藤井 風、ドラマ『いちばんすきな花』主題歌に表れた最新モード 聴き心地のよさを増幅させる“脱力”によるグルーヴ
歌詞においては、「Workin' Hard」は英語を多用したリリックによる海外志向を強く感じさせるものだったが、本作は日本語が中心。その内容は大きく分けて2つのテーマを含んでいるように思う。
1番では、ある種の諸行無常が歌われる。すべては花のように枯れていくのに、自分は〈永遠に変わらぬ輝き〉を求めてしまっている。人は儚く尊い存在なのだから、自分も花のように今この瞬間を生きよう、と。そして2番では、人それぞれの“色”について歌われる。周りの多様な個性に戸惑ってしまうけれど、カラフルな花束を見てその一つひとつの花がすべて綺麗だと思えるように、いずれは自分もその中の一人だと思えるさ、と。
こうした儚さや個性についての彼なりの考え方が、花というモチーフを通して歌詞全体に表現されていて、聴いていると不安や迷いが自然と消えていくような、救われるような心地よさがある。まさに“脱力”した今の藤井 風を象徴するような達観した歌詞だ。
また、サビ頭に〈しわしわに〉や〈色々な〉といった反復した表現(畳語)が用いられるのは、デビュー曲「何なんw」でも登場した彼らしい遊び心だ。このさりげない工夫によって曲にグルーヴを生み出している。これもまた“脱力”の一つと言えるだろう。
今の脱力したモードから生まれる“そよ風”が、何よりも気持ちいい。
※1:https://www.billboard-japan.com/special/detail/4132/