UNISON SQUARE GARDEN「いけない fool logic」格別の輝き アニメタイアップからライブまで熱烈な歓迎を生むバンドの充実

ユニゾン「いけない fool logic」レビュー

 UNISON SQUARE GARDENの人気がますます拡大している。ワンマンライブを開催すればアルバム曲でもすごく盛り上がるし、フェスに出演すれば多くの観客を集め、魅了する。ライブ会場に行く度に、熱量の高いファンの数が着実に増えていることを肌で感じてはいたが、それにしても、ここ1~2年の勢いは特にすごい。個人的には、別業界で働く友人から「UNISON SQUARE GARDENっていいね」「今度初めてライブに行くことにした」と言われる機会が複数回あったことが、人気拡大を実感する大きな要因となった。

 せっかくだから友人たちに話を聞いてみたところ、たまたま行ったフェスで演奏技術の高さに驚かされたという人もいれば、『THE FIRST TAKE』での「オリオンをなぞる」「kaleido proud fiesta」がきっかけで他の曲を聴くようになったという人も、『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)に出演した斎藤宏介(Vo/Gt)のスマートかつユーモラスなトークに惹かれたという人もいて興味深かった。そして共通して話題に上がったのが、アニメ『ブルーロック』のOP主題歌「カオスが極まる」の存在だ。バンドの演奏シーンをメインとしたMVと『ブルーロック』とコラボしたアニメーションMVは、累計再生数1360万回を記録。さらにストリーミングでの再生数も「シュガーソングとビターステップ」を凌駕しそうな勢いで伸びていたりと、新たな代表曲になりつつある楽曲である。今年7月まで開催されていたツアー『TOUR 2023 “Ninth Peel”』で披露された際、オーディエンスから熱烈に歓迎されていたのも記憶に新しい。おそらく、「カオスが極まる」を生で聴くことを楽しみにしてライブに足を運んだ新規リスナーも多かったのではないだろうか。

UNISON SQUARE GARDEN - オリオンをなぞる / THE FIRST TAKE
UNISON SQUARE GARDEN - kaleido proud fiesta / THE FIRST TAKE
UNISON SQUARE GARDEN「カオスが極まる」ブルーロック Animation MV
UNISON SQUARE GARDEN「カオスが極まる」MV

 なお、「カオスが極まる」も収録されている最新アルバム『Ninth Peel』は、Billboard JAPANおよびオリコンのアルバム週間チャートで首位を獲得した(※1、2)。歌詞の随所から読み取れるようにメンバー自身は「ランキングの上位を狙うことに興味はない」というスタンスのようだが、「CDを買った人が一番いい思いをするように」とパッケージを充実させる取り組みやバンドのスタンス、楽曲そのものがリスナーから評価され、数字に繋がっていることは間違いないだろう。

 加えて、XIIXのメンバーとしても活躍する斎藤、THE KEBABSの活動もありつつ、楽曲提供のオファーも尽きない田淵智也(Ba)、最近YouTubeでドラム解説動画を始めた鈴木貴雄(Dr)と、メンバーはそれぞれに強みを活かしながらフィールドを広げていて、リスナーにとっては、3人の音楽家としての実力の高さ、この3人の集まりであるUNISON SQUARE GARDENというバンドの凄まじさを実感させられる日々が続いている。対外的な評価と対内的な状況に変なズレがないという意味で健康的な空気の中、19thシングル『いけないfool logic』が9月27日にリリースされた。今年7月のライブレポートでつい先走って「来年は20周年だ!」と書いてしまったが、その前に、楽しいシングルの到着だ。

 表題曲「いけないfool logic」は、10月2日に放送が始まったアニメ『鴨乃橋ロンの禁断推理』のOP主題歌として制作された。『鴨乃橋ロンの禁断推理』は、天才的な推理力を持つ青年・鴨乃橋ロンと、捜査一課でなかなか活躍できずにいる刑事・トトこと一色都々丸がバディを組み、様々な事件を解決していくミステリ活劇。ロンは世界最高峰の探偵養成学校の優秀な生徒だったが、ある事件をきっかけに、探偵として致命的な欠陥を抱えていることが判明。失意に沈み、5年間自宅に引きこもっていたロンをトトが訪ねたことをきっかけに、止まっていた時計の針が動き出す。奇しくもトトはロンの欠点を補う存在であり、2人で1つの凸凹探偵コンビが誕生するのだ。

 9月中旬時点で公開されているアニメのティザーはいずれも重厚な雰囲気だ。あの有栖川有栖が「ガチの本格ミステリ」と評している(※3)ように、原作の漫画の一番の見どころはトリック解明の過程。一方、トトのまっすぐな性格に救われるロン、ロンに影響されて刑事として腕を上げていくトトの人間的成長が描かれていたり、コミカルなシーンも少なくなかったりと、終始シリアスなトーンというわけではない。おそらくアニメも、原作同様カラフルな魅力を持つ作品になるのではないだろうか。

 主題歌制作にあたってはアニメの監督から「暗い必要はない」とオーダーがあり、結果、“バンド史上最もハッピーな楽曲”が生まれたのだそう(※4)。聴いてみると確かに、“史上最もハッピー”という言葉がぴったりのかなり楽しい曲だった。ジャジーなノリとともにスウィング&シンコペーションするリズム。発音のニュアンスで変化をつけながら跳ね回るメロディ。「kaleido proud fiesta」、「恋する惑星」に引き続き伊藤翼との共同編曲で実現した、ストリングスやホーンとともに奏でる華やかなサウンド。まるで舞踏会にでもやってきたかのようなウキウキ感だ。斎藤は最初の一節を歌い終えたあと、テンション高く「ヘイ!」と言っている。全体的にルール無用の弾け具合で、言葉の面では(曲名含め)有名なフレーズをもじったり、四字熟語を分解したりと田淵らしい手法を用いながら遊んでいるし、構成の面でも、突如別次元へワープするような展開を設けるなど、かなり大胆な作りになっている。とにかく濃くて目まぐるしい楽曲を一つに束ねてみせるアンサンブルとアレンジの構築力、3人の腕前に脱帽するばかりだ。

 〈君の心が必要で 僕の心は執拗だ/全部をひっくり返しちゃうような 狂騒をくれよ!〉という歌詞は、ロンとトトの関係性を彷彿とさせるもの。タイアップソングとして歌い出しから的確であり、信頼と実績を重ねてきたソングライターによる見事な仕事という感じがした。同時に、パートナーに任せるべきところを任せつつ、自分は得意分野に専念し、存分に力を発揮するというロンとトトの在り方は、UNISON SQUARE GARDENの在り方とも重なるもの。今まさに充実の季節を迎えている3人によって鳴らされる、明るく楽しく複雑でスリリングなアンサンブルは、これぞユニゾンの真骨頂というべき格別の輝きを放っている。躓いたら終わりと恐れたり、お先真っ暗と嘆いたりするのではなく、小粋なプランBとともにカオスな世界すら楽しもうというユニゾン的人生観が表れた歌詞も、起伏に富んだメロディに気持ちよくフィット。「賽は投げられた」や三頭政治で知られるガイウス・ユリウス・カエサルがデザインされたシングルのアートワークにも、つい意味を見出したくなってしまった。

UNISON SQUARE GARDEN「いけないfool logic」MV

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる