9mm Parabellum Bulletが進む「Brand New Day」とは? バンドの原点と今、9年ぶりの武道館公演――菅原卓郎がすべてを語る
歌詞は「今まで頑張ってきたことが報われたらいいな」って
――そうやって9mmが9mmをより楽しめるようになってるっていうのが、すごく大きな変化だなって思います。とてもいい状態で、今19周年を迎えているんだなと。
菅原:「演奏が楽しい」というのが、やっぱり大きいですね。それをライブでできるのが今は本当に喜びだから、それを共有できてることは強く感じます。
――そんななか新しいシングルが出るわけですが、「Brand New Day」、これまためちゃくちゃいいですね。
菅原:ありがとうございます(笑)。
――簡単に「原点回帰」って言葉を使うのは変ですけど、初期みたいな疾走感もありつつ、今のお話にあった通り、そこから広がってきている今の9mmもちゃんと込められている曲だと思いました。これはどういうふうにできていった曲なんですか?
菅原:実は、最初は別のシングル候補が2曲あったんです。すごく激しくてハードコアのやつと、ちょっと歌謡ロック的な色が濃い曲。どっちも完成度が高かったから、どっちをシングルにするか考えていたんですけど、「これが19周年のシングルか?」ってなって(笑)。そこでスタッフがすでにあった曲を掘り出してくれて、そのなかに、この「Brand New Day」の元になっている曲があったんです。バンドのイメージ的にも、9mmの持っているこういう疾走感のある部分のほうが、ただ激しいというよりも大きいものなのかもねって、曲を聴き直した時に滝も言っていて。それを19周年で素直に出せるのはいいかもしれないって、すんなり決まりました。
――じゃあ、もしかしたら全然違うものがシングルとして出ていたかもしれなかったんですね。
菅原:ちょっと荒くれちゃってたかもしれない(笑)。曲も出来上がってて、それはそれですごく面白いんだけど、たしかに19周年の節目――一般的には節目っぽくないけど(笑)――そこで何かを表明することにはならないという感じでもあったから。メモリアルなアニバーサリーに出すと言っても、歌詞は(周年にフォーカスせず)曲に合っていればいいやと思って書き始めたんだけど、結果的にバンドの歴史とか聴いている人が「今まで頑張ってきたこととかが報われたらいいな」っていうメッセージの歌詞になったから、それもちょうどよかったのかな。自然と呼ばれて言葉が出てきたようなところもあったから、19周年の節目に聴いてもらうにはすごくちょうどいい曲になったかなと思います。
――単に振り返るとか「今までこうやってきたよね」という話ではなくて、まさに「Brand New Day」、明日に向かって突き抜けていく感じが出ているのがいいですよね。
菅原:そうですね。「達成した」っていう感覚は、常にそんなにないから。滝はしょっちゅう「今日は史上いちばんいい“One More Time”を演奏した!」とか「今日の“Black Market Blues”は本当にめちゃくちゃよかった!」とか更新しているんですけど(笑)。だから、まだまだと思っているところがやっと曲にもなったかなって気がします。
――この曲はすでにデモがあったということですけど、いつぐらいの時期に作ったものだったんですか?
菅原:いつぐらいだろう? 滝がいっぱい曲を作っていた時期で、『DEEP BLUE』の頃とかですかね。でも、これまでにもそういうことが結構あって、そのアルバムでは採用されなくても、自分たちの気持ちが変わるとしっくりきたというか。音楽の面白いところですよね。
――制作はスムーズにいったんですか?
菅原:今回はスムーズだったんじゃないかな。デモは途中までしかできてなかったのですが、たまたま知り合えたRyo'LEFTY'Miyataくんが、今回滝のアレンジを手伝ってくれて。彼がエンジニアみたいになって、滝の演奏を録音したり、オペレートしてくれたり、そこにベースを入れてくれたりして。エンジニアの人にいてもらいながら自分がトラム叩いて、戻ってきてベース録って、ギター弾いて……滝が作曲していちばん調子いい時というのは、そういう時で。『Dawning』の頃はそういうふうにやっていたんですけど、それを今回はRyoくんとやっていたなって、作業を見ながら感じてました。フレーズとかもスルスル出てくるから、そういうふうに楽しみながらアレンジできたのも、たぶんこの曲の風通しがいいところに関係あると思います。
――滝さんにとっても、そうやってコミュニケーションをしながらやっていくほうがアイデアも出てくるみたいな感じなんでしょうね。
菅原:あと、Ryoくんはアレンジ能力が本当に豊富な人なので、滝が「こんなふうにしたいんだけどなあ」って言ったことにもすぐ反応して、フレーズを提案してくれていたから。たぶん、ふたりとも楽しかったんじゃないかなって思うんですよね。
――たしかに、最終的に仕上がった音を聴いても、抜けのいい感じがめちゃくちゃしますよね。
菅原:普段は弾かないようなフレーズがギターにもベースにもちょこちょこ入っているところもあって、それは普段とは違う方と一緒に作業したことが表れているのかなと思います。
――そうですよね。パッと聴いた感じは懐かしい9mmという感じももちろんあるんですけど、よくよく聴いていくと、いろいろな部分で「いや、今までの9mmにはなかったよ」と思うフレーズがたくさん入ってる曲だなと思います。
菅原:普通の曲の構成とも違うし。Aメロ→Bメロ→Cメロと進んでいくと、謎のメロが出てくるっていう(笑)。歌詞と照らし合わせると、そこで記憶が巡っているような、ちょっと時間軸が違うものになっているんだけど、そういうところにここぞとばかりに変な音をいっぱい入れたり、レコーディングの時も全然守っている感じではなく、完全に振り切って「変な音出てんなあ!」という感じでやれたのもよかったですね。