TERU、GLAYらしさを追求する先にあるのはファンの笑顔 さらに深まる歌やバンドとの向き合い方を語る

GLAY TERUインタビュー

 GLAYからニューEP『HC 2023 episode 2 -GHOST TRACK E.P-』が届けられた。“相棒(=ファン)”をテーマにした「Buddy」(作詞・作曲:TAKURO)、モバイルゲームアプリ『ブラッククローバーモバイル 魔法帝への道 The Opening of Fate』のために書き下ろした「Pianista」(作詞・作曲:HISASHI)など、コロナ禍で制作された全7曲を収録。61stシングル『HC 2023 episode 1 -THE GHOST/ 限界突破-』の続編として、音楽的なトライとGLAYらしさがバランスよく共存した作品となっている。11月からスタートする全国アリーナツアー『GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost Hunter-』への期待値も一層高まること間違いなしだ。

 リアルサウンドではTERUにインタビュー。今年3月から6月にかけて行われた全国ホールツアー『HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost of GLAY-』の手ごたえ、本作の収録曲などについて語ってもらった。(森朋之)

“やればやるほど上手くなる”ことを実感

GLAY TERU(写真=秋倉康介)

——まずは全国ホールツアー『HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost of GLAY-』について聞かせてください。ライブ本編はMCもほとんどなく、クールなステージ構成でしたが、手ごたえはどうでしたか?

TERU:ツアーのリハーサルに入る前にTAKUROから「終始クールで」という話があったんですよ。今までのちょっとしたユーモアを排除するというか。そういった見せ方は自分としても楽しみだったんですけど、ツアーが進むにつれて、言い出したTAKUROがくだけはじめてきて(笑)。最後のほうはみんなで笑顔になれるようなライブになったのですが、「まさしくこれがGLAYのライブなんだろうな」と思いましたね。どこかクールになりきれない、GLAYの良い部分が見えたというのかな。

——演奏も本当に素晴らしかったです。

TERU:この3年間は、コロナの影響で表現する場所がない、ツアーもできない、レコーディングで集まることもできないという状況があったじゃないですか。それでもGLAYはリモートでレコーディングをやってきたし、配信ライブのリハーサルもデータをやり取りしながら続けてきて。常に演奏する、歌うという状況を作ってきたし、しっかり音楽と向き合えたことが自分たちの実力を少しでも上げられた要因なんじゃないかなと思っているんです。GLAYはずっと活動し続けているバンドなので、これまで自分たちと向き合う時間がなかなか取れなかったんですよ。JIROも「こんなにベースを弾いたのは初めてかも」と言ってたし、メンバー全員、音楽やGLAYに対する向き合い方も深くなって。「もっと上手くなりたい」という意欲があったんじゃないかな。

——TAKUROさんもステージで「50過ぎてもバンドって上手くなるんだぞ」とコメントしてましたね。

TERU:やればやるほど上手くなるんだなっていうのは、すごく感じています。配信ライブもいい経験になりましたね。楽器やボーカルの音をラインでつなげて生で配信するためには、技術的にさらに緻密なプレイをしなくちゃいけないので。TAKUROは制作のスタイルも変わってきたんですよ。以前はギター1本、ピアノ1本で曲を作っていたんですが、パソコンでデモ音源を作るようになって。この3年間はまったく無駄ではなくて、自分たちにとってはすごく良い勉強になりましたね。

——TERUさんのボーカルにも圧倒されました。歌に対する向き合い方も変化しているんでしょうか?

TERU:声の出し方は変わってきていると思います。ずっとヘッドフォンをしながら歌っていて、そのなかで自分の体の使い方、声の反響の仕方も今までとは違ってきたんですよ。これまでずっと歌ってきて、調子がいいときの感覚だったり、調子が良くないときにどう折り合いをつけるか、経験上積み上げてきたものがありましたが、この3年間で喉の仕組み、体の仕組みを改めて勉強する機会ができて。体の状態も定期的にチェックするようになりました。今は高い音がより出しやすくなったし、「歌、すごかったね」と言ってもらえることも増えました。

——では、ニューEP『HC 2023 episode 2 -GHOST TRACK E.P-』について。1曲目の「Buddy」は、ホールツアーでも披露していましたが、今のGLAYのポップな側面がしっかり感じられる楽曲ですね。

TERU:ここ数年は、ファンの方々にどういう音楽を届けるのがGLAYらしいのか、ということをさらに突き詰めるようになってるんですよ。僕らはロックに憧れて上京してきたバンドですけど、当時から日本のポップミュージック全般に触れていたし、特にTAKUROは幅広く聴いてきた。自分のフィルターを通して、その頃に聴いていた音楽を表現しているんじゃないかなと思いますね。「Buddy」もそうで、“良質なポップソング”というところで全員が団結して作り上げた曲じゃないかなと。TAKUROは先ほどお話したような制作面の変化もあってデモ音源を作るのがだんだん上手くなっていて、この曲も最初の段階からかなり完成された状態だったんですよ。ただ、デモはTAKUROが歌ってるので、もっと重みがありましたけどね(笑)。それを自分で歌うわけですけど、TAKUROも本当にいい歌を歌う人なのでデモの歌に流されないようにしながら、自分らしさをどう出していくかを考えながらレコーディングしました。

——“相棒”をテーマにした歌詞についてはどんな印象がありますか?

TERU:長く寄り添ってくれたファンの人たちに対する思いですよね。いろんなものが選べるなかで、GLAYの音楽を選んでくれて、大切な時間をライブに費やしてくれて。みなさんに向けた感謝の気持ちをしっかり言葉にして伝えたいという歌詞じゃないかなと。こうしてファンの人たちとの関係性をはっきりと曲の中で言葉にしたのはおそらく初めてじゃないですかね。みんな大変な状況のなかでもライブに来てくれて、僕らを支えてくれましたから。

——今回のEPにも多彩な楽曲が収められています。「Pianista」は尖ったポップセンスが反映された楽曲。

TERU:前回のシングルに入っている「限界突破」もそうなんですけど、『ブラッククローバー』のゲームアプリの楽曲のオファーをいただいて。「Pianista」もそのときに作った曲なんですよ。当初は前作に収録する予定だったんですけど、「この曲の世界観はアリーナツアーに合うよね」ということになって、今回、収録することになりました。この曲を仕上げるにあたって、アレンジャーとしてサクライケンタくんに参加してもらったんですけど、もともとはHISASHIが「この人にお願いしたいんだけど、どう思う?」と、彼が関わった楽曲をいくつか送ってくれたんですよ。それがめちゃくちゃ良かったのでいいんじゃないかなと。GLAYらしからぬ、でも、しっかりGLAYの曲になったんじゃないかなと思います。アレンジも凝っているので、プレイするのもきっと楽しいんだろうな。でもリハーサルに入ったらみんな「うわ、難しい」とか言いそうですけど(笑)。

GLAY / Pianista

——“初めまして”のクリエイターとも積極的に組むことで、GLAYの音楽性が広がっている。

TERU:そうですね。やりたい人とやるというスタンスはあると思うし、最近はその人にこちらが合わせていく傾向もあって。たとえばミュージックビデオに関しても、監督やディレクターに対して、僕らから「こうしたい」と言うことは一切ないんです。あくまでもその人のやりたいことを尊重するし、そうやって新しいGLAYを引き出してもらえたらなと。アレンジャーなり監督なり、その人が作り出す世界を僕らが楽しむという感じですね。ただ「Pianista」のMVに関してはHISASHIがかなりこだわりを持って関わってました。

——新しいGLAYを引き出すことで、これまでとは違うリスナーに届けたいという思いもありますか?

TERU:いや、そこまでは考えてないんじゃないかな。デビューして10年くらいだったら、自分たちの音楽をもっと遠くへ届けたい、新しい人たちに聴いてほしいということも考えていたでしょうけど、今はそうじゃなくて。自分たちが新鮮に楽しみたいというのがあり、あとは“応援してくれてる人にいかに楽しんでもらうか”というところに気持ちが向いている気がしますね。

GLAY TERU(写真=秋倉康介)

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