連載『lit!』第53回:kanaria×星街すいせい、椎乃味醂×小林私……様々な場所で化学反応を起こす注目ボカロPコラボ
今や大衆的な音楽ジャンルのひとつであるVOCALOID。だがそんなボカロを用いて楽曲を制作するVOCALOIDプロデューサー=ボカロPもまた、今では非常に多岐に渡るカルチャーの現場を支える音楽クリエイターとして地位を確立している。元々VOCALOIDというジャンルに近しい二次元関連コンテンツへの曲提供に限らず、アイドルやメジャーシンガー、はたまた映画やドラマ、CM等の映像作品における楽曲制作など。その多彩な活躍は枚挙に暇がないが、今回はその中から各所で今まさに話題を集める提供やコラボとなった近作をピックアップ。各ボカロPの個性を残しつつも、それぞれの界隈の色を取り込んだ、粒ぞろいの秀作をご紹介したい。
Kanaria×星街すいせい
4月半ばの楽曲公開直後から現在に至るまで、VOCALOIDとⅤTuber両界隈のファンから熱い注目を浴びる本作。歌唱デビューのニュースも記憶に新しい時代の最先端をゆくボカロP Kanariaと、VTuber界きってのディーヴァとして確固たる地位を築く星街すいせいのタッグともなれば、その注目度の高さはさもありなん、といったところか。両者の歌唱版動画から日を置かずして初音ミクによる歌唱版動画も投稿され、その後を追うように様々な歌い手やⅤTuberによるデュエット歌唱も続々と投稿される今作。公開から約2カ月でYouTube再生回数も1000万回を突破し、まだまだその勢いが衰えることはなさそうだ。
ぞん子×Gamble Loom
ZONeエナジー公式アンバサダー ぞん子への楽曲提供として、 RADWIMPS「おしゃかしゃま」リミックスを務め上げたボカロ界きってのニューカマー集団 Gamble Loom。アレンジの総指揮を執るMizore、A4。両名のサウンドメイクは勿論のこと、プレイヤーとしても抜群の安定感を誇るmiru、ハグミーの手腕、さらに彼らの音を見事に束ねあげる匿名ゲルマのミキシングも注目すべきポイントだ。今なお脈々と受け継がれる“ボカロらしさ”の原点にも起因するRADWIMPSの大名曲を、こうしてシーン最前線の新星たちがリメイクする。その鮮やかな文化の円環構図もまた、興味深い本カルチャーの象徴的な図式なのかもしれない。