SixTONES、「こっから」はグループの大きな武器に 『だが、情熱はある』主題歌たる必然性を3つのポイントから探る

SixTONES、「こっから」が武器に

 SixTONESの新曲「こっから」が素晴らしい。

SixTONES – こっから [YouTube ver.]

 日本テレビ系日曜ドラマ『だが、情熱はある』主題歌の一つであるこの曲。ドラマはオードリー・若林正恭と南海キャンディーズ・山里亮太の2人の半生を描く内容で、若林役をKing & Princeの髙橋海人が、山里役をSixTONESの森本慎太郎が演じている。若林と山里になりきった主演二人、そしてオードリー・春日俊彰役の戸塚純貴や南海キャンディーズ・しずちゃん役の富田望生も含め、まるで実在するお笑い芸人が“憑依”したかのようなリアルな演技が大きな評判を呼んでいる。

 SixTONESの「こっから」も、このドラマの主題歌たる必然性を感じさせる1曲だ。さまざまな音楽的チャレンジを繰り広げてきたSixTONESというグループにとっても大きな武器になるだろうし、いろんな文脈において、ドラマの内容との親和性を感じる。

 そのあたりを紐解いていきたい。

 まず1つ目は、この曲が6人のマイクリレーを見せ場にしたヒップホップナンバーであるということ。

 『だが、情熱はある』は、山里と若林それぞれの青春時代や下積み時代と、2人が結成した漫才ユニット・たりないふたりの来歴や2021年の解散ライブの模様などを巧みにカットバックした構成のドラマになっている。

 「たりないふたり」と言えばCreepy Nutsを思い出す人もいるだろう。ドラマにもかが屋演じるヒップホップユニット「クリー・ピーナッツ」が出演しているが、若林・山里とCreepy Nutsの縁は深い。Creepy Nutsが2016年にリリースした「たりないふたり」はその名の通り若林と山里をモチーフにした曲だし、その後に両者は親交を深め、2019年11月には実際にイベントで使用された「たりないふたり さよならVer.」もリリースされている。 

たりないふたり

 何より若林は大のヒップホップ好きとして知られる。そういう意味でも『だが、情熱はある』の主題歌がヒップホップナンバーである必然性は大きい。

 ヒップホップにもいろいろあるが、SixTONESの「こっから」は、ブレイクビーツ×生バンドのサウンドメイキングによる1曲だ。トラップではなくブーンバップ。アンダーグラウンドなものではなくJ-POPとして成立する間口の広さを持つ。バリトンサックスの奏でる印象的なリフをフックに、畳み掛けるように次々と展開する。曲調はドンピシャな方向性だ。

 そして2つ目は、聴き手を奮い立たせるような熱いエールを綴ったリリックにある。『だが、情熱はある』では若林と山里の青春時代や下積み時代、つまり彼らがまだ「何者でもない」頃を描く。夢に向かってまっすぐに向かっていくというより、周囲に対しての嫉妬や妬みを抱えたり、迷走したり、悔しさや葛藤に苛まされたり、そういう生々しい描写がある。

 だから、「こっから」のリリックも、爽やかでストレートな応援歌というより、そういう心の奥底でマグマのようにグツグツとたぎるような黒い感情も吐き出した生々しいエールソングになっている。

 たとえば中間部、ユニゾンでラップする〈「俺、悪くない。なんも間違ってない」/自分じゃない何かのせいにしたい〉とか〈よく見なさい 天賦の才などない/でも やめられないみたい/あたしゃ阿呆か馬鹿みたい〉というフレーズは、ドラマを観ている人にはハッとする箇所と言えるだろう。

 だからこそ〈いつかの童心もって努力し 夢と相思相愛になれるはずなんだ/こっから、こっから始まんだ〉というサビのフレーズにも力強い説得力が生まれている。

 作詞作曲は佐伯ユウスケ。これまでSixTONESには「共鳴」など数々のナンバーを提供している。ミクスチャーロックテイストの「共鳴」や、メンバーのラップスキルを活かした「人人人」など個性的な曲でSixTONESの音楽面を牽引するクリエイターの一人だ。リリックにある〈聞かれたくない サイレンピーポー でもどこ行ったって“人人人”〉というフレーズも、SixTONESファンならその由来に気づく“仕掛け”と言っていいだろう。

SixTONES – 共鳴 [YouTube ver.]
SixTONES – 人人人 [PLAYLIST -SixTONES YouTube Limited Performance- Day.6]

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