湘南乃風 RED RICE、GLAY HISASHI、呂布カルマ、清春……千鳥『相席食堂』が引き出すミュージシャンの意外な一面と人選の妙
呂布カルマ、ブレイクのきっかけは『相席食堂』
『相席食堂』をきっかけにバラエティ番組で大ブレイクした代表的なミュージシャンといえば、ラッパーの呂布カルマだ。
呂布が出演した2021年9月21日放送回は“神回”のひとつ。大阪・堺市の商店街を舞台に、ラップのチャンピオンとして風格たっぷりに登場した呂布が“惨敗”するところが放送された。喫茶店でフリースタイルラップを繰り出してもいまいちうまくいかず、締めのラップでもトチってしまう始末。ただ、クールな見た目や“口喧嘩”が強いという印象とのギャップもあって、その“惨敗劇”が大ウケした。
筆者が呂布にインタビューした際、『相席食堂』への出演が、その後いろんなバラエティ番組にひっぱりだこになるきっかけになったと言い、「あのときのロケ中にやった即興ラップが本当に難しくて。喫茶店でいきなり、音も無いなかで即興をやるとか、経験したことがなかったですし。でもあそこでちゃんとできなかったことが逆におもしろかったんじゃないかなって。あれがあるから、バラエティ番組でもちゃんとやれる必要がなくなったというか」と、多くの視聴者にうまくハマった要因を自己分析した(※1)。
清春、藤原さくらのちょっと変わっているところを発見
清春が地元の岐阜県多治見市を訪れた、2022年1月18日放送回も印象的だった。ロック界のカリスマの出演に千鳥も最初「(番組に)来ちゃだめ、来ちゃだめ」と戸惑った。ただロケ中、サングラスをかけたり外したりを繰り返す清春に大悟は「メガネ、つけたりつけんかったり」「つけとるなーと思ったら外したり」と次第にツッコミが鋭くなり、さらに清春が黒夢として活動する前に組んでいたGARNETのときの貴重なエピソードを語った際も、大悟が「(サングラスをかける)準備をしだしたから」とこらえきれずに吹き出した。
同回では、清春自身が意外な部分を出したのではなく、彼の格好良さのなかにある「実はちょっと変わっているところ」を千鳥が発見して、バラエティとして笑いに結びつけたと言える。その点で、『相席食堂』の番組としての持ち味が存分に出たのではないだろうか。
2020年10月27日放送回に出演した藤原さくらもおもしろかった。動物たちと触れ合える大阪のワールド牧場へとやって来た藤原は、入園した途端、集まっている犬を見て「犬だまり」と独特の表現を口に。さらに餌やりをしていたヤギの足が自分のみぞおちあたりに食い込んで「うっ」と悶絶。そういった言葉やリアクションのたびに藤原は、演奏時とはまったく違う表情を浮かべる。大悟は「たまに地元の顔をする」と絶妙なツッコミをしてみせた。
さらに、せっかくギターを持っているのにほとんど歌うことなくエンディングを迎え、千鳥は「歌え!」と声をそろえる。そして最後に歌ったかと思ったら、ロケ中に一度演奏した牛をイメージした即興曲をまさかの“てんどん”。千鳥のふたりも「もうええねん!」とボタンを叩き、大悟は「マイペースな子やね」とつぶやいた。
そのほかにも同番組には、EXILEのATSUSHI、郷ひろみら多数のミュージシャンが出演して視聴者を楽しませている。旅というシチュエーションがそうさせるのか、『相席食堂』は、ミュージシャンたちをもっとも素直にさせるバラエティ番組なのではないだろうか。
※1 https://www.lmaga.jp/news/2023/04/641183
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