VTuberプロジェクト Blue Journey、悩みや葛藤から生まれた肯定のメッセージ 普遍的な共感を集めるホロライブの新しい物語
中盤以降も同様で、冒頭のピアノリフに引き込まれているうちに徐々に切ない疾走感が溢れ出す、さくらみこ・宝鐘マリン・尾丸ポルカの「君になりたかった」、サビでシナジーのある優しげな歌声が重なる猫又おかゆ・白銀ノエル・天音かなたによる「astro」、四つ打ちのダンサブルなビートと切ない歌がひとつになった白上フブキ・兎田ぺこら・雪花ラミィの「ラブソングはいらない」、ストリングスとピアノに切ない3人の歌声が絡む湊あくあ・天音かなた・雪花ラミィによる「あの日の僕らへ」など、楽曲によって音楽性は変化している。けれども共通しているのは、「負の感情を吐き出すだけの楽曲ではない」ということ。むしろ「苦悩や葛藤していた日々も含めて自分の一部」と肯定するような雰囲気だ。
メンバーの歌声も普段のアイドル曲とは大きく違っている。いつになく感情的な歌声や優しげな目線を感じる歌声など、このプロジェクトだからこその繊細な歌唱表現が楽しめる。
アルバム後半は、大人っぽさを感じさせる3人の歌声や語りパートが印象的な大神ミオ・猫又おかゆ・鷹嶺ルイによる「夏を許せない」、わずかに音響系エレクトロニカ的な要素なども取り入れて主人公の心の奥底に潜っていくようなアキ・ローゼンタール・白上フブキ・鷹嶺ルイの「泡沫」などが続き、10曲目にはプロジェクトの第一弾楽曲としてリリースされた湊あくあ・宝鐘マリン・角巻わためによる「僕は独りだ」も収録。この楽曲は、普段のアイドル像とは異なる感情が表現された楽曲でありながらも、ポップミュージックとしての王道感も感じられる、Blue Journeyを象徴するような楽曲。安定した歌唱力を持つ3人がいつになく心の叫びを代弁するような歌を披露するダイナミックな感情表現にハッとさせられる。
続くアキ・ローゼンタール・大空スバル・大神ミオによる「光の軌跡」は、コーラスも含めて声が幾重にも重ねられた〈共感だけが言葉じゃない/同調だけが理解じゃない〉という終盤のパートもひときわ印象的な楽曲。普段は元気いっぱいな大空スバルの〈「私は諦めない」〉というフレーズに驚いた人も多いことだろう。過去の出来事や出会った人への後悔を抱える主人公たちが再び歩き出していくような各曲を通して、アルバム全編にも1つのストーリーがおぼろげに浮かび上がってくる雰囲気があるから不思議である。
そうした作品のエンドロール的な役割を果たしているのが、癒月ちょこ・大空スバル・さくらみこ・常闇トワ・沙花叉クロヱによる12曲目「サザンクロス」だ。この楽曲はアルバムの中で最も爽やかで温かい余韻を感じる楽曲で、〈悩む時間も眩しくって/離したくないものになって/季節が変わり葉が落ちても/続いてゆくきっと〉と、ここまで描かれてきた楽曲の主人公が再び歩き出す様子が描かれる。〈進む道はみんな違うけど/「さよなら、またあした」〉という最後のパートは、ホロライブを象徴する全体曲「Shiny Smily Story」の歌詞〈それぞれ違ったココロで走れGO〉のBlue Journeyバージョンに聴こえなくもない。作品の余韻としては、爽やかで、そっと誰かの背中を押すようなものになっている。
全編を通して言えるのは、このプロジェクトだけの「新しいホロライブ」が楽しめるということ。それはライブも同様で、9月13日に行なわれた『Blue Journey 1st Live「夜明けのうた」』は、従来のMCパートに代わってメンバーによる朗読が行なわれ、音楽以外の要素も含めて曲の登場人物の心情が描かれていた。また、このライブではアルバムの初回限定盤/UNIVERSAL MUSIC STORE盤に13曲目として収録されていたインスト楽曲「The Bonus Track」に歌をつけた、Carlos K.の作詞作曲による新曲「水たまり」も披露。この楽曲は、『夜明けのうた』で描かれた人物が、自分の過去に区切りをつける様子が明確に描かれた楽曲になっているのが印象深い。
Blue Journeyは、ホロライブのリスナーにとってはメンバーの新たな一面を見られる機会であり、ホロライブを初めて知る人にとっては、誰しもが一度は経験したはずの「いろんな場所にいる、どこかの誰かの物語」への共感によってグループに触れるきっかけになることだろう。迷いや後悔を経験するからこそ、その時間はいつかキラキラと眩しい思い出になる。『夜明けのうた』は、そんな「青春の旅」の魅力が詰まった1stアルバムだと言えそうだ。
■リリース情報
Blue Journey 1st Album『夜明けのうた』
9月6日 (水)発売
<商品形態>
◯初回限定盤【CD+BOOK】
価格:¥4,180(税込)
ジャケットイラストはイラストレーターの”あめのじゃく”が担当。
52Pアートブックにはアルバムジャケットのメンバーのソロカットとプチインタビューを掲載。
特典シリアルコード封入。
◯通常盤【CD Only】
価格:¥3,300(税込)
特典シリアルコード封入。
◯UNIVERSAL MUSIC STORE盤【CD+BOOK+GOODS】
価格:¥11,000(税込)
ジャケットイラストはイラストレーターの”あめのじゃく”が担当。
LPサイズのボックス仕様。
52Pアートブック(初回限定盤付属と共通)にはアルバムジャケットのメンバーのソロカットとプチインタビューを掲載。
25cm×25cmのジャケットイラストアクリルスタンドを封入。
特典シリアルコード封入。
アルバム購入リンク:https://lnk.to/BJ_YU_EC
楽曲配信リンク:https://lnk.to/BJ_yu
<収録楽曲>
01 ツキノナミダ
歌唱/角巻わため・獅白ぼたん・沙花叉クロヱ
02 また傷に触れる
歌唱/不知火フレア・常闇トワ・尾丸ポルカ
03 不純矛盾
歌唱/戌神ころね・兎田ぺこら・姫森ルーナ・博衣こより
04 君になりたかった
歌唱/さくらみこ・宝鐘マリン・尾丸ポルカ
05 astro
歌唱/猫又おかゆ・白銀ノエル・天音かなた
06 ラブソングはいらない
歌唱/白上フブキ・兎田ぺこら・雪花ラミィ
07 あの日の僕らへ
歌唱/湊あくあ・天音かなた・雪花ラミィ
08 夏を許せない
歌唱/大神ミオ・猫又おかゆ・鷹嶺ルイ
09 泡沫
歌唱/アキ・ローゼンタール・白上フブキ・鷹嶺ルイ
10 僕は独りだ
歌唱/湊あくあ・宝鐘マリン・角巻わため
11 光の軌跡
歌唱/アキ・ローゼンタール・大空スバル・大神ミオ
12 サザンクロス
歌唱/癒月ちょこ・大空スバル・さくらみこ・常闇トワ・沙花叉クロヱ
13. The Bonus Track(instrumental)
※13曲目The Bonus Track(instrumental)は初回限定盤、UNIVERSAL MUSIC STORE盤にのみ収録。