NewJeans、Mrs. GREEN APPLE、水曜日のカンパネラ……豪華アクト集結した『Coke STUDIO SUPERPOP JAPAN 2023』レポ
ライブイベント『Coke STUDIO SUPERPOP JAPAN 2023』が、10月7日、8日に横浜・ぴあアリーナMMで開催された。取材を行ったこの日は開催初日。会場には各アーティストのファンを中心とする多くの観客が集い、盛況を呈した。入場口から続くホワイエにはネオンのモニュメントや巨大な提灯などが用意され、まるで香港のネオン街のような雰囲気を醸し出して訪れた観客のフォトスポットとなっていた。
オープニングアクトを飾ったのは、パワーパフボーイズと、二松学舎高校 Butterfly effect。コミカルな表情を混じえながら圧巻のパフォーマンスを見せ、これから始まろうとするフェス本編に向けて会場をあたためる。
突如、会場に響き渡る大歓声。その視線の先に現れたのは、韓国の大手事務所・HYBEの傘下レーベル・KOZ ENTERTAINMENT初のボーイズグループのBOYNEXTDOORだ。デビューシングル『WHO!』収録の「One and Only」で、楽曲のMVにも出てくるトレードマークでありながら、グループ名にもちなんだ青色の“ドア”から元気に飛び出した6人。これには観客の掛け声にも力が入る。「皆さん盛り上がってますかー? この熱い雰囲気のまま次の曲にいきましょう! 次の曲は特別に写真を撮って大丈夫です!」と声をかけると、2曲目の「돌아버리겠다(But I Like You)」でさらにポップなバイブスで会場の視線を集めた。続く「Crying」、「뭣 같아(But Sometimes)」では、「皆さんも一緒に歌ってくれますよね?」と誘い、メンバー同士アイコンタクトを交わしながら、お揃いの真っ赤なマイクでフレッシュなパフォーマンスを届けた。
ほかにも、日本初披露となった、恋の楽しさと苦しさを描いた新曲「ABCDLOVE」で笑顔と困り顔を豊かな表情で使い分けてみたり、メンバー同士でおんぶし合ったりと、終始目を飽きさせない魅力を見せた6人。最後に「Serenade」で締め括り、あっという間のステージを観客に惜しまれながらも後にした。「好きだよ〜」「会いたかったです」「ドキドキしています」――そんな心の内まで、デビュー半年弱にもかかわらず流暢な日本語を用いて一生懸命に伝えてくれたBOYNEXTDOORのメンバーは、そのグループ名に込められた意味の通り、まさに彼ら自身が持つ自然な魅力で人々を虜にしたことだろう。
「皆さんこんにちは〜!」と会場中央に位置するアリーナ席の通路から登場したのは、水曜日のカンパネラの詩羽だ。ロングトーンを響かせる「ティンカーベル」を歌いながら客席の合間を抜け、観客と間近で視線を交わしてメインステージへ向かった彼女は、続けて披露した「バッキンガム」でハンズアップやクラップを誘い、「K」「Y」「U」のコールで観客を巻き込みながら観客との一体感を創出した。
「皆さん、改めましてこんにちは! 水曜日のカンパネラの詩羽です」――左手の甲に書いた『Coke STUDIO SUPERPOP JAPAN 2023』というイベント正式名称のカンペを照れたような表情で見せながら、にこやかに挨拶した詩羽は、若年層のファンも多い会場を見渡し、普段の自身のコンサートとは異なる客層に驚いた様子を見せる。「私、『きゃー!』って言われたい! みんなが一番好きっていうアーティストへの『きゃー!』を聞かせて!」と、多様なファン層が一堂に会する本イベントだからこそ味わえる黄色い声を体感したいとリクエストすると、その声に応えるように会場中から歓声が。念願の歓声を浴びた詩羽は、「すごい! これがアイドルか! 思ったよりもすごい! 嬉しいです。こんな経験なかなかないので……。最後まで楽しんでもらえたら嬉しいです!」と貴重な体験に感動している様子だった。
続いては、「金剛力士像」。堂々とそびえ立つ金剛力士像を背景に、ダンサーを携えてクールに歌唱。また、童話をテーマに展開されていく物語性が特徴の「赤ずきん」では、ステージ上で狼とのショートドラマのような光景を繰り広げるなど、目も耳も飽きることがない“水カン”ならではのライブの楽しみ方が随所に散りばめられていた。TikTokでも大流行した「エジソン」では、「皆さん踊りながら楽しんでいきましょう!」とエネルギッシュにアナウンス。これには、観客がペンライトを振る腕も一段と高くなる。眩しいほどの笑顔を見せながら音に乗る詩羽は、会場中に溢れるポジティブなバイブスの源と化していた。
詩羽は「私は自分の好きな格好でみんなの前に立つことを大事にしていて、自己肯定感を高めて、みんなで自分のことを好きになっていこうぜっていうのを伝えているので。今日お会いできて嬉しいです。ありがとうございます」と話す。この日の詩羽の衣装は、マゼンタやラベンダーのカラーをベースにしたポップな装い。いつも自分らしくあることを根底に置く彼女だからこそ伝えられるこの言葉には、会場中から拍手が贈られていた。続けて「マーメイド」、大きな招き猫の風船型モニュメントをステージに用意して盛り上げた「招き猫」を歌い上げ、多様な声色を用いながら色とりどりの楽曲を楽しませた詩羽。最後に「今日は夜まで最後まで楽しんでいってください! みんな愛してるよ! ありがとう!」と告げた彼女の太陽のように明るくあたたかなエネルギーは、初めて見る人の心にも一つ大きな感情を残していったに違いない。
突如、地を這うように響く重低音のベースとコーラス。真っ赤なスタジアムジャンパーで登場したのは、アメリカ出身のシンガーソングライター ジョン・バティステだ。頭に装着したヘッドフォンからは彼の顔の2倍もの長さがあるアンテナが伸び、登場早々にポップで自由に音楽を楽しむ独自の世界観を演出していた。序盤からハンズアップを促し、会場を一気に洋楽のムードに包み込むジョン。幸せそうな笑顔を会場中に伝播させていく彼の歌声には、序盤から声援と拍手が溢れていた。会場も熱気が増し、彼がジャケットを脱いたタイミングで、NewJeansのメンバー5人が飛び入り参加。今年6月にリリースされ、NewJeansらが参加した「Be Who You Are(Real Magic)」を一緒に歌唱するサプライズで喜ばせた。
ボンゴの音色が象徴的な「Worship」では、轟く重低音に自ずと身体を揺らす観客に時折手を振りながら、鍵盤ハーモニカを吹いたり、一緒に歌い出したかと思えばピアノを弾いてみたりと、音楽の本質を背中で語っているようにも思えたジョン・バティステのステージ。楽曲が終わっても観客の歌声とピアノの伴奏は余韻に任せてしばらく続き、それに合わせて今度は彼が踊り出す。鍵盤の上で踊るように奏でるピアノの技巧を見せた後、ゆったりとしたトーンで弾き始めた「What A Wonderful World」では、観客のカラフルなライトも横揺れ……かと思えば、今度は鍵盤ハーモニカを演奏しながら、アリーナの観客とハイタッチを交わして進んでいく。歌うのではなく、鍵盤ハーモニカの演奏で主旋律を奏でていく姿が斬新であり、普段歌やダンスを中心としたライブパフォーマンスを見ることが多い人にとってはある意味固定概念を覆す時間でもあった。メインステージに戻ると今度はアルトサックスを吹き、それをピアノの屋根に置いて、再び鍵盤に指を走らせる。通常では目撃できない音楽体験を織りなし、去り際までお茶目なジョン・バティステがいなくなったステージには、しばらくの間、心地よい余韻が充満していた。