楠木ともり『PRESENCE』『ABSENCE』対談 後編：TOOBOE、meiyoとの制作で挑んだ新たな表現

　『チェンソーマン』マキマ役、『プリマドール』鴉羽役、『デカダンス』ナツメ役など、数々の代表作を持つ声優の楠木ともり。その活動と並行して、自ら作詞・作曲をするというスタイルで音楽活動も行なっていた彼女が、アーティストとしてメジャーデビューをしたのは2020年8月、1st EP『ハミダシモノ』だった。その後、4枚のEPをリリースし、独自の世界観を表現し続けてきた楠木ともりが、1stアルバム『PRESENCE』『ABSENCE』を2枚同時リリース。これまで発表してきた楽曲を『PRESENCE』（＝存在）と『ABSENCE』（＝不在）というテーマで再構築。それぞれに、自身が作詞・作曲をした楽曲と、彼女と関わりが深い、もしくは影響を受けたアーティストが提供した2曲の新曲が収録されている。

　リアルサウンドでは、楠木ともりと楽曲提供をしたアーティストとの対談を行い、楽曲制作についての裏側を存分に語ってもらった。後編は『PRESENCE』に収録の「青天の霹靂」を手掛けたTOOBOE、そして『ABSENCE』に収録の「StrangeX」を手掛けたmeiyoとの対談をお届けする。（塚越淳一）

楠木ともり　×　TOOBOE
楽曲提供曲：「青天の霹靂」

『チェンソーマン』で繋がった二人

ーー楠木さんがTOOBOEさんの音楽に触れたきっかけからお聞きしたいのですが。

楠木：TOOBOEさんと認識して楽曲を聴いたのは、TVアニメ『チェンソーマン』からだったんです（※TOOBOEが、第4話のEDテーマ「錠剤」を担当）。そこから楽曲を聴いてドハマりしたんですけど、耳にしたことがある曲もあったので、ネットなどで聴いていたんだと思うんです。私、暗めの曲というか、泥臭かったり、人間臭かったり、素直じゃない感じの歌詞がめちゃめちゃ好きで……。

TOOBOE：うん……ありがとうございます（笑）。

楠木：そこがかなりツボでした！　その後、ラジオでもお話をさせていただいたりもして（※2022年11月28日放送／『CultureZ SP 楠木ともり The Music Reverie』）。

ーーTVアニメ『チェンソーマン』は、毎話替わるEDテーマが話題になりましたよね。

TOOBOE：EDテーマを歌った12組の中では、一番無名と言っても過言ではないし、あの中では新人だったので、起用されたことにはびっくりしました。

ーー絵がかわいいEDになっていましたね。

楠木：かわいかった～。でも、そこにTOOBOEさんらしさがあって。TOOBOEさんって「負け犬」をテーマにされているじゃないですか。デンジ君もマキマさんに犬みたいって言われていたりしたから、親和性がある感じはしました。

ーーTOOBOEさんは、楠木さんを知ったきっかけというと？

TOOBOE：僕は申し訳ないんですけど『ラブライブ！』とかはやらないんですよ……。

楠木：やってたら驚きますけど（笑）。

TOOBOE：なので『チェンソーマン』の声付きのトレーラーが発表されたときに知りました。「えっ！　全員声、ぴったりじゃん！　すげー！」って感動したのを覚えています。

楠木：嬉しいです！　最初は、イメージと違うという意見もあったんですけど、トレーラーは声だけだったんですよね。キャラクターと声が合わさった映像が出てからは、合っていると言ってくださる方も増えていった気がします。

TOOBOE：あの、声優さんに聞きたかったことなんですけど、1クールでだいたい12話くらい録るじゃないですか。そのとき、もう一回1話を録りたい！　ってなったりするんですか？

楠木：それはしょっちゅうです！　どの作品でも、やっていくうちに馴染んでいくので。

TOOBOE：やっぱり。僕らも昔の曲を聴くと、今歌ったほうがきれいに録れるんだけどなって思うことがあって。アニメってその都度パッケージングされて、そのときのOKテイクが残っていくから、本人的にはやり直したいところもあるんだろうなと、気になっていたんです。

楠木：でも、マキマさんは珍しくそれがあまりないかもしれないです。漫画を読んでいた時期が長かったというのもあって、自分の中で固まったマキマさんがあったから、出したいものが出せた感じはありました。

ーーアーティストだと、昔の曲をライブで更新していけますしね。

TOOBOE：そうなんですよ。だからそれができないのは結構なプレッシャーだなと思って。

楠木：音楽みたいにリマスター版もないし、録ったら終わりなので、後悔を抱えたまま次に行くということはあるかもしれないですね。

TOOBOE：マキマさんって、楠木さんのパーソナルな部分とは全然違いますよね？

楠木：そうですね。楽曲コメントに「マキマさん役として認識していたので怖い人かと思ったらとても優しい方でした。」って書いてありましたよね。怖い人だと思われていたんだって思いました（笑）。

TOOBOE：明るい人でしたね……（笑）。でも、自分と全然違うキャラクターをやれるのがすごいなと思って。

楠木：私はむしろ違うほうがいいかもしれないです。似ていると自分の意見が入っちゃう気がするので。

TOOBOE：なるほど。自分と完全に違うマキマさんを憑依させたほうがいいんだ。へぇ～。

ーー声優に興味津々な感じが面白いです。

TOOBOE：いつかなろうかなと……。

一同：（笑）。

TOOBOE：今、スタッフから「下手そう」って聞こえてきたけど（笑）。