SABLE HILLS、明日の叙景、Paledusk……国内メタルシーンの新たな隆盛を担うバンド　ジャンルや国境を越えた鮮烈な存在感

Paledusk

　もう一組、ジャンル外音楽との接続で目覚ましい活躍を見せているのが、福岡発のPaleduskだ。

　2015年に活動を開始し、当初はKaito（Vo）がルーツとしても挙げているオールドスクール・ハードコアの影響も垣間見えるメタルコアに、フュージョン寄りのDjentを掛け合わせた風合いのサウンドでリリースを重ねていた。2017年9月にはかねてからメンバーと交流のあったDaisuke（Gt）が加入、翌年リリースのEP『Blue Rose』からメインコンポーザーに。ハリウッドにある音楽大学 ミュージシャンズ・インスティチュートを卒業し帰国した彼は、バンドに新たな風を吹かせた。加入時には従来のリスナーが受け入れられるか？　という部分を考慮しての曲作りだったというが（※3）、2019年のシングル『9 SMILES』で独自のサイバーミクスチャー路線が開花。これが音楽的な転換点だったのではないか。

　翌年のEP『HAPPY TALK』の表題曲はもはやトラップに近く、インダストリアルサウンドの「AO」なども含めて、さらに幅を広げていく。2021年の「BLACK ICE」にはハイパーポップやグリッチコアを、「TOPPA」ではIDMの様相まで呈し始める。2022年には「SLAY!! feat.Hideyoshi」でラッパーのHideyoshiとコラボ。かねてから主催イベントにてZERRYや釈迦坊主と共演していたこともあり、ヒップホップシーンとの橋渡しとなっていく。最新シングル「I'm ready to die for my friends feat.VIGORMAN」では、Daisukeが楽曲プロデュースを担当したVIGORMANとのコラボレーションが実現。メタルコア、ポップパンク、エモラップの渦のなかギターソロが炸裂する構成は見事で、パステルカラーを基調としたMVもジャンルレスな感触がある。Emmure、Loathe、Crystal Lakeなどが所属するSharpTone Recordsとの契約を結び、現在ヨーロッパツアー中のPaledusk。Bring Me the Horizonのニューシングル「AmEN! (Feat. Lil Uzi Vert And Daryl Palumbo Of Glassjaw)」の編曲をDaisukeが手掛けたというニュースも飛び込んできて、この先の展開に否応なく期待が高まる。

　今年4月にメジャーデビューを遂げた本格派デスコアV系バンド・DEVILOOFはすでに海外ファンを獲得しているし、同じく3月に台湾のイベントで海外ビッグネームと顔を並べた日韓ハイブリッド・メタルコアバンド Promptsも次なる超新星だ。ジャンルを越境していくメタルはしばしば本流のなかで透明化されるが、より広い世界で光が当たるようになった今の状況は、新たなフェーズなのかもしれない。

※1：https://www.metal-archives.com/browse/country
※2：https://www.sablehills.jp/pages/3059121/biography
※3：https://gekirock.com/interview/2018/03/paledusk.php