シユイ、気鋭の作家陣によって引き出された新しい表情 サマソニ出演前に『思惟2』で堪能したい歌の魅力

シユイ、鮮やかな歌の魅力

 2023年5月24日、シンガー・シユイがデジタルEP『思惟2』をリリースした。

 2022年11月、supercellのryoが手掛けた「君よ 気高くあれ」でメジャーデビューを飾ったシユイ。アーティストのヒットにおいてアニメタイアップの重要性がより増している昨今、シユイはこの曲でTVアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(TBS系)のエンディングテーマに大抜擢された。これはシユイが“歌ってみた”を投稿し、インディーズ活動を始めてからわずか2年弱での出来事だった。

【MV】君よ 気高くあれ / TVアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』EDテーマ

 原石はいかにして発掘されたのか? 『思惟2』を紹介する前に、まずはシユイ自身の歩みを振り返ろう。

 シユイは2021年1月、「命に嫌われている。」で“歌ってみた”の動画投稿を開始した。この月は11本の歌ってみた動画を投稿するなど初期から活動量が多いことが特徴で、活動開始から現在までに公開されている“歌ってみた動画”の総数は、約80本に上る。

【歌ってみた】命に嫌われている。/ シユイ

 とはいえしばらくは、いわゆる“バズ”とされるような、ネットで明確に話題になる機会には恵まれなかった。YouTubeのレコメンドや『The VOCALOID Collection』(株式会社ドワンゴが主催するボカロ・歌ってみたの投稿祭/シユイは2021年4月に開催された『ボカコレ2021春』で初参加)によって、偶然その実力を知ったファンを堅実に掴んでいった時期という印象だ。

 名が知られたのは、2021年の夏。Adoのブレイクにも貢献したボカロP・jon-YAKITORYが手掛ける楽曲「ONI」のフィーチャリングボーカルに選ばれた。このコラボレーションは「MECRE(メクル)」上で実現したもの。MECREとはクリエイター同士が必要なパートナーを自由に募集できるプラットホームで、すでに数多くのフックアップが実現している。

jon-YAKITORY feat. シユイ 「ONI」 MV

 そんなMECREの記念すべき第1弾目として、jon-YAKITORYが行った歌い手募集企画に応募し、見事フィーチャリングボーカルに選ばれたシユイ。自身は、インタビューで当時のことを「最初は半信半疑で応募して、ある日学校から帰ってきたらコラボ決定しましたってTwitterで発表されていて、おぉ!ってなりました」(※1)と語っている。大きな偶然と小さな勇気の上に生まれた楽曲「ONI」は、わずか1カ月で100万回再生を突破した。

 2021年夏以降は、歌ってみた動画も1万回以上の再生を連発。10万回を超えるものも出てくるなど、シユイが世に知られたことを表している。なお「ONI」で受けた評価が、オリジナルEP『思惟』(2022年7月)のリリースにもつながったそうだ。『思惟』にはjon-YAKITORYはもちろん、一二三、柊マグネタイト、R Sound Designといった、ネット音楽シーンで活躍する様々な世代のクリエイター陣が参加したことも、話題を後押しした。

 こうして、冒頭で述べた2022年11月のメジャーデビューにつながるわけだ。さらに今年は「君君舞」でMBSドラマ特区『墜落JKと廃人教師』オープニングテーマを、「ハピネス オブ ザ デッド」で7月放送予定のTVアニメ『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』(TBS系)でエンディングテーマを務めるほか、8月には『SUMMER SONIC 2023』への出演も決定している。

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