さだまさし、普遍的な名曲に吹き込まれた新たな息吹 コンセプトの異なる4公演で楽しませるデビュー50周年ツアーレポ

さだまさし、デビュー50周年ツアーレポ

 デビュー50周年を迎えたさだまさしが、ニューアルバム『なつかしい未来』を携え、全国ツアー『さだまさし 50th Anniversary コンサートツアー2023 〜なつかしい未来〜』を開催中。6月から8月の東京・名古屋・大阪の公演は、以下の4つのスタイルで行われた。

一夜「グレープ ナイト」(50年目を迎えたさださまし、吉田政美によるフォークデュオ・グレープでの公演)
二夜「工務店ナイト」(さだのツアーバンド「さだ工務店」によるステージ)
三夜「管もナイト」(「さだ工務店」と管楽器による編成)
四夜「弦もナイト」(「さだ工務店」とストリングスによる編成)

 つまりは一つのツアーで、セットリストと編成がまったく異なる4公演を準備するということだが、そのこと自体がすでに尋常ではない。“三夜”は倉田信雄が中心となってセットリストが構成され、“四夜”は渡辺俊幸が弦の編曲を担うなど、さだの活動を支えてきた音楽家たちがしっかりついているとはいえ、バンドメンバー、そして、さだ自身への負担も相当なものだろう。その分ファンにとってはたまらない、まさにアニバーサリーなツアーとなった。

 筆者が観たのは、四夜。バラードを中心に、“これぞ、さだまさし”と称すべきステージが繰り広げられた。

 オープニングは、「序曲『未来へ』」〜「北の国から」組曲。編曲を担当した渡辺俊幸の指揮のもと、「さだ工務店」メンバーの藤堂昌彦を中心にした12編成のストリングス隊(+コントラバス)が重厚にしてノスタルジックな旋律、アンサンブルを響かせる。さだはエンディング近くになってステージに登場。「北の国から」のメロディを奏で、会場を埋め尽くした観客から大きな拍手が送られた。

 四夜のセットリストは、さだ曰く「ライブの本編の最後、アンコールを経験した曲ばかり」。「主人公」「奇跡2021」と冒頭から50年のキャリアを象徴する名曲が披露された。「主人公」は、40周年のタイミングで行われた「国民投票」(ファン投票)で1位を獲得するなど、絶大な支持を得ている楽曲だ。1978年のアルバム『私花集』に収録(10年後の1988年にシングルカット)されたこの曲は、“あなたの人生の主人公はあなた”というメッセージを込めたバラード。素朴にして奥深いメロディ、ストリングスの豊潤な音色が響き合い、普遍的な名曲に新たな息吹が吹き込まれる。「主人公」に限らず、ファンの間で支持されている楽曲は、「関白宣言」「雨やどり」などのヒット曲よりも、アルバムの収録曲のほうが多い。この日もさだは「発表してから時間をかけて評価が上がる曲が多い。できたらリリースしたときに買ってほしい(笑)」と笑っていたが、この傾向は言うまでもなく、ファンがじっくりと作品と向き合い、長きに渡って聴き続けている証左だろう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる