楠木ともり『PRESENCE』『ABSENCE』対談 後編：TOOBOE、meiyoとの制作で挑んだ新たな表現
「StrangeX」は“何かが足りない女の子の曲”
ーーmeiyoさんには、わりと具体的なオーダーをお伝えしていたと聞きましたが。
楠木：アルバムのコンセプトはどのアーティストさんにもお伝えしていたんですけど、meiyoさんの曲はやりたい方向が決まっていたので、リファレンスもいくつかお渡しして説明をしました。「何かが足りない女の子の曲」というリクエストをしていて、喪失感もあるんだけど、meiyoさんのポップさとか耳に残る感じはほしいです、という話をしていた気がします。
meiyo：基本は今言っていただいた通りに作っていったんですけど、楠木さんの曲も聴いていたし、その上で、こういう曲をやりたいという話を聞いたとき、これまでの曲の雰囲気と全然違うものにしたら面白いだろうなと思って、こちらで勝手に肉づけしていったんです。言われた言葉の周りにある、こういうことをしたいんじゃないのかな？ っていうのを想像して、くっつけていくような感じというか。
ーーそのように、プラスαのアイデアを出していくというのは、提供するときに意識することでもあるのでしょうか？
meiyo：基本的に誰かのために曲を作るときは、その人のファンになるんですよね。
楠木：なるほど！
meiyo：楠木さんの場合は元からファンなので関係ないんですけど（笑）。そこから、自分が聴いてみたい楠木さんの要素みたいなものを入れていくような感じですね。
ーーそうなると、お願いした以上のものが返ってくるわけですね。
楠木：でも「StrangeX」の歌詞を見たときはびっくりしました。だって一行目が〈トントコタン トントコタン〉ですよ（笑）。私、データが届くとまず歌詞を見るタイプなんですけど、〈トトトト〉とか、え？ って思って。失礼を承知で、大丈夫かな？ って一瞬思いました。でも聴いてみたら、すごく素敵で！ まさしく目指していたものというか、それ以上だったんです。歌詞を見るとロボットっぽい感じだけど、人が歌う上での面白さがめちゃめちゃあると思ったので、きれいに歌うよりたどたどしく歌って、この女の子の雰囲気を出していきたいなと思いました。
ーー楠木さんは声優でもありますが、その声をどう活かすか、などは考えるのですか？
meiyo：いや、自分は曲を作るだけなので、どう歌ってもらおうとかはそんなに考えていないかもしれないです。
楠木：そうだったんですね！
meiyo：だからどう歌ってくれるのかな？ って思っていたら、こうなったという。
楠木：私は、どこかの少女が歌っているような、上手すぎない感じを出したくて。ただ、キャラソンではなく、アーティストとしての歌い方でそれを出していきたかったんです。声を変える＝キャラソンという文化の中で仕事をしているので、それとは分けて、ちょっと歌い方は変わっているけど、アーティストだなって思えるというか。
meiyo：それは本当にそうでしたよ。他の曲も歌い方はさまざまでしたけど、例えばCö shu Nieの提供曲の「BONE ASH」ならば、ちょっとCö shu Nieの雰囲気を感じるけど、楠木ともりである！ みたいな。
楠木：嬉しいです！ そういうところを目指しているので。この曲をキャラソンっぽく歌うなら、もっとニュアンスをつけると思うから、それを入れる角度を少し変えているんですね。こだわったところだと、〈…助けてお願い〉の“お”のキーが上に行くんですけど、これがキャラソンならば、きれいに出すんです。そこをあえて喉を締めて出すみたいなところにこだわったりしていて。
meiyo：なるほど。
楠木：そこであどけなさを出していくようなところは目指していました。“てんてんてん”って歌うところも、ちょっとだけフラットにしたかったので、音程ではない出し方というか、声質としてのフラットみたいなところもすごくこだわりました。
meiyo：す、すげー！ 僕はただただ、めちゃいいです！ しか言ってなかったですけど（笑）。
楠木：すごく褒めてくださって、やる気にさせていただきました！
meiyo：でも僕、よくないときはたどたどしくなるので、めっちゃいい！ って言うときは、本当にいいんです。
楠木：よかった。曲としては初挑戦なところだったから、ディレクションはすべて受け入れるくらいの気持ちだったんですけど、私がやりたいことを尊重してくださったので。でも、最後のところは大変でしたよね？
ーー〈いない〉〈さがす〉〈こどく〉って何度も繰り返していくところですか？
楠木：そうです。何回言うかもばらばらで、それは歌詞カードに書いていないんです。
meiyo：ごめんね……。
楠木：いえいえ（笑）。だから仮歌を聴いて、何度言っているのかを数えて、最初は続けて歌ったんです。そしたら、交互に録りましょうと言われて。
meiyo：音をいろいろなところから飛ばしたくて、いろんなところで“いない”って言っている感じにしたいから、交互に録らないといけなくなったんです。
楠木：“いない……いない……いない”というリズムで録って、そのあとそれを逆にした“……いない……いない”を録るみたいなことをして、何回“いない”と歌ったかわからなくなるっていう。あれはすごく手こずりました。
meiyo：いや、僕覚えているんですけど、ここ、手こずってないです！ 突然言ったのに完璧にやってて、嘘でしょ？ って思った記憶があるんですよ。何でできるの？ って。
楠木：レコーディングブースではすごい顔をしていたんですよ！ 頭をフル稼働させて。
ーー実際、最後のところはスピーカーの色んなところから聴こえてくる感じがしますもんね。
楠木：ここは私も実際に聴いて、びっくりしました。
ーーそういうのは、最初から決めているわけではないんですね。
meiyo：録っている途中で思いつく感じで、ここでぐるぐるしたらよくない？ ってなるんです。
楠木：meiyoさんは発明家気質なところがあると思っていて、その場で出るアイデアがどれも面白いんです。そのひらめきってどこからくるんだろうって思うんですけど、いろんな曲を聴いていないと、出てこない引き出しなのかなって。
meiyo：それはあるかもしれないですね。ジャンルとかは関係なく、とにかくいろいろ聴くので。
ーーアレンジの話をすると、ストリングスがやはり印象的ですよね。
meiyo：何かが欠けている女の子ということで、生の楽器を使いたいと最初から思っていて。打ち込みっぽい曲だけど、実はほとんど生楽器でできているんです。で、自分の頭の中では、明確に異国感のあるストリングスが入っているイメージだったので、絶対に入れようと思ったし、長い間奏も絶対に入れようと思っていました。
楠木：だからライブでどうしようかなって思っています。手品のひとつくらいできるかもしれない（笑）。
meiyo：できるくらいの長さだよね。今どきの曲では珍しい長さだから。自分の曲では最近ほとんど間奏がないけど、間奏はあってほしいですよね。
ーーストリングスや最後の繰り返しのところなど、ライブでどう表現するのかも楽しみな曲になりましたね。
meiyo：最後は、サポートメンバーに歌ってもらうとか？（笑）。
楠木：みんな男性なんですよね。でも、ライブ会場で色んなところから声が聴こえたら面白そうだなって思ったりはします。そういうのもいつかはやってみたいですね。
meiyo：アイデアマンじゃん！
楠木：やってみたいことが膨らむ曲なんです。お互いやっている音楽は違うんですけど、元を辿ると、やりたい音楽や好きな音楽は近い気もしているので、バズとかはあまり気にせずに、ガッツリ趣味に走った曲とかも、いつか一緒にやってみたいです。
meiyo：面白そうですね！ こちらこそお願いします。
■リリース情報
楠木ともり 1st アルバム『PRESENCE / ABSENCE』
【発売日】2023年5月24日（水）
購入はこちら：https://kusunokitomori.lnk.to/0524_PRESENCE_ABSENCE
『PRESENCE』通常盤：3000円+税・CD（11曲収録）
『ABSENCE』通常盤：3000円+税・CD（11曲収録）
『PRESENCE / ABSENCE』初回生産限定盤:8000円+税・2CD（22曲収録）・48p フォトブック同梱 ・三方背スリーブ仕様
『PRESENCE / ABSENCE』完全生産限定盤:12,000円+税・2CD（22曲収録予定）+BD（MV・リリックビデオ・ライブ映像収録予定）・グッズ同梱（レコード型コースター）・スペシャルBOX仕様
＜収録内容＞
CD収録曲
『PRESENCE』
01.presence
02.アカトキ
03.もうひとくち
04.青天の霹靂(TOOBOE 提供楽曲)
06.sketchbook
07.BONE ASH(Cö shu Nie 提供楽曲)
08.ハミダシモノ
09.バニラ
10.タルヒ
11.alive
『ABSENCE』
01.僕の見る世界、君の見る世界
02.眺めの空
03.山荷葉
04.Forced Shutdown
05.StrangeX(meiyo 提供楽曲)
06.遣らずの雨
07.熾火
08.よりみち
09.narrow
10.それを僕は強さと呼びたい(ハルカトミユキ提供楽曲)
11.absence
＜完全生産限定盤 Blu-ray 収録曲＞
Music Video
01. ハミダシモノ
02. Forced Shutdown
03. バニラ
04. narrow
05. 遣らずの雨
06. presence
07. absence
Lyric Video
01. 眺めの空
02. ロマンロン
03. 僕の見る世界、君の見る世界
04. sketchbook
05. アカトキ
06. よりみち
07. 熾火
08. タルヒ
09. 山荷葉
10. もうひとくち
11. alive
12. 青天の霹靂
13. BONE ASH
14. StrangeX
15. それを僕は強さと呼びたい
Kusunoki Tomori coming-of-age『WRAPPED///LIVE 廿』 2019.12.29 EX THEATER ROPPONGI
01. スケッチブック
02. 眺めの空
03. クローバー
04. ロマンロン
05. アカトキ
06. バニラ
07. 僕の見る世界、君の見る世界
■ライブ情報
『楠木ともり全国ライブツアー』
公演日程
【大阪公演】Zepp Namba(OSAKA) 2023年7月29日（土）open 17:00 / start 18:00
【名古屋公演】Zepp Nagoya 2023年8月6日（日）open 17:00 / start 18:00
【新潟公演】新潟 LOTS 2023年8月13日（日）open 17:00 / start 17:30
【宮城公演】仙台 PIT 2023年8月20日（日）open 17:00 / start 18:00
【福岡公演】Zepp Fukuoka 2023年8月26日（土）open 17:00 / start 18:00
【東京公演】TOKYO DOME CITY HALL 2023年9月2日（土）open 17:00 / start 18:00
チケット料金：指定席 7,700円（税込）
※入場時ドリンク代別途必要
※未就学児童入場不可
枚数制限：お一人様1公演につき2枚まで
チケット情報など詳細はこちら：https://www.kusunokitomori.com/info/archive/?id=550486
公式 HP：https://kusunokitomori.com
公式 Twitter：https://twitter.com/tomori_kusunoki
Official YouTube channel：https://www.youtube.com/c/tomorikusunoki
