梶裕貴、木村昴、津田健次郎……声と歌、そして演技が新たなキーワードに? 人気声優の最新傾向を探る

 アイ・エヌ・ジーによる「渋谷トレンドリサーチ」では、流行に敏感な関東の男子高校生・女子高校生を対象に「2023年夏の最新トレンド」をテーマに調査。その結果を、ランキング形式で発表している(※1)。

 「いま一番好きな俳優(男性・女性)は?」「いま一番好きなアーティスト・アイドルは?」「流行っているポーズは?」「いま流行っている言葉は?」など様々な調査テーマがピックアップされているが、この記事で「一番好きな声優は?」について記していく。

 前提として、この調査だけにとどまらず、雑誌やウェブメディア、テレビ番組などを通して、声優の人気を示したアンケートや調査結果が数多く発表されてきた。2000年代後半から2010年代を通じ、それまで深夜アニメとしてテレビを通じて好まれていた作品が、インターネットカルチャーのひとつとして動画サイトを通して広まり、サブスクリプション型動画配信サイトの登場により本格的に定着するようになり、10年以上前に一部で人気を誇っていたアニメカルチャーは、現在では世界中に大きなファンダムを形成するほどの影響力を持つようになった。

 このような経緯もあり、テレビでは特集番組がいくつも組まれ、以前には考えられないほどに声優の知名度も上がり、日本国民の多くが名前を知る人気声優が幾人も生まれることにもなった。

 こうした背景を踏まえ、前述のランキングを見てみよう。

1位 梶裕貴
2位 木村昴
3位 津田健次郎
4位 花江夏樹
4位 宮野真守
6位 江口拓也
7位 中村悠一
7位 古谷徹
9位 岡本信彦
9位 武内駿輔
9位 花澤香菜

 トップ10に名を連ねたのは、花澤香菜以外はすべて男性声優。上位に並んでる面々を見た時、声優ファンのなかには「いつものメンツ」と感じる方も多いだろう。各々が人気アニメ作品で主演を務めているのはもちろんのこと、10年以上にわたるキャリアを持った声優ばかりだ。

 たとえば1位の梶裕貴。『進撃の巨人』エレン・イェーガー、『マギ』アリババ・サルージャ、『王様ランキング』ダイダ、『MIX』立花投馬、『うる星やつら』水乃小路飛麿、『ダイヤのA』成宮鳴、『東京喰種 トーキョーグール』霧嶋絢都など、主人公/準主人公ポジションのキャラクターを次々と演じてきた。

 正義感溢れる好漢、夢に向かって努力を続ける少年、主人公と対をなすヒール役。体格、年齢、生い立ちもバラバラなキャラクターたちを抜群の演技力で表現してきた。収録時期もバラバラという点もあるが、約10年間にわたって彼の名前はさまざまなアニメ作品でクレジットされ続けている。

【Yuki Kaji】「βios」【 Hiroyuki Sawano Re:arrange version】

 今回のランキングに入った面々も同じく、継続的な活動でアニメ/声優ファンから人気を得てきた。人気アニメ作品に出会い続ける運だけではない。梶裕貴、津田健次郎、木村昴、宮野真守らは、テレビ番組、実写映画、ドラマ作品、ラジオ、雑誌、ネット番組など、さまざまな形で活躍してきた。その際には「声優界を代表する」という看板を背負って立つことが多いことからも、彼らがいかに実力を備えた声優かが伝わるだろう。

 こういった話題になると、10代後半に声優養成所に通って才能を開花させるというルートが考えられがちだが、まだ10歳にも満たない幼少期から劇団に入団してキャリアを積んでいったり、俳優としてキャリアを積んでいた者が声優の仕事を請け始めて知名度をあげていくパターンもある。

 津田健次郎は明治大学の文学部文学科演劇学専攻を卒業、大学在学中から円・演劇研究所専攻科に所属し、映画製作者志望から役者の道へ、そして舞台俳優として活動していくことになった。2000年に『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』海馬瀬人役、2001年に『テニスの王子様』乾貞治役をはじめ、2013年には『Free!』御子柴清十郎役、2018年には『僕のヒーローアカデミア』治崎廻役など、長期間にわたって物語が続く人気シリーズ作品で重要な役を演じ、知名度が上がっていった。

 それに伴い、声優としてのナレーション業に加えて、もともとの活動の場であった俳優としても活動の幅を広げていった。30歳を超えてから徐々に実力を示していったキャリアの歩み方は、少々遅咲きにも思えるかもしれないが、学ぶべき点は多いように見える。

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