Mrs. GREEN APPLE、“バンド”の枠組みに捉われない強固なエンタメ精神 10周年ライブ映像から紐解くパフォーマンスの真髄

ミセス、ライブの魅力

 Mrs. GREEN APPLEの特別番組がWOWOWで2カ月連続で放送される。10月29日には、この夏に埼玉・ベルーナドームで開催された初のドーム公演『Mrs. GREEN APPLE DOME LIVE 2023 “Atlantis”』より、最終日の8月13日の模様を独占放送・配信。11月24日には、『Mrs. GREEN APPLE Music Video Collection』として“フェーズ2”で発表された全楽曲のMVが放送される。

Mrs. GREEN APPLE

 大森元貴(Vo/Gt)が16歳の時に結成したMrs. GREEN APPLEは、今年で結成10周年。彼らはインディーズでの活動を経て2015年にメジャーデビューすると、怒涛の勢いで支持を広げ、「青と夏」、「インフェルノ」、「点描の唄feat.井上苑子」などのヒット曲を世に放った。自らの手で楽器を鳴らし音楽を奏でる彼らの表現形態は“バンド”と言って差し支えないだろうが、ストリングスや打ち込みも積極的に取り入れつつ、一定のジャンルに拘泥しない、自由な音楽としてのポップスを志向してきた。全楽曲の作詞・作曲を行う大森が、DTMでアレンジまで一気に仕上げたあと、それを受け取ったメンバーが自分なりの解釈を加えながら演奏していくという制作スタイルだ。

大森元貴
大森元貴

 Mrs. GREEN APPLEは、2019年12月~2020年2月に初のアリーナツアー『ARENA TOUR / エデンの園』を開催。計8万人分のチケットを即日ソールドアウトさせるなど多くのファンを抱えた状況にあったが、2020年7月にベストアルバム『5』をリリースすると同時に突如活動休止期間に入り、ファンを驚かせた。彼らは、結成から活動休止までの期間を“フェーズ1”、大森、若井滉斗(Gt)、藤澤涼架(Key)の新体制で活動を再開した2022年3月以降を“フェーズ2”と呼んでいる。

藤澤涼架
藤澤涼架

 活動休止中の2021年2月に、世界展開を視野に入れた新プロジェクト「Project-MGA」を立ち上げたことを発表したように、1年8カ月にわたった活動休止期間は、彼らにとってMrs. GREEN APPLEというエンターテインメントの可能性をさらに広げるための準備期間でもあった。“フェーズ2”のMVを網羅した特集『Mrs. GREEN APPLE Music Video Collection』では、バンドの進化を視覚面からも感じ取れるはずだ。

若井滉斗
若井滉斗

 また、活動休止中もストリーミングでの楽曲再生数は伸びるばかりで、メディア露出などがない時期にも、音楽の力で以ってファンを増やし続けていたのがMrs. GREEN APPLEのすごいところ。さらに「ダンスホール」、「Magic」、「ケセラセラ」など“フェーズ2”で発表した楽曲でも次々とヒットを生んでいて、今もまさに急速な勢いで支持を拡大させている。『Mrs. GREEN APPLE DOME LIVE 2023 “Atlantis”』では計7万人を動員したが、2日ともチケットは即日ソールドアウトだったため、残念ながら会場に行けなかったというファンも少なくないだろう。WOWOWでは、この記念すべき10周年ライブを映像で追体験することができる。

Mrs. GREEN APPLE

 同公演を現地で観た筆者は、1曲目「ANTENNA」が始まるとともに「最高のライブになるに違いない」と高揚した。〈どこまでも行ける そんな気がしてる〉という歌詞を地で行く全能感溢れるバンドサウンドも、メンバーの堂々とした立ち振る舞いも、そのパフォーマンスで幅広い世代を熱狂させる様も、曲が始まるたびに歓声やどよめきが湧くレベルでどの曲も待ち望まれている状況も、初のドーム公演とは思えないほど頼もしく感じられたからだ。あの日ドームを揺らしたダイナミックなバンドサウンドを、一人でも多くの人に体感してもらいたい。1曲目を終えた直後、大森が観客に「楽しむ準備はできてますか?」と投げかける背後でバンドのセッションがどんどん加速、その勢いのまま2曲目に突入するライブ序盤の展開は、映像で観てもワクワクさせられる。

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