーグラウンド」でフロアのテンションを上げると、「ツアーファイナル東京、盛り上がっていけそうですか? 好き勝手に踊っていってください」とたなかがオーディエンスに語りかけ、エモーショナルなメロディが映える「Bloom」へ。Ichikaのギターソロでは一際大きな歓声が上がる。続く「裏切りについて」ではステージ後方のスクリーンに映し出される美しい映像が華を添え、ササノのピアノとIchikaのギターの絡み合いが感情を掻き立てた。

ササノマリイ

 MCを経て、たなかが「ここから暗い曲のゾーンに突入していくんですけど……」と言って「王」へ。確かに重いサウンドの曲だが、生のリズム隊が生むうねりのような音の波が、ただ重いだけではないドラマを作り出していく。たなかの「手を挙げて!」の声にオーディエンスは即反応。ステージとフロアの間のコミュニケーションはさらに濃密になっていった。オオツカのベースがずしんと鳴り響くなか、続く「紙飛行機」へ。たなかのハードなラップが空気をビリビリと震わせる。Ichikaのギターがフィーチャーされた「鬼よ」のスケールの大きなサウンドも圧巻だった。

Ichika Nito

 「すげえ楽しい」と笑顔を見せつつZeppでワンマンをやれているという感慨を口にするたなか……だが、そんな彼にIchikaから早速「お前、今日声ちっちゃくね?」とツッコミが入る。「緊張してんな?」と言われ「緊張してます」と素直に話すたなか。一方、ササノは広島公演で1人で20分くらい喋っていたらしく、「今日は余計なこと言わんとこうと思って」と自重しているらしい。音源や佇まいからはハイコンセプトな雰囲気も感じられるDiosだが、「もっといろんな人に聴いてほしい」(Ichika)という思いから今回のツアーでは積極的に話すようにしているという。確かに砕けたトークからは3人のキャラクターがはっきりと伝わってくる。あと、Ichikaのトーク回し力がすごい。YouTubeで「アンダーグラウンド」のギターを弾いてみた動画をアップしたところ、コメント欄で彼をDiosのメンバーだと知らない人からマウントを取られた、というエピソードを披露していたのだが、フリからオチまでの流れが完璧だった。そんな会話からドープな「渦」に突入していく落差もすごい。さらに「ダークルーム」のどっしりとしたグルーヴを聴かせると、そのまま「逃避行」へ。たなかの切実さを感じさせる歌をササノのキーボードとコーラスが美しく支え、音が消えた瞬間には息を呑むような静寂が会場に広がった。

 そんな中盤を経て、たなかが『&疾走』に込めた思いを語り始める。

「3人それぞれがそれぞれの強みを持って、それをぐしゃぐしゃにして整理しないまま皆さんに届けようっていうことを意識して作った。だから前作よりは歪な印象になっているのかなと思う」

 それに加えて「個人的に言いたいこと」として彼が口にしたのは、曲を作る上での感じ方の変化だった。

「今までは自分のために曲を作っていたんです。でも、それは『CASTLE』(2022年)で満足してしまって、皆さんのために音楽を作ってみたいなと思いまして。みんなが人生において疾走していくシーンで隣にいて、僕らの音楽も一緒に走れるような存在になれたらいいな」

 半ば正反対と言っていいようなベクトルの変化を、そう言葉にして大きな拍手を浴びるたなか。そんな“所信表明”から、ライブはサポートメンバーを加えない3人編成でのパフォーマンスに入っていく。

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