『ワイルド・スピード』歴代サントラは世界の音楽トレンドの転換を示す 時代の最先端をリードするレゲトン&HIPHOP

 世界で最も人気な映画フランチャイズの一つ、『ワイルド・スピード』。映画シリーズとしては世界で7番目に興行収入が高く、シリーズ全作で約1兆円ほどの売上を記録している(※1)。違法ストリートレースに焦点を当てた映画として発足し、後に強盗やスパイなどにフォーカスしたカーアクション映画に転向した。現在10作目の『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』が大ヒット上映中であり、大規模なアクションだけではなく原点とも言える迫力満点のカーレースが高く評価されている。

 そんな『ワイルド・スピード』はアクションだけではなく、サウンドトラックも熱い。20年以上にも及ぶシリーズだが、サウンドトラックでは毎回そのときに最もホットなアーティストを起用し、世界の音楽トレンドを上手く取り入れている。

 今作は、BTSのジミンが客演として参加していることが大きな話題を呼んだが、ほか楽曲においても粒揃いなアーティストがラインナップ。まずは映像配信プラットフォーム Twitchで最も登録者数が多いストリーマー、カイ・セナットがイントロで盛り上げる。そこからサウンドトラックの前半では、リル・ダーク、ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲイン、NLE・チョッパー、24kゴールデン、リル・ティージェイ、ナルド・ウィック、キー・グロックなど、今最も活躍している新世代のラッパーたちが参加。後半では世界的なトレンドになってるラテン系アーティストがフィーチャーされており、J・バルヴィン、マリア・ベセラ、ジャスティン・キレス、サンタ・フェ・クラン、マイク・タワーズ、ルドミラ、キング・ドードー、デュキ、アンナ、マッドマンなどが参加している。特にプエルトリコのアーティストが多く、世界で流行しているスペイン語楽曲を多く取り入れていることがわかる。

ドン・オマール
ドン・オマール

 また、最新作のサウンドトラックが話題になるなか、過去作の楽曲も注目されるのが『ワイルド・スピード』の特徴でもある。2011年に公開されたシリーズ5作目『ワイルド・スピード MEGA MAX』でフィーチャーされたドン・オマールとルセンゾによる「Danza Kuduro」が最新作にて挿入歌として使用されており、TikTokなどでも再度話題になっている。レゲトンを代表するアーティストたちによるこちらの楽曲は当時数々の国の音楽チャートで1位を獲得し、MVはYouTubeで13億再生を超えている。

 さらに東京を舞台にしたシリーズ第3作目『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』でフィーチャーされたTeriyaki Boyzによる楽曲「Tokyo Drift (Fast & Furious)」の文化的インパクトは言うまでもない。ファレル・ウィリアムスとチャド・ヒューゴによるThe Neptunesがプロデュースを務めたトラックは、パンデミック中に再度トレンドになったことも記憶に新しい。数多くのラッパーが「Tokyo Drift (Fast & Furious)」のビート上でフリースタイルを披露し、リル・ヨッティなども自身の楽曲でサンプリングしている。『ワイルド・スピード』シリーズのなかで最もアイコニックな楽曲の一つとして評価されており、新作が出る度に浮上している。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる