若林正恭、ゆりやんレトリィバァら芸人はなぜラッパー化するのか お笑いとラップに共通する“三要素”

お笑いとラップの共通点「瞬発力・洞察力・自虐」

 ラッパーの晋平太はNSC(吉本総合芸能学院)で特別授業をおこなった際、両ジャンルの共通点についてこのように語っている。

「ラップをする上で必要な瞬発力とか洞察力とか自虐とか、お笑いに近いいろんな要素がある」「自分の短所をお金に変える職業は、芸人とラッパーくらいだ」(※2)

 確かに、お笑いは自分のダメなところなど欠点を笑いに変えることも多い。そのダメさが特殊であればあるほど、ウケる。それはラップも同じだという。そんな自分であってもステージでマイクを持てば、成り上がっていける。生き様を表現するというアティチュードの部分で通じるものがあるのだ。

 また晋平太が言う「瞬発力」もキーワードだ。お笑い芸人は、バラエティ番組などで素早くておもしろい「返し」が求められる。同じようにラッパーたちもMCバトルでは、その場で、相手の核心をどれだけ突けるかが勝敗を分けていく。お笑い、ラップはどちらも「即興性」のうまさが評価軸となる(もちろんあらかじめなにを言うか仕込んでおく「ネタ」の良さもあるが)。

プロのラッパーも舌を巻く、カミナリ・たくみのポテンシャル

 その点でクローズアップするべきは、『フリースタイルティーチャー』でも屈指の実力を誇った石田たくみ(カミナリ)だろう。漫才時では切り裂くような声の質と茨城弁をまじえた強烈なツッコミを見せているが、その持ち味はMCバトルの場でもまったく損なわれることがなかった。同番組で彼を指導したKEN THE 390は「ちゃんとラップしながら一発ツッコむスタイルが超良かった」とたくみの強みを評価。たくみとMCバトルのスパーリングをおこなったラッパーの掌幻は「どこに投げたらどう返ってくるか試していた」とその実力を探った上で、「熱量で行ったら熱量で返してツッコミでバラされた」とどんな技でも対応できる彼のポテンシャルついて話した。

 菊田健太名義でMCバトル大会『戦極MC BATTLE』へ出場したことがあるアルコ&ピースの酒井健太は「とろサーモンの久保田(和靖)さんとかもやってますけど、すごい上手だなって思いますし。ただ、ラップって意外とお笑いに落とし込むのは難しいなって僕は思っていて。上手すぎても笑えないし、下手すぎてもグダグダになるし。もっと浸透していれば分かりやすいんでしょうけどね。今はパイセン(先輩)たちと一緒にその裾野を広げる作業をしてますね」とお笑いとラップを組み合わせることの難易度の高さについて話しているだけに、近年、ラップの実力が認められている芸人たちのすごさは余計に際立つ(※3)。

 生き様をあらわすところ、多彩な言葉を操ってツッコミを入れたりオチをつけたりするところ、瞬発力が求められるところ、さらにパンチラインを意識したり、言葉を繰り出す際のリズム感やフロウ感を大切にしたり、オーディエンスをいかに納得・共感させるかなどなど、お笑いとラップには共通点が多々ある。今後も両ジャンルの関係性は強まり、より大きなムーブメントが誕生するのではないだろうか。

※1 https://www.fujitv-view.jp/article/post-416437/
※2 http://news.yoshimoto.co.jp/2016/10/entry58062.php
※3 https://news.yahoo.co.jp/byline/larrytoda/20170310-00068582

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